4+

No.611

金魚に酸素を与える
平穏に向かい投石する
あなたが呆れ返る
どうしようもない盗癖持ち

みんなの幸福を信頼しない
あなたにも信頼して欲しくない
おそらく長続きしないから
十五のぼくが笑うかな

綺麗事って優しさだった
きみにとってそうあるように、と
綺麗事って弱さだった
私に降らなかった光が降るように、と

おとなは臆病
子どもは危険
大層距離があったね
わかり合おうとするには

人知れず更けていく夜はない
ぼくの孤独もあなたの涙も
裏側の誰かの糧となり鼓動となる
気づかぬうちに境界なんて溶け切って

大丈夫、
打ち明けられない秘密も
だいじょうぶ、
一瞬でも空気を震わせたなら星になれる

新しい明日くらい迎えられるよ
なんてことない幸せが始まるだけ
今は怖かろうが嫌だろうが
黙ってぼくに愛されると良い

額をくっつけておいて
見つめ合わなくて済むように
やがて名前を思い出したら
見知らぬぼくにも愛をおしえて。

4+

No.610

無限じゃないのに
僕たちは隠したんだ
そして鍵を捨てたんだ
見つけたってもう触れないように

いろいろに空想できる
ようにさ、もちろんだよ
例えばこの初恋は酸っぱいとか
正解がないほうが幸せなんだ

遠回りして時間稼ぎ
水たまりの波紋ですぐ分かるのに
こじらさせて時間稼ぎ
余った命を意識しないという贅沢

仮にスープ
そう、カップいっぱいのスープになる
すべての細胞にお願いをして
あなたが死なないよう頼んだりしたい。

与えられて奪われたい
一欠片になって傷をつけたい
主人公なんてもうやめたい
白いあなたの目覚めを待ちたい。

4+

No.609

きみのルールで
手をにぎることは殺す
なのかも知れない
そしてぼくたちは手をにぎりあった

好奇心が誰かを傷つける
だったら知らなくていいよ
だったら知らないでいてよ
壁を超えてきても何者でもないんだ

ごめんね退屈で
せっかく近づいてくれたのに
ここまで期待してくれたのに
よくある大量生産でしかなくてごめん

人工的なもの
愛せなかったら生きづらいね
勇気を振り絞っても声はかすれて
まあいいかって自分を一人で慰めるんだ

かわいそうでありたい
弱いことも脆いことも隠したくない
卑怯でありたい
きみさえ手を伸ばせば簡単に届くんだよ

2+

No.608

咲かないで
花にならないで
蕾をむしった
こんなんじゃ幸せになれない

愛のために涙を流すこと
強要されて首を横に振った
レッテルとバッシング
可哀想ねの同情に食べさせてもらった

青空から住宅街へ墜落する
おぞましい夢を見て飛び起きた
動揺したくないのに
助かりたいなんて思いたくもないのに

新世界の一日は唱和から始まる
声をそろえていると朗らかな気分で
悪くないかなと思い始めた頃
きみと出会った

おまえはまだ真っ当なの?
ぼくはここでは静かに暮らしたい
うそばかり
嘘じゃない本心だよ

脱出は三日目の夜
満月がてらてら光る夜だった
きみは星に祝福されて
ぼくはきみに祝福されて

目を覚ました
長い夢だった
おそらく幸せな夢だったろう
覚えていないことが何よりの証拠だ

きみが本当にいたのか
同じ世界にいたのかは
ぼくにだって分からない
きみにだって分からないんだろう

どうせ気配を消せやしないさ
会いに来たら目を覚まして迎えるよ
きみが迷子になったら手がかりとなるよう
ぼくはもう、白い蕾をむしったりしない。

5+

No.607

涙より血を
何度も要求した
壁を正視できなくて
あふれる色を止めた

胃袋が鳴っている
愛を食べた
それは少し腐っていた
食べなきゃ良かった

冷蔵庫にそれしかなかった
お金もなくて
あとは冷えたスプーンと
動物の舌

一日中川を眺めている
いろんなものが流れている
広告やサンダルや骨
鉄骨や毒や三角巾

誰が住んでいますか
誰が何を失って
ああ、あれは
消失したリボンではないのですか

振り払った一瞬は
少しだけ優しかった
お互い期待していた
演技だとわかっていた

夢なら覚めるのにな
そう思うのは勝手だ
覚めない夢だってあるさ
終わらない現実があるように

妄信せずに生きられない
ぬくもりが牙を剥く
不釣り合いな信頼
川は、とどまる勇気をいまだ持てない。

2+

No.606

あたらしい朝
あたらしい肌
あたらしい水
あたらしい卵

新鮮なものが恐怖を連れてくる
足りない方へあげてください
ぼくは未来に期待しない
今から始まる一時間にだって

宇宙、は
やさしいんです。
何にも縛られないあの子が言うので
信じてしまった

冗談、と
最初はそう言いました。
みんなが笑っていてあの子は
何にも関与していなかったので

だけどある日知ってしまった
あの子が本当を言っていたのを
衝撃というよりも納得で
もう知らなかった頃には戻れない

ぼくはいま白い箱の中にいます
本当に白かどうかは分からないけれど
少なくともそう見える
きっと誰にとってもそうでしょう

白に見えているこの色を
白じゃないと言っても差し支えない
それぞれが白だと思う色が白で
影響を及ぼすことはない

あの子なんていなくて
見たものすべてまぼろしで
ぼくは他と少し違って
なのでいま辺り一面白くあります

あたらしい夜
あたらしい熱
あたらしい星
あたらしい終わり。

愛は凶器
認めてください
あなたは優しい
いいえ、やさしかった。

3+

No.605

あたたかいごはんを食べましたか
好きなものに囲まれていますか
愛してくれる人々に囲まれていますか
ぼくはきみにもう会えないけれど

ダメになりそうな時があって
きみを探し出して目に映して
やっぱりきれいだ
そう思える自分がいるから大丈夫

大丈夫だと信じたい
信じたいと思えるうちは
きみに降り注ぐ色彩を願っている
星ばかり降るよう祈っている

どこにも売ってない
どこにも見つからない
ぼくの中の蜜だらけの場所
きみが生きてく澄んだ青い世界

4+

No.604

ずっと一緒だと思ってた
予感を消す方法なんて知らないから
思うことは信じること
他の可能性を見ぬふりをすること

いつかバラバラに
なるくらいならまだ良くて
近づきすぎて傷つけあうのかな
何度も奇跡を託した肌で

鋭利なものをどれだけ集めて隠しても
最後まで残る
きみを傷つける言葉が残る
光が消えても言葉が残る

言いなりにしたい洗脳くらい
笑って許せばよかったんだ
百円の宝箱に神さまを閉じ込めたんだ
それから鍵を捨てちゃったんだ

だから分からないんだ
箱の開け方が
僕たちが閉じ込めた何者かが
今も神さまであるかどうかが

3+

No.603

生きる
ことなんて容易くて
傷つけあうほど平和だった
あの頃いのちは
ATMで下ろせたし
足りなくなったら補充ができた
嘘は自販機で買うことができて
優しさはコンビニにあった
隠したいものは靴下に詰めて
許せる人にだけ裸足を見せた
残酷だ
そう言って決別した
つもりだった
時代が僕らを捕まえに来る
大晦日
雪の後先
死にたいだなんて
傲慢だったよ
各地で魂が卵になってく
もう一度シャッフルだ
君と僕とは最初で最後のさよならだ。

2+

No.602

できることならもっと深く
深く潜りたいけど怖いんだ
血が流れるのではないかと
未使用ガーゼは足りないし

勘違いのままエンドロールへ
幸せってそういうことじゃないかな
騙され切った人は勝ち抜け
気づいた弱者の胸は張り裂ける

秘密を試験管に入れ
純粋を抽出する
隠された真意を受け止めたくて
混ぜた不純物に込められた思いも

気づいてしまったのなら
知ってしまったのなら
もう毒には戻れない
罠にはまったあなたが悪い

3+