No.539

夢を見るようにあこがれていた
今は夜明けが一番に怖い
自分の気持ちが隠し切れないから
どうにもそのまま出てしまうから

月が傾いてあざ笑う口元
硬い結び目もほどけていく
もう一度パーツに戻って
また誰かの遊び道具だ

あなたは忘れていく
忘れまいとする努力は苦痛だ
正しさは人を傷つける
間違うことが優しさだからだ

同じ嘘に向かうことはもうない
知らないふりができない僕たち
まぶたの裏に美しい光があって
照らし出された文句も言えない

2+

No.538

幸せであることは
なんて人をダメにするんだろう
どこまでも弱くするんだから
二度と手離したくないと思わせることで

一番欲しいものを欲しがらない
ぼくにきみは弱虫。と言った
ほんとうにわからなかったんだ
そして今ならほんとうに分かるんだよ

花と緑で編まれた壁
立ちはだかってぼくたちを試してる
断ち切って会いに行けるか
自分だけを守らないでいられるか

武器はない
(武器ならここにある)
勇気はない
(勇気とはつくられるもの)

きみの声がする
幻かも知れない
手を伸ばせば幻さえ
失ってしまうのかも知れない

だけどもう立ち止まりたくない
同じ場所で祈りだけ捧げたくない
血を流しても血のためにきみは生きる
壊そうとしても壊れなかったもののためにぼくは生きる

4+

No.537

青色の光
その正体は舌の上のゼリー
きみに届けたかったぼくの声
終わらない夏なんてないと知っていた

青色の光
その正体は静かなプール
きみが浅く沈んでいた
助ける気が失せるほど綺麗にきみが

青色の光
感情のまま発された言葉のように
取り返しのつかないことをしたんだ
信じてはいないものが見えていたんだ

青色の光
きみにも終わりは来るんだ
最後にぼくたちを映してね
許せなかったとしてももう誰も困らないよ

2+

No.536

なにを食べたい?
どうしたい?
どうなりたい?
ふたりこれから?

あなたはぼくに託しすぎる
とっくに正気を失ってんだよ
そう噂されてるの、知らないの
命令するのは、されたいからだ

飛び越えてみせるよ
百年でも千年でも
ぼくにだけ弱さを見せるなら
あなたがぼくにだけ正直ならば

虹に埋もれて黄昏を惜しむように
生まれてから死ぬまでを惜しむべきで
回り道する時間なんて無いはず
ぼくを信じるしか、あなたに術は無いはず

3+

No.535

ぼくに届かせたいと
丁寧に噛み砕いた白い豆
あなたがぼくに見せたがった世界を
見たと嘘をつくくらい、わけはないんだ

あと七日しか生きられなくたって
今日と同じように過ごすだろう
今日のような明日を過ごすだろう
天才に飽きたあなたの遊びに付き合って

行く予定のなかった花火大会
もっと近くで見たかったのにな
ベランダに佇むあなたはまるで違う
そこから飛び降りたがっていたあなたとは

月は淡々と回転し季節を巻き取って行く
同じ一瞬は二度と来ないし
永遠に覚えてはいられないのに
ぼくたちは平気で歌とか歌う

ぼくたちは平気で次の物語を始める
そしてぼくたちは平気で立ち直る
これからも平気で死にたいし平気で生きたい
今のぼくたちなら、きっとそのとおりにできるだろう

4+

No.534

夕景の真ん中に立つ
あなたがいなければ
あなたがそこにいなければ
境目も前も後ろも判らなかった

しかしあなたは立っていた
そこでぼくは知ることができた
迷うことから遠ざけられた
今もきっと恩恵を受けている

与える意図なく与えられたものを
ただ貪るだけで死ぬことは虚しい
ぼくはどうか次へと送りたい
不審なものを見る目に怯まず

夢は絶望から這い上がる
何度も、何度も、何度でも
あなたに何の思惑もなかったこと
今なら分かる、あなたの消えた今なら

3+

No.533

『鎮めた狂気』

どこまで行けるかな
どこまで行こうかな
誰がどんな邪魔をしてくるのかな
ぼくにどんな魔法が残ってるかな

恍惚は猛烈にすみれ色
一番になりたくて常軌を逸した
眼鏡で覗き込んだら思い出の中
水に沈めたハサミが白く光ってる

きみが幸せでなければよかった
ぼくが汚れ役のままなら
だけどきみは幸せそうに笑っていて
ぼくは水底からハサミを取って来なきゃならない

1+

No.532

あなたの殺せが助けてに聞こえたんだ
ぼくの身勝手だとしても助けようと思う
死ぬのなら勝手にそうして欲しかった
ぼくの前に、わざわざ現れて、どういう了見?

おとぎ話で必ず解ける魔法みたく
あなたが素直になればなあって思った
都合のいい妄想はぼくが不器用なせい
どちらもうまく繕えないね、何も。

鳥かごにつながれた手錠
分かりやすい悪魔と天使
誰も分かってあげないでほしい
あなたの助けては永遠にぼくにだけ届け。

3+

No.531

『似た者同士』

忘れたふりをしたんだ
思い出すのがもったいなくて
はじめてみたいに会ったんだ

(すこし、怖くて。)

だけど君の目は僕を見る
あの日のように黒い瞳で
僕の記憶力に期待するだろう

変わったんだ
変わってしまったんだ
生きるために、死なないために

君に会うために。
君に会うために。
君に、また、会うために。

ふがいない、みじめで、
はずかしい、むりょくで
ちっぽけで、死んでしまいたい

全部をぶちまけて楽になる
渋々顔を上げると君が泣いている
これは、正直、予想外

待ってたんだ、
ショートケーキの苺とおんなじ、
好きなものを取っときたい性格のせいで、
私は今まで多くを無くしてきたんだ。

白状する君の声が震えている
触れたこともない頬が熱い
肩が上下している
もしや、これは。

泣いてる。

バカだな
弱っちいな
ただの強がりだったんだ
僕たちってどうしようもなく似た者同士

おんなじ僕たちはいつか笑える
くだらないなっていつか共有できる
その時に届くまで泣いていてもいいよ
互いの泣き顔に飽きたら笑いだって出るだろう

3+

No.530

『かわりばんこ』

あなたは僕とは違うけれど
きっと分かり合えたね
そばにいられて良かった
あの時に通じ合えなくても

綺麗になりたがってた
いつだって綺麗だったのに
汚れているなんて思い込みだよ
そうでなければ僕の目がおかしいんだ

禁じられてなんかいないから
あなたが愛せないのなら僕がそうする
生きる意味だなんて小難しいことに
とらわれて勝手に絶望したりしないで

愛したいものを愛すれば良いだけ
あなたはできていたのに
僕のことなら容易くできていたのに
じゃあ次は僕の番だよ

ちゃんと守って、かわりばんこ
鬱蒼とした茂みも、魔物の夜も
日陰のない茨の道も、裸足でも
今度は僕があなたを迎えに行くんだ。

2+
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