No.789

笑えるようになった
きみを軽蔑しない
どれだけ上手でも
月の綺麗な夜だった

片足のピエロが
ブランコ乗りだった頃の話をする
みんなが私を見ていたんだ
遠くの星や羽ばたく鳥を見るように

それで体が持ち上がって
今でも浮いてる気持ちになるんだ
同情を寄せてくれる人もあるが
正直私は幸福なままだよ生憎ね

差し出した本を
私に必要なものではないと返された
誰にも必要ないものだと思え
ライターで火をつけた

焚き火を眺めていたらきみが来て
ぼくのとなりへ腰かける
きっと顔を見られたくないんだろう
でも気になって盗み見てしまう

きみは泣いていた
傷つくことを期待していたのに
どうしてこんなに悲しいのだろう
ぼくは自分がわからなくなる

昇る太陽
開幕のカウントダウン
ぼくたちは目覚める
終わりを殺しながら

始まりに飲み込まれる
言葉は無力だった、でも
無力なものを行使しようとするとき
ぼくたちはもっとも分かり合えてた

2+

マンスリーエメラルド10,11月号印刷できます

先月すっぽかしてしまったので2ヶ月分同時にアップしました。

コンビニで印刷できます。フルカラー1部100円ですので、ぜひ!

■セブンイレブン
10月号→10620055
11月号→79047244
有効期限:2019/12/12 23:59

■ファミマ・ローソン
ユーザー番号:QF7LFDHM4N
10月号ファイル名→201910_monthly_emerald.pdf
11月号ファイル名→201911_monthly_emerald.pdf
他のファイルも入ってますけど印刷OKです!

2+

【雑記】きみが良きなら絶対良き

私は自分の書いたものを好きである。
たまーに読み返して「良き!」となることが多い。
他の人が書いた中にも好きなものはある、山ほどある、しかし比べることなく好きである。
私が書くものには私の卑屈さがいつまでも抜けきらず残るが、書いたものに対して卑屈になることはなかった(と、思う)。
だって「いえいえ私が書いたものなんてつまらないし、あの方の作品のほうが上ですよ」みたいに言ったら私が書いたものを好きになって、好きで読んでくれている人に失礼というか申し訳ないというか、うーん、バカかな?ってなるだろう。
書いた本人がつまらないと思っているものを楽しんで好きになるなんてあなた少し変わってますね。みたいな態度になるだろう。
なので自分がいい!すき!と思ったらそれで良い。
ことさら自画自賛するものでもないが、まわりが居たたまれなくなるほど卑屈にならなくても良い。じゃあ出すなよ!って話になる。
うーむ、とは言え書いた本人が「駄作」と思って渋々出したものが「良き!」と言ってくれる人の眼鏡にかなってさらに多くの人に読まれるというのもまた良くあることで、うーん、かと言って「あー、つまらん」て公言するものでもないだろう。「そんなことないですよ!」って返しを期待しているかのような、それこそつまらん作者になってしまうし、あーでもそういう作家を奮い立たせる編集者と卑屈作家のラブロマンス的なあれはあるから客観的に見ると美味しいのかな???

話は多少それたが、自分が良きと思うならそれは良きものだよ。作り出した本人が良きと思えること以上に、作品が報われることはないよ。

だから読ませてくれ。

2+

小説『イミテーションスープ』

戻っておいで、大丈夫、おまえが抜け出した毛布の中はまだあたたかい。

粉末のコーンスープをお湯でとかして「つくったよ」と差し出せば泣きながら飲んだね。手料理なんて初めてだ、コーンスープなんて初めてだ、誰かと食卓を囲むのも。そんなに感激されては見捨てられない。僕はおまえにもう一皿、料理を振る舞うことにした。少しだけ手を加えて。少しだけ。あと少しだけ。もう少しだけ。

そうして日々が重ねられ、いつのまにかレパートリーが増えた頃、上司から通達があった。「地上で料理人にでもなるつもりか?自分の役目を果たせ」。僕は本題を思い出して、ある夜、おまえを手にかけようと決意する。しかしおまえは偶然にもコンビニへ出かけていたので僕はスマホで「遠くへ逃げろ。この部屋は包囲された」と送った。あれ以来おまえはこの部屋へ帰ってこない。

一年が過ぎ、また冬が来るらしい。
上司は呆れたのか指示も出さない。僕はどうやら解雇されたみたいだ。代わりがいるのはこちらもあちらも同じなんだ。

ピコンと音がしてメッセージを受信した。驚いて飛び上がってしまったことにひとり赤面。

「きみが人でないことは分かっていた。でもおれはひさびさに誰かと話せて安心したんだ。まだ、喋れたんだって。まだ、美味しいと思える味覚が残ってたんだって。たとえそれがインスタントのコーンスープであっても」

ばれてら。

僕は横目でメッセージを何度かなぞった後、冒頭のメッセージを返信する。
戻っておいで、大丈夫、おまえが抜け出した毛布の中はまだあたたかい。
だって死神に温度は無いからね。
まだあたたかいと信じるのは僕の自由だ。

3+

【雑記】平熱を知らない

1ヶ月先の投稿まで予約できました。書いてすぐ出すのも良いが、時間を置くと書いた時の気持ちが薄れているので「読者」として出会える確率が高まりそれはそれで面白い。へえ、あ、こういう感じね。みたいな。

今週は数年前に書いた小説を折り本にする。今月30日からネットプリントできる予定。もしよかったら、いや、よくなくても印刷して読んで欲しい。30って明後日か。

1週間前から風邪をひいていてたぶん治りかけ。38度の時にもやってたことはこれからも続けていけるものだと思う。私は飽きっぽく離脱しやすく捨てやすいので、体調不良をおしてでも取り組めるものがあるならそれは本当にありがたいことだ。何が大切かわからない時は一度手離してみると良くて、お金とか時間を払ってでも取り戻したいならそれは大切だったんだよ。まあ人間関係はそういうわけにいかないが。

4+

No.788

あなたは優しいねときみは言う。大丈夫か。きみは、だいじょうぶか。そんなに人を見る力がなくてこれからも生きていけるのか。

変わらずに。曲げられずに。傷つかずに。傷つけずに。

ぼくの言動がぼくの本心から出ているものだと考えてはいけない。見張っているのだから。どう猛な獣が牙を剥かないよう。見張っているのだ。我を忘れないよう。もう二度と。

ちょうちょを好きか。晴れた日の雲ひとつない空や、新品のノートブックが。好きだと言う、きみもぼくには等しいんだ。等しい。それらと。新しくて消えやすいもの。

疑って欲しくないなときみは怒る。そうか、きみは、怒ることもできる。ぼくは静かに感動をする。

ちょうちょ?ずっといるよ。
雲のない空?ずっとあるよ。
あなたがいるなら。
ノートブックに書き留めなくても言葉はあるよ。
あなたが聴くなら。

きみは言う。呪いのように甘いセリフだ。いや、どんな呪いだってここまで甘くはない。じゃあこれはなんだろう。そうやってきみはぼくの心に住み着くことに成功し続ける。今日も。昨日も。あさっても。ちょうちょも空もノートブックも使わずに。ぼくに生きる理由が何かを教える。

「月も星も遠すぎたね、あなたには私がいるよ、もう大丈夫」。

死なない理由が何かを教える。

3+

小説『さよならロードムービー』

幸せなんだといいわけのように話し出すあなたを、もしかするとぼくが連れ出せるかも知れない。

あなたもそれを待っているのかも知れない。確信を持てず呼吸を整えている。

今。たとえば手を取って走り出したとしたら?ぼくの愚行は瞬く間に知れ渡るだろう。あなたも悪く言われるだろう。ぼくがしようとしていることは、そういうことだ。他人に評価の機会を与えるということだ。

でも。

ぼくもあなたもお金をもらって劇場で踊ってるんじゃない。ぼくはぼくの、あなたはあなたの一度きりを生きてるんだ。それがたまたま重なったんだ。そしてたまたま今があって、あなたはそんな目でぼくを見るんだ。

急に椅子から立ったぼくの眼球の半分に、夕陽のこぼしたオレンジの光が射している。感じる。

あなたはとっくに泣き出しそうで、でもまだ期待してはいけないと言い聞かせている。

「行こう」。

決意が固まるより早く、言葉がこぼれていた。
傷跡の浮かんだ手を握る。決意が遅れて追いついて、あなたは世界からさらわれる。ぼくという凡人によって。一瞬で。永遠に。

2+

No.787

ぼくに好きだよと告げるくらい、きみって孤独なんだろうか。きっとそうなんだろう。ぼくしか伝える相手のいないくらい。毎朝おなじベッドで眠りに落ちておなじ朝に目を覚ます。ぼくは申し訳ないのではじっこで眠る。きみは笑って近寄ってくる。ぼくはますますはじっこへ行こうとして床に落ちる。何回も。そのうち階下から苦情がとどくだろう。軒下にちいさなつららがぶら下がる季節、それで誰かを傷つける妄想をしていたばかりの頃を思い出す。活字しかぼくの話を聞かず、ぼくも、活字にしか話しかけなかった。ずっとそうだと思っていた。きみは春のように現れた。当然だという顔をして。花が咲いたから来ましたけど。そんな顔をして。ぼくはきみに光のようなものを見たけどきみは、ぼくにそれを見たんだと言う。お互いの中に光を見つけてしまうのは、ぼくたちがどちらもまだ夜の中にいるからだね。好きだよ。きみがぼくに言うときそれは、謝罪に聞こえるんだ。誰に謝るの。何を。どうして。許されているのに。目をつむって歌声だけを流し込む。思い描いた季節がめぐるころ、ぼくはまだきみの教えてくれた魔法を覚えている。きみの歌ってくれた旋律を覚えておく。

5+

【雑記】ランドマークは見えない

変わっていくんだね結構。「出し切る」とか「書き切る」の感覚がよくわからないのは私がちゃんと向き合ってないからなのかな。しかし「ちゃんと」とか「向き合う」とか、そういうものではないとも思う。そうすることがかえって、なんだろうな、デリカシーないような気にもなる。もう誰もいないと思って次のドアを開けるんだろう。ちゃんと背中を押された感覚を知るだろう。誰か?それは私だ。きみがクソみたいな孤独を書き散らす時にもちゃんと見てたんだよ「ちゃんと」って言っちゃった、どうか達者で。きみは優しいから、いつも真っ先に自分のことだけ考えるといいよ。きみが世界を見なかったように世界もきみを見ていないけど世界を構成する光の粒粒みたいなひとつひとつの命とか生活とかまるごと抱えたひとりひとりの人間が、ちゃんときみを見守っていたと思う。私も気にかけていたよ。知らないだろう。だって一度も言わなかったからな。自分は真ん中で冷めてる。気取られないよう振る舞うけど、なんとなく冷めている。どうせ適合できません!と開き直ったほうが、居場所は見つかるんだけどな。知ってることとできることが違う時、ひとは「つらいなあ」と思いがち。

4+