No.877

期待してる。崩壊と構築。終わりまで立ってた方が勝ちだよ。そんな世界線で、肉体と視界が乖離してる。当たり前のこと。共通認識?それはそもそも何であるか。仮面を剥がしてしまいたくなる。剥がして剥がして剥がして、だけど最後に出てくるのは空洞で。ぼくには素顔と呼べる素顔がないんだ。ありのままのぼくなんてどこにもいないんだ。相対的に息をしていた。きみが上ならぼくは下。きみが右ならぼくは左。噛みあって、擦りあって、時には双子になって、恋人になって、友達になって、今さら新しい出会いなんて、かったるいから、オールインワンの存在になって。きみが終わったらぼくも終わるよ。簡単でしょう?美しいでしょう?誰かのついた嘘だけが本当に聞こえるんだ。

32+

No.876

きみが好きだったものを初めて読んだ。知ったふりをしていた、きみが好きだったものの中にぼくが位置していたこと、今となっては奇跡みたいに思うよ。十七なんてほんと遠い未来だったのに、殺人鬼にも天才にもなれなくて普通に落ちていったんだ。伝えたいことは、ねえ何?水色でもない、白でもない、黒でもピンクでもなんでもない、空を掴んで剥がして「嘘だったよ」って明るく伝えられたらな。られなかったな。日々はみっともなく続いて下書き保存されたままの昔のメール、取り返しのつかないこと何一つできなかった、虚像だけそばにあって、それも誰かの現実だった。いつまでも光でいさせてね、いつまでも光でいたいからきみのそばをそっと離れる、夜、空、星、また戻る、コンビニの灯り、弾かれておっことされた宇宙のまんなかで、迷子になったらこの場所の住所を伝える。どうしてこんなに光るのですか。どうしてこんなに確かなのですか。それはぼくが光っておらず、これからもきみの掌中にある証。きらきらな恋に堕ちたかった。くすんでいてもきらきらの。不平不満も漏らしながら、何不自由なく平凡に満たされて。惜しげもなく呼吸をするんだ。一心不乱に。眠りのように。夏の終わりの保健室の。嘘とさみしさと笑いがすべての空間。選ばれた時間。尊い。仮病のままでここまできたよ。きみは信じる?信じるなよ。初めて見たんだ、電照菊のイラスト、生きていけると思った。この人が生きてる世界なら、自分もきっと生きていけると、遺伝子組み換えされた魚の泳ぎみたいにまっすぐ、はは、そう思ったな。きれいな奥歯で、舌ですくった神様を水に溶いて、それは神聖なアルカリ性でした。沈黙しない猫、摩耗する活字、膨張する世界で、ゆっくりと存在を消していく苦手なもの、何も企んでない、何も謀ってない、そんな執着は持たない、春の野原で遊んだ山犬みたいに、追いかけ合っていたかった。戻れないなら終わりにしよう。きみもぼくも可哀想だよ。

13+

No.875

おまえかわいそう。ぼくなんかに好かれてる。取り柄がないんだ。なにひとつ。あげられないんだ。命だけは別として。朝か夜かわからなくなったら電話して。それだけでいい。ぱんぱんのスケジュールに、夕立みたいな空白ができたら、埋めに行くよ、駆けつける。都合のいい犬がいてとか、せいぜい話のタネにしたらいい。おまえがまだ片足を突っ込んでる世界のほうで。劣ってることを個性だと言い換えて、自分が今も笑顔をつくれるって信じてる。かわいそうでかわいい。かわいくてかわいそうで最高に凶悪。出しすぎたカッターの刃の引っ込め方がわからなくて、傍観者の机の中に入れといた。作者がはった伏線のように、それはある人の日常を良くも悪くも打破する。誰かが不幸と呼んだ出来事で、救われる命もある。おまえが知らないこと。おまえがまだ知らなくていいこと。ノートを借りたよ。平行に並ぶ線を見て、告白をやめた。丁寧に消された形跡を見て、おまえを選ぶことをやめた。そう決めて、ノートを返した。おまえは何も知らず笑ってた。無くしたと思ってた。ありがとう。

(ぼくには無理だ、こんな世界。)

10+

No.874

上手に歩こうとした
できないって落ちてくんの
ぼくわかってた
ぼくはわかっていたよ
簡単な予想

歩くための足じゃなくて
蹴るための足だから
きみは一度
一度きり、屋上の
小さな面積を蹴り飛ばす

落下より早く
ビブラートが奏でた曲を
聞いてた同級生はいないね
きみだけの一瞬
ぼくだけのキラーチューン

会わなくなって久しぶり
罪を犯したと聞きました
4K、網膜越しに
名前じゃなくて血を抱きしめて欲しかったね
救えたつもりでいるからきっと今は満たされてるだろう

正常なふりをしてハンパに溶け込む
きみが打ちこわしてヒリヒリ痛んだ
安らいで眠れそう
もう雑音を聞かないでいいのかと思うと
二度と朝が欲しくない
もうきみに会えないと気づいて夏が終わる

9+

No.873

懐かしいね
語られなかった物語
ヒビの入った瓶越しに
歪んだ初恋を見ていた

正視する勇気がなくて
言葉はだけど素直で
傷つけても血は流れなかったね
やり直そうとしていた、終わる間近まで

じゃあねまた明日って
本に栞を挟むレベルで
なんで疑いもせずに眠れたんだろう
わかっていたから、わかっていたから?

波の無いプールの底で夏を見上げた
夕立が生き物の匂いを連れて漂わせた
ぼくは小さなこどものように期待をした

ぼくを殺したきみが後悔で降ってくるのを、
淡く甘く期待をした、ヒビもつくれない水底で

13+

No.872

違うものになろうとした
きみという僕は何度も失敗をした
違うことはわかるのに
自分が何だか分からなかった

すれ違う人に
運命を感じたくて靴を買った
時間だけが過ぎてく
残りのピースは減っていく

赤いね、
誰かが言った
いいや言わなかった
それは僕にだけ聞こえた

線路に咲く花がずるい
花のように生まれて消えられたら
散らばる僕をかき集めるきみの
悲しくてかわいい顔、もう見えないな。

くやしい。

11+

No.871

ずっと昔に欲しかった蛍光ペンの
オレンジはこんな色だ
夕焼けが欲しい、と言えずに
こんな色のペン、と言った臆病者だった

始まりがあれば
終わるもんだと思ってた
終わりは来るって
終わりはあるって

幕を引けない
うまく引けない
線をいくつも練習したのに
空が何度も手本を見せるのに

置いていかれたと
思い込んだ子どもの声が溶けてる
空が延びてあなたは僕に嘘を教える
懐かしいものを全部集めた優しい笑顔で

10+

No.870

使いきれなかった生を
もう一度まわしていく
嘘だって言われても
その言葉に圧力はないから

自由には色があって
きみの目と同じだった
だから離せなかった
だから何度も終わらなかった

百年後ぼくはここにいない
百年前ぼくがここにいなかったように
今日もまたかさぶたが剥がれるように消えて
明後日また生まれるのを楽しんでいる

日常から落ちこぼれた非常が
微かな光を乱反射させ増大する
正体を見抜けなかった大人たちが
子どもの真似をしてそれが本当に下手くそ。

16+

No.869

こんなもの大切にしてどうなるんだ
大切なものを辞書に探すような奴だ
光るものを疑って暗闇に引きずり込むような奴だ
きみの幸せを願えなくて一緒に落ちろと言って
受け入れられてなお笑えなかった奴だ
きみは頭がおかしいんだ
だから僕といて平気に笑うんだ
楽しいとか幸せだとか言うんだ
そんな君を心から羨ましいと思うから壊れて欲しい
知らないところで傷つけられるのは嫌だ
知らないやつに曇らされるのは我慢がならない
考えたくもないのに何億回も考えてしまって
一度で済むなら数として正しいので今からきみを解放する
ありがとうとさようならの無い人生に終わりが来たよ

10+

No.868

今日も世界の美しさを誰とも眺めなかった
他の贅沢を知らなくて他人の情事に首を突っ込む
お金はあるだけいいけれど言葉は控えめに悪どい
勇気を、もらっていたんだ
無いほうがきっとましだった勇気をもらってしまって
あなたの世界が輝いていることを知ってしまって
僕は生まれ変わってもそこへたどり着けない気がして
傷つけることでしかあなたに近づけないと信じてしまって
傷つけることのできなかったあなたを沈みながら眺めた

6+