傷をえぐれば許される
もう充分だと擁護してもらう
足りないと悲惨なまま
ぼくたちは居場所を失う
顔のない犯人
姿のない不特定多数
ぼくだってそうだ
ぼくたちだってきっとそうだ
光が眩しい
弱い力で前を向くより
眠っていても呼吸のできる
薄い青い終わりみたいな暗闇がすき
あのねで始まり
そうだねで終わる
ただいまとおかえりのように
生まれて死んでいくのだと理解をする。
傷をえぐれば許される
もう充分だと擁護してもらう
足りないと悲惨なまま
ぼくたちは居場所を失う
顔のない犯人
姿のない不特定多数
ぼくだってそうだ
ぼくたちだってきっとそうだ
光が眩しい
弱い力で前を向くより
眠っていても呼吸のできる
薄い青い終わりみたいな暗闇がすき
あのねで始まり
そうだねで終わる
ただいまとおかえりのように
生まれて死んでいくのだと理解をする。
毛布の中で聞くラジオから
だれかの遺言が流れてくる
ここが世界ならいいのに
ここがすべてならいいのに
許される理由が見つからないから
息をひそめて
光に向かうことをやめにした
そんな決意もたやすく溶かし
さようならで仮死する
冷たい手で触ると
血のありかがよく分かるね
ふたりの意味がよく分かるね
優しいノイズにきみの遺言
かき消されずに繋いでいって
生と死を分け隔てないで
せまく暖かい宇宙をつくっていって
忘れようとしないで
忘れるとおりに忘れて
逆らわないで
夢で何度も再会させて
僕たちは一度きりだ
実感できないことを語るとき
うそつき、と空から言葉が降ってくる
お利口に聞こえないふりができる
今年は一度きり
今日は一度きり
いまこの瞬間は一度きり
一瞬一瞬をつなげて雪原にしたよ
同じ時代に生まれたの
前世も来世も知らないよ
同じ次元に在ることの純粋
きみが日常になるという奇跡
69個の詩を書いたようです。読んでくれてありがとう。良いお年を!
私は光がなくても生きられる
嘘でしょうと思うでしょう
逆なの、光があると生きられないの
謎謎のように感じるのは定着した証ね
あなたこの世界を正だととらえることに成功した
私が少し風変わりに映るかも知れない
それでいいの
それを望んだの、一緒に。
吐く息が少しずつ白くなって
人の手指が柔らかく温かなものに包まれる頃
ふと見上げた空に星がいっこも見えなくて
思い出すことを忘れたとしても
祝福されたこと
送り出されたこと
いつか迎え入れられること
舞台袖のような毎日で息をしていること
有限で綺麗なものを捕まえて
優しいものに捕まって
雪が降ったら私の言葉
雪が止んだらあなたの明日
音も無く区切りが一つ
ちいさな船を水難事故から救う
あなたの知らない世界の隅っこ
誰も知らないあなたの魔法で
手を伸ばした
という事実が欲しいだけ
そういう触りかただね
誰も悲しませない
揺さぶられない感情は
何のため、とあなたに問うよ
答えられないあなたの目を見て
なぜ黙るの、と質すよ
理由なんてないんだ
つくらなけりゃ
意味なんてないんだ
欲しがらなけりゃ
上手になれない
器用になれない
ならなくていいよ、
そのままでいいよ、
あなたが言うのを知って待ってる
ぼくは小さな臆病者で
隙あらばいつでも消えたい
死ぬんじゃあまりに大掛かりなので
あなたに残る方法が見つからない
毒にも薬にもならない恋が
たったひとつの爪痕を残したくて
生まれ変わるくらいしてみせると豪語する
百年に一度の出来事を
奇跡と呼んでいいのか迷う
口にしていいのか
君に伝えていいのか
二つ並んだ小さな星は
この距離じゃないと分からないんだ
ぼくのぼくのぼくの血がまだ
ぼくのものではなかった頃の出来事
生きている人は
死ぬなんて思いもしなかったよ
ぼくだってそう
会うことのない誰かへ血を送る
奇跡はこんなに日常にあって
迷うなんてちっぽけだよ
ほとんど隣同士に近い距離で
騙し合うための嘘なんて止めろよ
ずっと守っていた
守られているのは自分だと
認められずに血を流した
綺麗な赤ほど生臭いな
(目と鼻のどちらかが嘘をついた)
僕の祖先が誑かしたんだ
愛をお告げよ
雛が羽ばたいて
歌を囀るより先に
目を瞑って
つむって
そのまま潰してしまいたかった
器官は嘘をつきたがるから
繰り返すだけ
呼吸
四季
生と死、連綿と
繰り返すだけ、同じように
鉄でできたレールなら
お喋りしながらはみ出てゆくのに
はなうたの合間に
だけど話題は生臭い繋がりだから
気がふれた振りで、ひらり離脱を謀る一人
言葉がぜんぶ光になって
形を失ったらどうしよう
差し出せるものが無くなったら君は
僕を残して歩いて行くかな
忘れないよと約束する優しさが
百年後の君を苦しめるだろう
忘れないでと願う傲慢が
百年前の僕をそれからずっと呪ったように
魔法は切れたよ
あったかも、もう分からないな
午後になると眠くなって強がりを消した
緑の上でだから眠る、君は命を泥棒して。
(思いつき。途中でぱったり終わる話)
あなたが今いるここは天国です。
と言っても風光明媚な光景を比喩しているのではなく、正真正銘の。
いわゆる死後の。
と聞いて「はい、そうですか」と答えた人はあまりいないだろう。
だから、そう答えた。
「あ、はい、そうですか」。
天使。
こいつ、天使なのかな。
まあいいや、天使は、おっ、という顔つきで僕を見る。
「きみは、ええと、感情の起伏が足りないね」。
「そうですか」。
「そうやって生きてきたの」。
「生きて、そして死にました。やり直したいとは思いませんが、何かの役には立ちたかった」。
暫定天使は「ふむ。」と顎に手をやり頷く。
何も考えてなさそうな感じではある。
「無欲なのは素晴らしい。手間が省ける」。
何の手間かは聞かないでおく。
僕はとことん他人へ興味が無いので、少しでも期待を持たせたくない。
もしかするとこいつは話を聞いてくれるんじゃないか?と思われたくない。
「天使には、一度だけの特権がある」。
あ、やっぱり天使だったのか。
「自分が気に入った相手を一人だけ生き返らせることができるんだ」。
「そうですか」。
「良いか、たった一人だ。これはすごい特権だぞ、なんたってたった一人なんだからな!」。
「はいはい」。
「ということで、俺は君に決めようと思う」。
「はい?」。
「俺の特権を君に使わせてくれ」。
「なんで?は?もっと適任者がいるでしょう。飲酒運転に巻き込まれ、幼い子どもを残して死ななければならなかった方とか、プロポーズされた翌日に余命宣告された方とか、僕よりもっとおま、いや、あなたの特権とやらにふさわしい、値する方々が、山ほどいるはず。そもそも僕はあっちに何の心残りも無いし、できれば二度とあんな世界には戻りたくないとさえ、」。
天使がにやついていることに気づいて僕は話やめる。
「…なんです?」。
「感情を、見せてくれたね」。
「それは…」。
あんたがおかしな判断基準を散らつかせたせいだ。
「とにかく、他をあたってください。あなたの特権の使い道は僕ではないはずだ」。
「君の決めることじゃない。もう針を戻しておいたから」。
「はあ?」。
「行ってらっしゃい」。
「はああ?」。
「そして、またここに、戻っておいでね。再会しよう、大好きだよ」。
何と言ったんだ?
天使の言葉は、最後のほうは、よく聞こえなかった。
やけに腹の立つ顔をしてたなあ、ってことくらい。
目を開けた僕はベッドの上だった。
正確に言うと、病院のベッドの上だった。
なぜここが病院と分かるかと言えば、僕はここで死んだからだ。
それだけは覚えてる。
他は、忘れてしまった。
まいった、どうやら本当に時間が戻ってしまったらしい。
シーツに突っ伏した姿勢で誰かが寝ている。
(疲れてるだろう、起こしたくないな)。
なんとなくだけどそう思った。
だけどそのタイミングは勝手にドラマチックに、否応なしに訪れてしまう。
瞬いた瞳が僕を見て、目を擦ってもう一度見て、幻ではないと知って声にならない声を上げる。
はくはくと口を動かして諦めた、おまえに、ぎゅううううううと抱きしめられる。
死にかけ。
いや、生き返りかけの僕に許されるレベルの抱擁ではない。
「…は、放せ、苦しい。また天使に会わすつもりか」。
「ご、ご、ごめっ」。
「耳がキーンとする」。
「先生!そうだ、先生呼んでくるっ!」。
おまえはナースコールというものを知らんのか?
立ち上がって駆け出しそうなところを呼び止めた。
「待って。少し静かにしていたい。誰とも会いたくない。先生、にも。おまえだけ、いてくれればいい」。
動き出していた体がピタリと止まる。
そそそっかそっかーと謎の素直さでもとの椅子に収まった。
「ほしいものは?」。
「…静寂。しずかにしろ」。
「あ、うんっ。そうかっ。ごめんっ。ごめんなっっっ」。
おまえは僕を見てにこっと笑った後、そわそわしながら俯いた。
(なんだこいつ?)。
白状しよう。
僕は、こいつに関する記憶を失っている。
名前も、関係も分からない。
ただ分かるのは、こいつが僕を大好きだなってことと、あのいけすかない天使によく似てるってことくらい。
ふーん。
体はでかいくせに、肝っ玉は小さそうだな。
俯いているのを良いことに僕はその姿をじっと見る。
ふーん。
せっかく「特権」で生き返ったんだ、ちょっとくらい羽目を外しても良いだろう。
吹っ切れた僕は、そいつに向かって口を開いた。
「
(飽きたのでここで終わり。あとはご自由にご想像ください。)