呪いも祈りに変わる
光をまとえば
遠くから聞こえる叫び声も
安眠を助けてくれる旋律
時間が流れて
月が昇る
いつか同じように見ていたね
名前は覚えていないけど
思い出すために忘れるの
出会うために別れるの
つなぐために手離すの
慈しむために突き放した
ずっとあるもののようで
いつまでも続くことのようで
永遠なんか要らないと
あなたは有限の中でいつまでも笑った
呪いも祈りに変わる
光をまとえば
遠くから聞こえる叫び声も
安眠を助けてくれる旋律
時間が流れて
月が昇る
いつか同じように見ていたね
名前は覚えていないけど
思い出すために忘れるの
出会うために別れるの
つなぐために手離すの
慈しむために突き放した
ずっとあるもののようで
いつまでも続くことのようで
永遠なんか要らないと
あなたは有限の中でいつまでも笑った
薄い膜の向こう
名前を覚えていると
悟られてはいけない
初めてのように挨拶をした
産まれたんだものね
死んだんだものね
やり直しではないんだ
新しい命になったんだ
僕は神さまによそ見をされて
記憶が少し残ってるんだ
ただの初対面になりたいのに
きみは同じように笑うんだ
懐かしいね
事あるごとにきみがいう
なんだか、懐かしいね、
あなたといると懐かしいな
ふと、
良いのじゃないかと思った
本当を言っても
覚えてることをそのまま言っても
どうせ信じてもらえないなら
僕の話を聞いたきみは
そんな気がした、
と呟いた
そんな気がしたんだ、
って
うん、それきり
このお話はおしまいで
後にも先にも続かない
なんなら僕の創作かも知れないね
妄想と現実が混在して
どこからが本当か分からない
どこからが嘘かも
きみが何度も聞きたがるせい
境界線は今日もほどけていく
力を込めないリボンのように
するすると微かな音を立てて
あまりに甘い夢から隔たりを奪っていく
傷をえぐれば許される
もう充分だと擁護してもらう
足りないと悲惨なまま
ぼくたちは居場所を失う
顔のない犯人
姿のない不特定多数
ぼくだってそうだ
ぼくたちだってきっとそうだ
光が眩しい
弱い力で前を向くより
眠っていても呼吸のできる
薄い青い終わりみたいな暗闇がすき
あのねで始まり
そうだねで終わる
ただいまとおかえりのように
生まれて死んでいくのだと理解をする。
毛布の中で聞くラジオから
だれかの遺言が流れてくる
ここが世界ならいいのに
ここがすべてならいいのに
許される理由が見つからないから
息をひそめて
光に向かうことをやめにした
そんな決意もたやすく溶かし
さようならで仮死する
冷たい手で触ると
血のありかがよく分かるね
ふたりの意味がよく分かるね
優しいノイズにきみの遺言
かき消されずに繋いでいって
生と死を分け隔てないで
せまく暖かい宇宙をつくっていって
忘れようとしないで
忘れるとおりに忘れて
逆らわないで
夢で何度も再会させて
僕たちは一度きりだ
実感できないことを語るとき
うそつき、と空から言葉が降ってくる
お利口に聞こえないふりができる
今年は一度きり
今日は一度きり
いまこの瞬間は一度きり
一瞬一瞬をつなげて雪原にしたよ
同じ時代に生まれたの
前世も来世も知らないよ
同じ次元に在ることの純粋
きみが日常になるという奇跡
69個の詩を書いたようです。読んでくれてありがとう。良いお年を!
私は光がなくても生きられる
嘘でしょうと思うでしょう
逆なの、光があると生きられないの
謎謎のように感じるのは定着した証ね
あなたこの世界を正だととらえることに成功した
私が少し風変わりに映るかも知れない
それでいいの
それを望んだの、一緒に。
吐く息が少しずつ白くなって
人の手指が柔らかく温かなものに包まれる頃
ふと見上げた空に星がいっこも見えなくて
思い出すことを忘れたとしても
祝福されたこと
送り出されたこと
いつか迎え入れられること
舞台袖のような毎日で息をしていること
有限で綺麗なものを捕まえて
優しいものに捕まって
雪が降ったら私の言葉
雪が止んだらあなたの明日
音も無く区切りが一つ
ちいさな船を水難事故から救う
あなたの知らない世界の隅っこ
誰も知らないあなたの魔法で
手を伸ばした
という事実が欲しいだけ
そういう触りかただね
誰も悲しませない
揺さぶられない感情は
何のため、とあなたに問うよ
答えられないあなたの目を見て
なぜ黙るの、と質すよ
理由なんてないんだ
つくらなけりゃ
意味なんてないんだ
欲しがらなけりゃ
上手になれない
器用になれない
ならなくていいよ、
そのままでいいよ、
あなたが言うのを知って待ってる
ぼくは小さな臆病者で
隙あらばいつでも消えたい
死ぬんじゃあまりに大掛かりなので
あなたに残る方法が見つからない
毒にも薬にもならない恋が
たったひとつの爪痕を残したくて
生まれ変わるくらいしてみせると豪語する
百年に一度の出来事を
奇跡と呼んでいいのか迷う
口にしていいのか
君に伝えていいのか
二つ並んだ小さな星は
この距離じゃないと分からないんだ
ぼくのぼくのぼくの血がまだ
ぼくのものではなかった頃の出来事
生きている人は
死ぬなんて思いもしなかったよ
ぼくだってそう
会うことのない誰かへ血を送る
奇跡はこんなに日常にあって
迷うなんてちっぽけだよ
ほとんど隣同士に近い距離で
騙し合うための嘘なんて止めろよ
ずっと守っていた
守られているのは自分だと
認められずに血を流した
綺麗な赤ほど生臭いな
(目と鼻のどちらかが嘘をついた)
僕の祖先が誑かしたんだ
愛をお告げよ
雛が羽ばたいて
歌を囀るより先に
目を瞑って
つむって
そのまま潰してしまいたかった
器官は嘘をつきたがるから
繰り返すだけ
呼吸
四季
生と死、連綿と
繰り返すだけ、同じように
鉄でできたレールなら
お喋りしながらはみ出てゆくのに
はなうたの合間に
だけど話題は生臭い繋がりだから
気がふれた振りで、ひらり離脱を謀る一人