きみが好きだったものを初めて読んだ。知ったふりをしていた、きみが好きだったものの中にぼくが位置していたこと、今となっては奇跡みたいに思うよ。十七なんてほんと遠い未来だったのに、殺人鬼にも天才にもなれなくて普通に落ちていったんだ。伝えたいことは、ねえ何?水色でもない、白でもない、黒でもピンクでもなんでもない、空を掴んで剥がして「嘘だったよ」って明るく伝えられたらな。られなかったな。日々はみっともなく続いて下書き保存されたままの昔のメール、取り返しのつかないこと何一つできなかった、虚像だけそばにあって、それも誰かの現実だった。いつまでも光でいさせてね、いつまでも光でいたいからきみのそばをそっと離れる、夜、空、星、また戻る、コンビニの灯り、弾かれておっことされた宇宙のまんなかで、迷子になったらこの場所の住所を伝える。どうしてこんなに光るのですか。どうしてこんなに確かなのですか。それはぼくが光っておらず、これからもきみの掌中にある証。きらきらな恋に堕ちたかった。くすんでいてもきらきらの。不平不満も漏らしながら、何不自由なく平凡に満たされて。惜しげもなく呼吸をするんだ。一心不乱に。眠りのように。夏の終わりの保健室の。嘘とさみしさと笑いがすべての空間。選ばれた時間。尊い。仮病のままでここまできたよ。きみは信じる?信じるなよ。初めて見たんだ、電照菊のイラスト、生きていけると思った。この人が生きてる世界なら、自分もきっと生きていけると、遺伝子組み換えされた魚の泳ぎみたいにまっすぐ、はは、そう思ったな。きれいな奥歯で、舌ですくった神様を水に溶いて、それは神聖なアルカリ性でした。沈黙しない猫、摩耗する活字、膨張する世界で、ゆっくりと存在を消していく苦手なもの、何も企んでない、何も謀ってない、そんな執着は持たない、春の野原で遊んだ山犬みたいに、追いかけ合っていたかった。戻れないなら終わりにしよう。きみもぼくも可哀想だよ。