No.873

懐かしいね
語られなかった物語
ヒビの入った瓶越しに
歪んだ初恋を見ていた

正視する勇気がなくて
言葉はだけど素直で
傷つけても血は流れなかったね
やり直そうとしていた、終わる間近まで

じゃあねまた明日って
本に栞を挟むレベルで
なんで疑いもせずに眠れたんだろう
わかっていたから、わかっていたから?

波の無いプールの底で夏を見上げた
夕立が生き物の匂いを連れて漂わせた
ぼくは小さなこどものように期待をした

ぼくを殺したきみが後悔で降ってくるのを、
淡く甘く期待をした、ヒビもつくれない水底で