No.752

メロンクリームソーダ
くまのぬいぐるみ
ぴかぴか光る目
海だけの地図

きみを取り巻く
たくさんのものに
思いが込められていて
負けそうになる

勝ち負けじゃないのに
いちばんがよくて
いちばんになりたくて
負けたくなくて

蹴落とす強さもなくて
懇願する勇気ももてないで
気持ちばかりあって
気持ちしかなくて

怖いよ
きみは笑ってくれる
そんなの怖いよ
もしおまえが

私を選ばなくなったら?
そう考えると怖くなるよ
おまえのせいで幸せだから
これ以上不安にさせないで

ぼくたちは間違いを犯す
同じ間違いも
違う間違いも
もう一度繋ぎたくて繋いだ手を離したりとか

安心じゃないきみがいて
適切じゃないぼくがいて
人は今日も人を傷つけて
きみは今日もぼくに優しい

2+

No.751

あなたがぼくを愛さないので、あなたがなりたがっているものにぼくはなろうと決めました。少し難しかったが苦ではありませんでした。いろんな手を使ってここまできました。びっくりしたと思う。嫌悪もあったと思う。だけどぼくはもう衣装をかぶっているのでここから先は時間の問題。どんな恋も勘違いから始まるんです。つまりノンフィクションもフィクションから始まるんです。その中でかけがえのない本当を見つけていくということ。もし見つからなくてももともとフィクションだったものがやっぱりフィクションだったと分かるだけなので何を失ったわけでもなく、むしろ得るもののほうが多いだろう。あなたはなるべく気が散らないようにさくらんぼのヘタを結んでいるがぼくにはちょっと先の未来が見える。あなたはそんなに我慢強くない。ぼくはそんなに諦めが良くない。残り時間をどう使おうか。みるみるにじんでくる涙をかわいいと思ってしまう。小瓶に集めてレプリカの海をつくりたい。ぼくも今を堪能しよう。ぼくのものでないあなたを見るのもあと少しのことだから。そう信じているから。おねがいだ、あきらめて欲しい、これ以上の手はないんだ、全霊をささげたんだ。

『下克上の詩』

2+

No.750

きみに会うと思い出す
ぼくにも心臓があったこと
どうして別別の人をすきなのかな
夢の中ではつながっているのに

鉄塔の下で待ち合わせ
きりんの肌をなでながら
いつまでも待ちぼうけ
きみは優しかった

ばらばらになるって本当?
人と人が思い合っていても
これは祈らなきゃいけないこと?
いいや思い出にしなきゃいけないこと

また会える?
もう会わない
思い出してもいい?
星が綺麗な夜ならば

何かひとつは輝いていないと
きみは泣いてしまうだろう必ず
だから生き物ではいけない
いつか終わるものではいけない

確認しよう
星が綺麗な夜ならば
きみを思い出してもいい
きみを好きだったと認めてもいい

3+

No.749

長生きできたらいいな。
箸のあいだから卵焼きがぽとりと落ちた。
なすすべもなくその着地をスーパースローで見ていた。
まさか。
まさかあなたからそんな言葉を聞く日が来ようとは。
あ、誤解しないで、きみと暮らすようになってからだよ、そんなふうに思うようになったのは、それまでは考えたこともなかったことだから。
あなたは何を訂正もしくは撤回したつもりでいるのか。
もう消せないよ一度ぼくに届いた言葉は。
届けられたぼくのものだから、つかんだぼくは消さない絶対に。

あなたがこの先どれほど自分を責めて憎むことがあっても、ぼくが大事にして離してあげないし壊させない、時間が足りなくても毎日刻んであげる。

ここは良いところだって。
この星に生まれて良かったんだって。
あなたにはぼくを虜にするくらいの輝きがあるんだって。
ぼくにはあなたしかいないんだって、あなたにもそう感じさせたいんだって。

生まれてみるものだね。

って、ぼくがあなたに言いたかった感想を、あなたはぼくに打ち明けてくれる。

ただ頷くことしかできない、これ以上ぼくをどうしようって言うの。

(言葉は朝顔のうえ雫として輝いている。それは土を潤し次の蕾を咲けよ咲けよと励ましている。)

2+

No.748

足りないんじゃない、満たされないだけ。ぼくといても遠くを眺めるあなたから視界を奪ってしまいたい。手に入らないという、ただそれだけであなたのいちばんになった人に、生きているぼくがどうやって太刀打ちできると言う?夏の夜の長い始まりが空にすみれ色を連れてくるときも、雨に打たれた紫陽花が全身から砂糖水をこぼすときも、自然のすべてはあなたのいちばんに味方をして、ぼくを小さくてつまらないものへ変えてしまう。みんながきみを好きだと言うよ。あなたは教えてくれるけれど、意味がない。ああ、まるでわかってくれない。あなたじゃなければ、意味がないんだ。

(だけど本当はすべてわかって言ってるから、救いようはどこにもないんだ。)

2+

No.747

あなたはぼくを忘れると言う。それは睦言かも知れなかったが、少しでもそうだと言い切れず泣くしかなかった。子どもの頃だってこんなふうには泣かなかった。

肺が体に酸素を送り込む仕組みや、たんぽぽの綿毛の飛行する軌跡、ほんとうは儚い土星の輪。あなたはたくさんのことをぼくに教えてくれたひとだ。犬の尾で機嫌を図るすべや、海辺でのサバイブ術、食欲がない日の冷たいうどんのつくりかた。

熱が下がらないときには首元を冷やすんだ、ほら、意識できるかい、太い血管がここにある。とても無防備だね、こんな皮一枚で人は生きていて。どうぞ殺してくださいと言ってるようなものだよ。そんなつもりがなくても、いともたやすく殺めてしまいそうになる。人は、できるさ、まるで善行をほどこすようにね。

あなたの発言は文字として取り出すと物騒かも知れないが、声がともなうとそんなことはなかった。何を話しているか理解が及ばなくても、あなたが話しているのだから耳を傾ける価値はあるだろう、もしもあなたが稀に見る大嘘つきだったとしても、委ねる価値はあるだろう。

そうやってぼくは、いまという時間を生きていた。

怖がらないで、嘘だよ。
怖くないさ、それも嘘なの。
そうすることはできる。
じゃあそうしないでほしい。

約束の限界をよくわかっている人だった。
それが人をどこまでも束縛することも。

あなたの背中は濡れているのに、ぼくには差し出す傘がない。もう背中を濡らさなくても良いんですよと、たった一人、あなたに伝えるための口実もない。(ただ伝えられたら良いのに)、羽織っただけのリンネのシャツを湿らせていくのが何であるかなんて、この夜の下ではたいした問題じゃないよね。

もしもここが最初から贋作の舞台なら、ぼくにはあなたを哀れむ役をください。そしてあなたはそれを、ぼくがぼくのわがままでそうすることを、どうかけして遮らないでください。愛をさせてください。恋はしてしまった。つねられたので、つねり返す。あなたを突き動かす衝動すべて、ぼくが原因であってほしい。ぼくに責任を負わせてほしい。

3+

No.746

夜を映す青いみずうみの底に
あなたが沈んでいる気がしました
それは残酷な思考かもしれず
いつか現実になるのかも知れない
(現実にしたいと願ってしまうものかも)

どうか変わらせないで
握った手をもう一度握りたくて離した
血の流れていない星になりたかった
見まもるだけでも許されるの
見つめるだけで満たされるの

だけどぼくはそうではない
選ばれたのか除外をされたか
ひととして生まれてしまい
はじめの頃はよく泣いていた
まわりのおとなは優しかった

この青は飲み込む青だ
もし熱いからだを沈めても
遠のく月を見上げ思っていればいい
あなたはぼくから逃げられない
ぼくがあなたから逃げられないから

2+

No.745

この光は苦い光だ
甘いと信じたぼくを叱って
あなたはもう片方の手に
甘いほうの光を隠してしまう

借り物じゃない言葉を
探すうちなにも喋れなくなった
ちゃんと届けたいのに
既製品をリサイクルしてでも

いちから始めるということ
最後のしゃぼん玉が割れたんだ
ぼくがぜんぶを欲しがったから
組み立てる前の音が散らばる

もう奏でられない
しゃがみこんで吐露するぼくを
ずっと待ってた、
そうあなたが肯定してくれる

あなたは待ってたぼくが盾を失うのを
しだいに見えてくる川底に澱の青
さあ、これがきみの言葉
すくって差し出した、ぼくが今度はあなたへ教える

1+

No.744

みんなが年を取っていく中でぼくはひとり輝いていた。産みもせず、産まれもせず、みんなが属する輪を離れて見てた。どうして逃げ出さないのか不思議だった。きみまで捕らわれてしまうなんて。

海岸近くの林でまだあたたかい卵を拾ったね。恋や愛の果てでなく、保存のための繁栄。ぼくたちの朝食。お皿の上にのったまんまるの輝きを、命になったかもしれないものを舌の上に運ぶ。

気づかないふりをする礼儀。子どもじゃないぼくは弁えている。赤い糸で遊ぶあやとり。きみはズルをして魔法ばっか。

充血みたいな夕焼けに、覚えた限りを諳んじた。ぼくの話すでたらめな物語は種の保存になんら影響を及ぼさない。

目を閉じて、また開ける。星が瞬いて見えるのは、おまえがそう何度も瞬くからだよ。一度目をしっかりつむって。それから開けて。潤いをたたえたなら、しばらく本当の姿が見られるだろう。

きみは嘘をついていた。
ぼくが見抜いていることを見抜いていた。
透明なこころがこの先も見通してしまう。

きみは輪の中へ戻る。
ぼくはここに留まる。
さよならも言わないなんて。
手を離したらもう一度流れ星、きみを思ってこの体を燃やすよ。

2+

No.743

白い花を踏まないよう用心して歩く
浜に出るや新しい海を叫んだ
砂礫にも波にも触って欲しいや
気持ちが鎮まるのを待って振り返ると

絵にしたい風景がそこにあった
絶対にできなくてせめて焼き付けた
あなたはぼくを追いかけてここまで来た
麦わら帽子に降り注ぐ緑をかぶって

この海が背景になりますように
顔を上げたあなたがぼくを見るときに
忘れられない一枚になりますように
視線が合うと言葉はもうないな

吸い込める酸素がある
じゅうぶんな水と光がある
あなたがいて足りないものは消えた
ぼくは気づかされる

行き交う暗号の中を逆らって歩いていたこと
握った手が離れないよう乱暴にしたこと
生き甲斐は発見するものではなくもたらされた
こんなぼくをあなたは欲しがってくれた

思いがけない終わりというご褒美
逃避行の果てで神様に拾われる
交わした言葉はすべて翻訳だったんだ
この景色につながっていたんだ

ぼくはあなたの名前を忘れた
あなたもぼくの名前を忘れた
つながらなくても平気なほどに平和だから
どちらも子どもになってゼリーみたいな海に飛び込む

2+