No.599

最後のピースをはめるとき
ねがいごとを一つつぶやくんだ
しあわせでいてね
(但し、ぼくのことを忘れない限り。)

犯罪が行われた松林の陰で
祈りが夕陽とともに沈むのを見ていた
あれから何度朝を迎えても
あの時逃げてった太陽を許せない

大切なものができたときに
ぼくを思い出してくれると良い
忘れたくても拭いたくても
まるで大好きなおもちゃみたいに

一本のナイフも見当たらない浜辺で
寄せて返す波だけが涙を飲み込んだ
あと百年だって生きられない
誰も愛しも呪ってもくれないんなら

1+

No.598

一滴でもきみの血がこぼれたら
真っ先に駆けつけるぼくだった

こんなふうに思い出す日が来るんだ
必死だった頃の自分に伝えてあげたい

そうしたらあと少し穏やかになれて
そうしたらあと少し優しくあれた

生きることに甲斐性を求めたら地獄だよ
鏡のない場所で自分の顔は確かめられない

狂っていたねと陰口されるくらいがまとも
ずっとまとも、海に沈んだりしなくっても

青い夢を見たって話、あれって嘘だよ
作るのに少しも時間はかからなかった

何のために、だなんてなんて途方も無い
誰のために、そう考えたほうが呼吸は容易い。

0

No.597

決定的な証拠を夜に隠した
更けていく夜に託したくて眠らないでいた
頬にまつ毛が影を落とした満月の影を
あなたが犯人でも傷つかない唯一の方法だ

みんなが怖いと言うものを怖いと思えなかった
わがままらしく守りたいものに仕分けた
どこもかしこも家路に急ぐあたたかな笑顔
この中の誰に何を責められるだろう?

無償の愛は何も愛さないひとを非難する
無言で視界から切り取ってしまう
だったらお金くらいもらったら良いのに
無傷を望むことを許せないくらいなら

優しさは誰にも優しくないひとを敵視する
なぜと問いかけて純粋を疑う
わたしは善意です
わたしたちは善意ですという虐殺っぷり

耳を塞げば逃亡だ
口答えすれば反逆だ
だから何も伝えたくない
だから秘密にしていたい

まっすぐに見据えていますように
それはぼくの独りよがり
あなたが今もまっすぐに
自分だけを信じていてぼくをバカにしますように

3+

No.596

ギザギザを包む空のした
喧騒を飲み込んだ静寂のなか
きみとぼくはひとりで生きていくの
手をつなぐくらいで一つにならない

春に散る花
夏に照る青
秋に昇る月
冬に瞬く瞳

一度飲み込んだ思い出は抜けていかない

ひとりで産まれた頃を思い出せない
それでもばらばらなまんま
ぜんぶ記憶してひとりで歩き出すの
幸せな魔法使いだったことだけ忘れて行くの

1+

No.595

今日も三日月を製造する
肯定が足りない人のために
あのとき幸せだったのかな
そう振り返ってしまう人のために

砂糖と思い出をひとつまみ
太陽の光とそれにネオン
目覚めたくない子どもの寝言
再利用できない呪文

ぽんと音を立て三日月が生まれる
一晩にたったひとつだけ
たまたま今日はあなたの番でした
そう聞いて少し笑う

明日はまた別の誰かのため
だけど悲しくないはずだ
僕といるので
あなたに型抜き役を命じよう

落ちぶれた世界
飛び降りた人は羽根になる
鼻歌は風にのって今や海の上
もう二度と来ない夜がこんこんと更けていく

1+

No.594

まな板の上で夜がどんどん刻まれて
排水口にかえりみちが流れていく
そのうち鼻歌が始まる
帰る場所なんてなかったじゃないかって

(いつも、)

太陽はいつも悪かった
僕を殺した人のことも
凍えないようちゃんと温めて
それが平等なら僕は平等なんか嫌い

(きらい、)

忘れていく
やがて忘れていくことも忘れられる
誰にも同情されないすみっこめがけて歩く
産まれてきた時のようにひとりで

(せかい、)

思い通りになるような世界じゃないけど
思い込むことならいつでもできるね
優しい人がたまに囁くんだ
目元は淡い花の陰にて

(すきだ、)

好きになれて良かった
正しさがあることを知らないうちに
それが恋だと知る前に
融け合えない二人はいつか剥がれ落ちるよ

(ほら、)

かさぶたになりたいのに固まらない血小板
握りつぶされた心臓が夕陽をぼかして
体験したことを思い出すように目を細める
やがて足下の下水管で一番星が歌い出す

(なにひとつきみはしらない)。

3+

No.593

夜が輝く理由を知っている
言えなかったたくさんの秘密
封印された魔法の言葉
叶わなかった初恋のせいで

きみが泣いていたって
ぼくには何もできないように
ぼくがどうなったって
きみには何にもできないだろう

できないよ
だけどそう言って笑ってほしい
ちゃんとわかってほしい
冷たいのでも意地悪なのでもなく

そつなく器用であること
飽きてしまったんだ
味気なくて
正解はないと認めた

御託を並べて朝がくる
連れて行ってもらえなった星が
はらはらとまつ毛に降ってくる
さようならとこんにちは

同じタイミングで言うんだ
きっと会いたかった
そのために別れた
ぼくはきみに会いたかった

夜が捨てた星が降る
ぼくがそれに名前をつける頃
朝陽が誰かを絶望させる
こんな始まりは要らないのにって

3+

No.592

あの子に出会わなかった僕と
あの子に出会ってしまった僕とが
国道沿いで出くわす
西の空に月がまだ光る明け方に

これはまいったな
正真正銘のバグだよ
平行線はいつだって
正確でなけりゃならなかった

でもこんなこともあるんだ
でもこんなこともあるよ
そちらの月は綺麗か
こちらの月はいつも綺麗だ

幸せを確認したいの
あるいはそうかもしれない
世界が息をしていない
あの子はまだ枕に埋もれてる

手元に隠した灯りが素顔を映し出す
どうしようもないから痛くはないよね
それぞれのあの子を迎えに行く
微笑んで僕たちは何事もなく行き交った

2+

No.591

拾うもんじゃない
捨てるもんじゃない
昨夜からの雨模様が
春に似た冬を連れて来た

浮かれてボタンを掛け違える
でもそのまま出かけるんだ
あなたは笑うかな
しかたがないなと笑うかな

誓って思い出さないよ
だって忘れたりしないもの
僕を変えたあなたが
たった一行の詩になる奇跡

吐く息で曇る窓
遠いけれどたどり着く予感
傾いていく満月のタンバリン
二人を飲み込むあの夜を撃ち抜いて

4+

No.590

鏡にうつるあなたを見ていた
じかに見ることができないで
嘘なんかで何も救われないのに
目の前の一瞬を生き抜くために

指で象ったサインが
ぼくに終わりを伝える
始まりを伝えた時のように
さみしかったのは、さみしいと思えなかったこと

ここを立ち去るとき
ぼくはもう少し壊れるんだと思った
現実はそうじゃなかった
脈拍は確かで呼吸も穏やか

譲られた一瞬を生き永らえたくらいで
何も変わらないのに
分かっているのに
何度捨てても新しい光がこの手にうまれた

3+
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