No.830

ずっとひとりでいたい
夕暮れに向かって歩く親子を見て思う
行間もぼくを慰めなくなったとき
じぶんが死ぬ理由を考える

そんなものはなかった
考えて出てくるようではまだ足りない
きっかけを探している
生きるきっかけを

誰かに向けられた光に
ぼくが向かって歩いたとこで
歓迎はされないし偶然は起こらない
終わりと始まりをつなぐ時間まだ眠れない

愛している
きみはどうか?
ささやかれる時いつも疑問だった
どうして少し得意げなんだろう

理解できることが嬉しいのか
到達できたことに安らいだのか
きみにそれがないだろう
きみにはずっとそれが分からないだろう

欠けているんだよ
そう教えられているみたいだった
優しさに嫌気がさした
ぼくもあの親子みたいに誰かと歩きたい

独白にオチが必要ですか
乾いた指で新しいページをめくる
汚れで読めない部分があって
前にも一度読んだ物語だといま気づく

4+

No.829

あなたが惰性でこの世を生きることが
分かってぼくを優しく見せる
いま思いを吐き出したら
ぼくは敗者のまま勝ち抜けることができる

悟られずに秘めておくこと
美しいと考えた日々もあった
だけど今はもしあの時間を
伝えることに使えばと思い起こす

少年少女と呼ばれてみんなが有頂天だった
心臓は絹のリボンで結んであって
気づかぬ間に血がたくさん流れた
泣いてる大人はそれは醜かった

醜いものになりたくなかった
だけど例外でいられなかった
リボンで血を流す心臓を前に
ぼくはぬるい涙を流す、持ち主も知らない心を前に

3+

No.828

Deleteで消せる記憶のなか
きみから僕へ向けられた想いを見つける
今になって気づいたんだ
暗号の鍵は時間でしか無かった

唯一無二になりたかったな
求められた以上を捧げたかったな
空が青いことを恨みたくなかったな
勝ち負けで考えたくなかったな

願えば願うほど美化されて劣化する
僕が好きなきみを変えてしまう
幸せを願いたいわがままも
忠実になれなかった願いにも

同じ行間をたどっている
ページをめくれないままコーヒーは冷める
見知らぬ人の笑顔が僕を嘲笑って見える
向けられた誰かをたしかに幸せにするものなのに

3+

No.827

空から月が手を伸ばして
カーテンの隙間から光をこの目に嵌めもうとする
明るい場所をきみは歩けないでしょうと言って
明るいものをきみは知りたいでしょうと言って

僕はいつも不満だった
誰かが羨ましくて自分を逃げたかった
消せるものを消したくて今から逃げたかった
死にたいわけではなく生きたくなかった

命の重さや生き様に気品や優劣はないでしょう
誰もが本音を隠して時に違うことを言い
僕はとても生きづらくそして死にづらくあった
光はたくさんだと月の拷問に目を閉ざす

夢の中にも夢が無くなったとき
誰もが現実を生きるしかない
人は希望を求めるが僕は失墜を見せる
あるかないかの光を届ける、拍手できないあなたに。

4+

No.826

どんどん違うほうへ行ってしまう
つよい祈りも忘れてしまう
ねえ、あたしどんなことを我慢しなかった?
大人になったきみにはわかんないか、

白いテディベアにうさぎの耳をかぶせた
悟られずに
気取られずに
生きていきなさい・生きていきなさい。

ねえ、でも、なぜなの?
問いを封じ込めたからぜんぶを
あたし忘れちゃったんじゃないの?
表情の無い顔を隠すためフードを引っ張る

幸せだったのにね
認めたくなかったんだ
覚えていたらいま会いに行くのに
会いたい時には帰り道を忘れちゃってる

4+

No.825

詩のない僕がこんなに臆病だったとは。一人称を戻さないうちは溶け合うことなんてできない。うざったい首輪だなと外したものは、命綱だったとあとから気づく。街と夕焼けを逆さまに滑ってく。手に入れたかったもの、手に入らなかったもの、手放したもの、いまここにすべて抱きしめ、いつかの空へのぼってく。いつかの僕にかえっていく。

4+

No.824

ぼくには大切なひとがいないから、世界という言葉しか使えない。日が昇ったあとの街は、色に満ちていた。それは懐かしかった。なぜ新しくならないの?風景がぼくに問いかける。振り返っても届かなかったくせに。なぜ新しくなれないの?もう一度問いかける。声は幻だったかもしれない。新しい季節。終わりの六月。来年や再来年はどこにいて何を食べるだろう。誰と何を見て笑うだろう。嫌いなものはひとつもなかった。嫌いという気持ちが持てなかった。どうでも良かった。傷ついたふりをして笑った。ちぐはぐな世界とあやふやなぼく。似たもの同士で陽のあたる場所をはみ出して歩いて行く。この夢は抱えたまま歩ける夢だ。叶わなくても許される夢だ。

3+

No.823

どんな感動にもどんな悲劇にも私は慣れていくことを知った。慣れてはいけない。どの口が言うの。きみは私を好きだった。有名な言葉をそらで言うんだ。自分から出たもののように。恥ずかしくないの。不安じゃないの。私にはできない。何も持たないからと言って借りることができない。潔癖かも。そのうえ、自意識が強過ぎる。素直になれと人は言う。素直な私が自分の望む私だと期待してるからだ、疑ってないからだ。そんな私どこにもいないのに。きみは違ったな。きみだけが違って見えたな。近づかないで欲しかった。触れないで欲しかった。離したくないと思ってしまう。嫌われたくないと思ってしまう。そんな自分は嫌い。そんな自分と生きる自信はない。だけど平気で笑っていたね。ふと、思ったんだ。あ、大丈夫なのかも。そう思ったんだ。きみは気づいてない。きっと気づいてない。いつ私がきみのいる世界に入ったか。それでもいいやと何を捨てたか。得たものはないけれど、両手は自由だ。なんでもつかめる。望んだものが手に入る。そのことを知って初めて、望むことの贅沢を知る。生きるわけだ。なるほど人が、長い百年を生きようとするわけだ。私は初めて分かりかけて、迷いの声の上を踏み出した。

4+

No.822

夢にまで見たストーリーは夢の中にあったほうが輝いていた。神さまはそれをきっと分かってた。だから手の届かないところへあなたを置いた。オーロラを閉じ込めた球体がお気に入りをのせて海原へ出る。帰ってきて。どこへも帰らないで。どこかへ帰ってきて。空がつながっていればどこででも良い。みっともなくすがること、呆れたように笑われること、好きだ、千年すれ違って分かったんだ。だけど、あなた行くのか。すれ違うこともない場所。夢の中のどこでもない場所。氷に閉じ込められた酸素を求めるぼくたち、たしかに体温が足りない。言葉が足りない。歌が足りない。思い出が消えていく。一瞬に永遠の意味を知る。太陽が月に姿を変える、その境目を見た。所有者を求めて差し出された手、今ここにあるたったワンシーンを、ぼくは何度も夢にまで見た。

4+

No.821

空欄を埋める速度が間に合わない
足りてないのにもうたくさんだ
ぼくは置いて行かれた
かつて置いて行ったものたちに

青空を見たね
緑の草の上で雲ひとつ無い
きみが伝えてくれた好意を弄んだ
余裕なんて無かったのに

終わるんだ
人はどうせ終わるんだ
構わないんだ
世界はそれを構わないんだ

螺子を巻いて巻いて巻き切って
壊してしまう壊れてしまえと思ったとおり
優しくされたかったよ
きみが誰にでもそうしていたように

特別を望みません
そう言って特別になろうとしたんだ
後悔している
だけどもし戻れてもぼくは

またきみを泣かせるだろう
七年後に自分が今度は泣くだろう
結ばれないひと、でも運命のひと
つじつま合わせのために風の中で名前を呼ぶよ

3+