期待してる。崩壊と構築。終わりまで立ってた方が勝ちだよ。そんな世界線で、肉体と視界が乖離してる。当たり前のこと。共通認識?それはそもそも何であるか。仮面を剥がしてしまいたくなる。剥がして剥がして剥がして、だけど最後に出てくるのは空洞で。ぼくには素顔と呼べる素顔がないんだ。ありのままのぼくなんてどこにもいないんだ。相対的に息をしていた。きみが上ならぼくは下。きみが右ならぼくは左。噛みあって、擦りあって、時には双子になって、恋人になって、友達になって、今さら新しい出会いなんて、かったるいから、オールインワンの存在になって。きみが終わったらぼくも終わるよ。簡単でしょう?美しいでしょう?誰かのついた嘘だけが本当に聞こえるんだ。
カテゴリー: 詩
No.876
きみが好きだったものを初めて読んだ。知ったふりをしていた、きみが好きだったものの中にぼくが位置していたこと、今となっては奇跡みたいに思うよ。十七なんてほんと遠い未来だったのに、殺人鬼にも天才にもなれなくて普通に落ちていったんだ。伝えたいことは、ねえ何?水色でもない、白でもない、黒でもピンクでもなんでもない、空を掴んで剥がして「嘘だったよ」って明るく伝えられたらな。られなかったな。日々はみっともなく続いて下書き保存されたままの昔のメール、取り返しのつかないこと何一つできなかった、虚像だけそばにあって、それも誰かの現実だった。いつまでも光でいさせてね、いつまでも光でいたいからきみのそばをそっと離れる、夜、空、星、また戻る、コンビニの灯り、弾かれておっことされた宇宙のまんなかで、迷子になったらこの場所の住所を伝える。どうしてこんなに光るのですか。どうしてこんなに確かなのですか。それはぼくが光っておらず、これからもきみの掌中にある証。きらきらな恋に堕ちたかった。くすんでいてもきらきらの。不平不満も漏らしながら、何不自由なく平凡に満たされて。惜しげもなく呼吸をするんだ。一心不乱に。眠りのように。夏の終わりの保健室の。嘘とさみしさと笑いがすべての空間。選ばれた時間。尊い。仮病のままでここまできたよ。きみは信じる?信じるなよ。初めて見たんだ、電照菊のイラスト、生きていけると思った。この人が生きてる世界なら、自分もきっと生きていけると、遺伝子組み換えされた魚の泳ぎみたいにまっすぐ、はは、そう思ったな。きれいな奥歯で、舌ですくった神様を水に溶いて、それは神聖なアルカリ性でした。沈黙しない猫、摩耗する活字、膨張する世界で、ゆっくりと存在を消していく苦手なもの、何も企んでない、何も謀ってない、そんな執着は持たない、春の野原で遊んだ山犬みたいに、追いかけ合っていたかった。戻れないなら終わりにしよう。きみもぼくも可哀想だよ。
No.875
おまえかわいそう。ぼくなんかに好かれてる。取り柄がないんだ。なにひとつ。あげられないんだ。命だけは別として。朝か夜かわからなくなったら電話して。それだけでいい。ぱんぱんのスケジュールに、夕立みたいな空白ができたら、埋めに行くよ、駆けつける。都合のいい犬がいてとか、せいぜい話のタネにしたらいい。おまえがまだ片足を突っ込んでる世界のほうで。劣ってることを個性だと言い換えて、自分が今も笑顔をつくれるって信じてる。かわいそうでかわいい。かわいくてかわいそうで最高に凶悪。出しすぎたカッターの刃の引っ込め方がわからなくて、傍観者の机の中に入れといた。作者がはった伏線のように、それはある人の日常を良くも悪くも打破する。誰かが不幸と呼んだ出来事で、救われる命もある。おまえが知らないこと。おまえがまだ知らなくていいこと。ノートを借りたよ。平行に並ぶ線を見て、告白をやめた。丁寧に消された形跡を見て、おまえを選ぶことをやめた。そう決めて、ノートを返した。おまえは何も知らず笑ってた。無くしたと思ってた。ありがとう。
(ぼくには無理だ、こんな世界。)
No.874
上手に歩こうとした
できないって落ちてくんの
ぼくわかってた
ぼくはわかっていたよ
簡単な予想
歩くための足じゃなくて
蹴るための足だから
きみは一度
一度きり、屋上の
小さな面積を蹴り飛ばす
落下より早く
ビブラートが奏でた曲を
聞いてた同級生はいないね
きみだけの一瞬
ぼくだけのキラーチューン
会わなくなって久しぶり
罪を犯したと聞きました
4K、網膜越しに
名前じゃなくて血を抱きしめて欲しかったね
救えたつもりでいるからきっと今は満たされてるだろう
正常なふりをしてハンパに溶け込む
きみが打ちこわしてヒリヒリ痛んだ
安らいで眠れそう
もう雑音を聞かないでいいのかと思うと
二度と朝が欲しくない
もうきみに会えないと気づいて夏が終わる
No.873
懐かしいね
語られなかった物語
ヒビの入った瓶越しに
歪んだ初恋を見ていた
正視する勇気がなくて
言葉はだけど素直で
傷つけても血は流れなかったね
やり直そうとしていた、終わる間近まで
じゃあねまた明日って
本に栞を挟むレベルで
なんで疑いもせずに眠れたんだろう
わかっていたから、わかっていたから?
波の無いプールの底で夏を見上げた
夕立が生き物の匂いを連れて漂わせた
ぼくは小さなこどものように期待をした
ぼくを殺したきみが後悔で降ってくるのを、
淡く甘く期待をした、ヒビもつくれない水底で
No.872
違うものになろうとした
きみという僕は何度も失敗をした
違うことはわかるのに
自分が何だか分からなかった
すれ違う人に
運命を感じたくて靴を買った
時間だけが過ぎてく
残りのピースは減っていく
赤いね、
誰かが言った
いいや言わなかった
それは僕にだけ聞こえた
線路に咲く花がずるい
花のように生まれて消えられたら
散らばる僕をかき集めるきみの
悲しくてかわいい顔、もう見えないな。
くやしい。
No.871
ずっと昔に欲しかった蛍光ペンの
オレンジはこんな色だ
夕焼けが欲しい、と言えずに
こんな色のペン、と言った臆病者だった
始まりがあれば
終わるもんだと思ってた
終わりは来るって
終わりはあるって
幕を引けない
うまく引けない
線をいくつも練習したのに
空が何度も手本を見せるのに
置いていかれたと
思い込んだ子どもの声が溶けてる
空が延びてあなたは僕に嘘を教える
懐かしいものを全部集めた優しい笑顔で
No.870
使いきれなかった生を
もう一度まわしていく
嘘だって言われても
その言葉に圧力はないから
自由には色があって
きみの目と同じだった
だから離せなかった
だから何度も終わらなかった
百年後ぼくはここにいない
百年前ぼくがここにいなかったように
今日もまたかさぶたが剥がれるように消えて
明後日また生まれるのを楽しんでいる
日常から落ちこぼれた非常が
微かな光を乱反射させ増大する
正体を見抜けなかった大人たちが
子どもの真似をしてそれが本当に下手くそ。
No.869
こんなもの大切にしてどうなるんだ
大切なものを辞書に探すような奴だ
光るものを疑って暗闇に引きずり込むような奴だ
きみの幸せを願えなくて一緒に落ちろと言って
受け入れられてなお笑えなかった奴だ
きみは頭がおかしいんだ
だから僕といて平気に笑うんだ
楽しいとか幸せだとか言うんだ
そんな君を心から羨ましいと思うから壊れて欲しい
知らないところで傷つけられるのは嫌だ
知らないやつに曇らされるのは我慢がならない
考えたくもないのに何億回も考えてしまって
一度で済むなら数として正しいので今からきみを解放する
ありがとうとさようならの無い人生に終わりが来たよ
No.868
今日も世界の美しさを誰とも眺めなかった
他の贅沢を知らなくて他人の情事に首を突っ込む
お金はあるだけいいけれど言葉は控えめに悪どい
勇気を、もらっていたんだ
無いほうがきっとましだった勇気をもらってしまって
あなたの世界が輝いていることを知ってしまって
僕は生まれ変わってもそこへたどり着けない気がして
傷つけることでしかあなたに近づけないと信じてしまって
傷つけることのできなかったあなたを沈みながら眺めた