2+

No.526

『プールサイド・スーサイド』

きみを見てる意識じゃなかった
世界だった
閉じた学校のプールだった
目を瞑っても季節がわかる夏の

髪を、切ったんだ
手首はやめたんだ
顔色をうかがうのも
その傷、天使みたいだね

傷つけるかな
だけどそう思った
思ったんだよ
ぼくは幸せとその逆を同時に願う

器用なのか意地悪なのか
それともただの錯乱
独りよがり
いつか気づくんだろうな

気づいちゃうんだろうな
きみはいい子
出会っちゃうんだろうな
それをきみに教えてくれる子に

きみを見てる意識はなかった
だから嘘をつかれたと思った
「見過ぎ、さっきから」。
手で覆った口が初めて笑っていた

2+

No.525

どこも汚れていないよ
だけど錯覚が消せないんなら
ピカピカにしてあげる
きみが涙を流したら

嘘はごめんだよ
ぼくにはきみの自傷に見える
ピカピカにしてあげる
自分を騙すことをやめたら

残酷なシーンから目を背ける
演技だって分かっていても
ピカピカにしてあげる
それでも笑えるって教えたら

小さいものも可愛いものも
ずるいやつと変わらないよ
ピカピカにしてあげる
取り繕わずに会ってくれたなら

2+

No.524

現実よりも鮮やかで
まぶたを閉じていられない
空は初恋相手の髪色みたく
どんな虚像も浮かび上がらせる
それは真夜中のスクリーンだ

ねえ、
あなた引き算をしていたの
ねえ、
ぼくは足し算をしていたの
ちょうどいいと思った、誰だって

だけど加減の問題なんだ
行き過ぎて、すれ違って
分かり合えたと思ったら
また遠ざかって、忘れられなくて
やり切れなくて、利口になれない

たまにでもいい、
自分を甘やかすその声が。
たまになら、いい、
何も変わらないことを望んだ。
たまにしか起こらない奇跡なら?

夢なら続いてよ
終わらない現実なら醒めてよ
ぼくたちは不完全で
言い訳も準備できていなかった
ぼろぼろだ、流れ星になれないまま

『不眠症』

2+

No.523

目隠しをするのは
嘘を隠したいからだって
あなたは言うけど
そう思ってくれているうちは
ときどきなら笑える

見えなくなるとね
光のうつろいを気にしなくて済む
そのぶん耳がよく働くんだ
それで嘘がわかっちゃうんだ
あなたたまに嘘を吐くね

ぼくを安心させたいがための。
ふたりなら足手まといだ、
この先は自分だけが進むところだ。
そんなふうに吐く嘘を、
あなたがぼくに教えたんだ。

『嘘吐きの詩』

2+

No.522

うまく描けなかった丸を
いくつも重ねてきみを守る
上から上からかぶせていって
包んで誰も触れないようにした
とげとげのつもりになって

ほんとうは簡単で
むずかしいふうには言ってなくて
誰かの破壊を待ってる
いちばん良い役で登場したいんだ
救済の象徴になりたいんだ

間違いはないよ
目の前に流れて来たものを信じる
誰だってそうしてきたはずだ
そうして幸せだったはず
いつの時代も幸せだった

ほんとうを教えようとする
頼まれたのでもなければ同じ自己満足で
悪いかどうかは立場次第
曖昧さで追い出されることもないなら
同じ嘘で何度でもだまされてあげる

夜を追い越してった朝に
ハンガーから滑り落ちた恋を
追いかけて街へ出る
夢が遠くて風が冷たくて
きみが死ぬまでに間に合ってよかった。

『偏愛ピタゴラスイッチ』

2+

No.521

『異種の恋』

こう考えるんだ
明日が世界の終わりだと
無理だよ思えないよって君は即答
だって確信がないんだもの
では逆にたずねるよ
明日は世界の終わりじゃない、
その確信は?

ちがうんだ
ほんとうに言いたいことは
もし失敗がないとしたら
君が恐れるような失敗が
仮にも起こらない法則があるとしたら
君はそれでも僕に対しその態度なんだろうか?

少しは違うんじゃないだろうか
もう少しやりようがあるんじゃないか
眠りに落ちる瞬間を見届けたいな
そう思っていたのに先に寝てしまう
君が僕にふれるのは夢の中でばかり
だけどとてもリアリティがある

もしも失敗がないとしたら
もしも恐れていることが起こらなければ
君と僕はもう少し近い距離に座ったはず

これだからいやなんだ
せいぜい百年に届くくらいなのに
だから人間なんてめんどうなんだ
もったいぶってる時間なんて無いはずなのに

2+

No.520

『ルール違反』

よくないことだよ
あなたの予言どおりにするなんて
ぼくが消えるはずだったのに
まさかそちらを選ぶなんて

いちばんなんてつくらない
だってつまらないだろう
自分は何番目だろう?
そう思わせておくと楽しいんだ

なんて悪趣味なこと
言ったのはどの口だった
不毛な喧嘩のあとで
誰よりも優しかったのは?

2+

No.519

『エゴイスト』

誰も禁止してはいない
逃げたければ逃げていいんだ
しつこく追ってくる幻から
耐えられない現実から
居ても立っても居られずに逃げ出す、
ということは、
生き延びる意思があるということ。
そうでなくても、死にたくないと
体が頭に訴えるんだ
雑踏、海底、本の中、世界の果て
どこへ行ってもいい
きみが生きられそうな場所なら
どこへ行くにもためらわないことだ
何を捨てても向かうべきだ
だけど覚えておいて
たすけて
きみが一度でも言えば聞き逃さない
ぼくはそのために何が消えてもいいと
まごころから思っていること、
どうか最後まで忘れないで。

3+

No.518

『幸福論』

あなたが一緒に落ちてくれた
そのおかげで
ぼくの地獄は美しかった。
ここへ、落ちてよかった。
花の咲かない荒野のようでも
疑う夜は一度もなく
今、この、いまでもそう思えるんだよ。

4+

No.517

新しいハイヒールが並んで
おまえの心を奪っていく
もう耐えられないんだ
横取りされることは

だけどまともに訴えたら
困るだろう?
困らせたくない
煩わしいものは嫌いだろう?

おとなは誰だってそうだ
こどものぼくだってそうだ
天邪鬼であっても言う
おねがいだ自由でいさせてくれよって

卵焼きのにおい
悪夢の終わり
たぶん砂糖を入れすぎた
手に取るようにわかるんだから

おとなの割におまえは優しい
ぼくが弱っているうちは
おまえは悪くないよ
そう言いたいがためのエゴなんだろう

夢を見過ぎだ
おとなになったら
今に忘れるんだ
ただの気の迷いさ

見え透いている
諦めさせたいんだ
できないのに
できるならとっくにしてるのに

明日は生まれ変わる
世界のホコリみたいな子猫
毛色も瞳も何もかも灰色
気づいた時にはもう手遅れ

3+