No.569

『さよならヒーロー。』

ひとつになりたいですね
ここはあったかいですね

あなたは矛盾をいう
カモフラージュするみたいに

人間ってこういうものでしょう?
愛ってこういうものでしょう?

すがらなくても生きていけるのに
とんだ暇つぶしを見つけたあなただ

まともでいられるはずないんだ
溶け込むなんて到底無理だ

だいじょうぶ、
わたしたちって大丈夫なのよ。

夜空の向こうに宇宙があるって
誰も疑わない星の上でも大丈夫

根拠もないのに
根拠もないから

あなたばかりがまぶしいんだ

よかった、もう、
誰のことも救わなくていいんだ。

1+

No.568

惑星?ううん、ミジンコ。
どうしようか、あまりきみが輝かないのは。
繰り返し再生するうちに違うものを見ていた?
いいえ、勝手に作り変えて恋をしていた。

秘密にしていたせいだ、
誰にも盗まれないように、
あたかも盗まれるもののように、
扱いたかったぼくの弱さのせい。

きみが弱くなったのかぼくが強くなったのか、
きみが白くなってぼくが銀色になったのか、
分からないまま終わりにしたい、
だけど答えがぼくたちを捕まえるんだ。

目をつむって指先だけで、
どこにでも行けたぼくたちだった。
耳がなくても同じ歌を歌えて、
皮膚がなければ溶け合っていたぼくたちだった。

2+

No.567

ここで書いている
この手でちりばめている
句読点は、虫と汗、たまに星、
まんまるで終焉。

夢の続きを書いている
脇道けもの道に憧れている
赤くない命が
耳元で垂れ流されている

高いところから見下ろしている
真逆になる感覚を
味わっている
しばらく喋っていない舌で

きみはレモンを運ぶ
調味料で試そうとする
大丈夫と言えない
味、わかるよ。って言えない

安心が人を殺すの
知っているから
肯定が奪うの
きみのかけがえのない孤独

遠い目をさせて
通じないふりを続けさせて
分かり合える人はいない
だけど信じるものにすがるしかない

そんなきみの願いは祈りより脆い
いつまでも大切に思っていて
大人気ない意地悪をするだけで
いつまでもきみの一番でいられる

3+

No.566

ごめんね
ぼくは同じじゃない
きみの目で見るように
ぼくはきみを見ていない

本当はずっと前からだ
分からなかったんだ
知らなかったんだ
とか、冤罪を訴えるつもりはない

こんなにかなしい
さみしいことをしていた
ふたりもいて気づかなかった
こんなに虚しいことだったんだ

たくさんの好き
たくさんのごめん
たくさんの会いたい
たくさんのずっと

(うそつき、
似た者同士。)

先にきみだったのか
後がぼくだったのか
惰性で抱き合うので分からない
分からないままでいいじゃないか

取り出したキャラメルをしばらく見て
紙に包み直して
箱に戻して
完璧に隠蔽して
キッチンカウンターに置いておく

まるでいなかったみたいに
赤の他人みたいに
出会わなかったみたいに
初めてのように
終わりを知らない顔で

静かに靴を履く
そんな必要ないのに
静かに外へ出て扉を静かに締める
背中で音を聞く、しずかな終わりの音を

タオルケットの中で目を開ける
ぼくがそうすることを知っていた、
きみの瞳はいかにも朝方らしく潤んでいる
これが練習じゃないことに気づいて

利口なせいで、つらいだろうね
敏いがために、痛むんだろうね
ぼくたちは命をかけ合ったから
もしまた会えたら運命と呼ぼうね
あるいは皮肉と

嘆くまでもなく
最善は大抵不幸なんだ
不幸なものほど最善になるんだ
良い道を選びたいんじゃない
忘れたくない痛みでしか覚えてられない

(あのキャラメルに毒は塗ってないよ
うそつきかどうかは食べたらわかるさ
死ぬまで信じ抜けばいいだけ
うそつきを消すにはそれしかないさ)。

2+

No.565

店のショーウィンドウは意地悪な隔たり
一歩間違えば消費されていた側だったの
あなたぼくにそう教えたくてマネキン
に、なったの?不本意でも構わないの?

違和感があるくらいでやめられるほど
子どもじゃないんだ、戻りたくはない
戻りたい場所のある人はとても不幸だ
泣ける、良いでしょって何回も問うの

先に気づいたほうが敗者なんだ
そんなこと分かってる、苦しいはずだ
本当に幸せなら言わないはずの言葉を
本当に愛を知っているなら吐かない唾を

ただ発散したいだけに思えるんだ
あなた繕うことが苦手だけど好きのふりしてる
痛々しいんだ、
どれだけ見透かされているか知らないの

貶めることは簡単かも知れない
だけど窮鼠は猫を噛むかも知れない
ぼくは匿名であなたを愛したい
ぼくは素性不明のままあなたに寄り添いたい

開けるたびに空虚が入っている
無名から放られたいくつもの空虚が
ぼくのかわりに日本に光を投げかける
国旗は燃やすものでなく混ぜ合うもの

泣いても良いよ、慰め方も知らないのなら
逃げなくて良いよ、愛されたことがないから
悪意が何かを知らない幸福にいつまでも
気づかないことを贅沢って呼ぶんだよ。

2+

No.564

もったいないという感情が薄れた時
ぼくは世界を信じたのかも知れなかった
あるいは、自分のことを
あなたが好きだと言った人のことを

始まったものはいつか終わる
なんて嘘だよ
誰が忘れても
誰も忘れなくても
始まったものは終わらない
終わらないから終わりという言葉ができた

夜は何も連れ去らないし
朝は何も運ばない
季節は同じだし命くらい繰り返す
そのことに気づいた
いや、とっくに気づいていたことを思い出したんだ

だから、

忘れることを恐れないでおこうと思った
好きじゃなくなることを否定しないでいよう
夢に溺れる日々ばかりが美しいんじゃなく
傷つけられたことが愛じゃないわけじゃない

それだけで生きていける一日もある。

この柵を超えるのは少しだけ勇気がいる
ただしそれは少しだけだ
あることとないことの間に差はない
本当は、大きな差なんて、どこにも

冬の砂浜で見つけたビニール袋が
ぼくの日常に光をこぼしてる
あなたもきっと私のようになれるよ
ああ、これを絶望感と言うんだな
幸福そうに言ってくるきみを指して思う

豚を食べた
牛とひよこを食べて花を摘んだ
死骸の上に置いた石に供えて
行ってきますと告げる
紺色に染まる頃にきっと戻るねと告げる
ありきたりな星をきみが見上げるその前に

4+

No.563

奇跡ってたくさん集めたら薄くなる気がしてた。だから奇跡だってあまり思わないようにしようって。約束はしなかったけどそういうふうに決めたんだ。何かひとつ決めておけば忘れた時にも思い出せるかなって。最初から奇跡だった。終わりのことは知らないけど、最後までずっと奇跡なんだろう。白い箱に詰め込まれて出荷を待つだけのショートケーキだった。きみがそこから連れ出した。いちごなんて要らないんだ。何も変わっていないのに何もかもが新しかった。きみは子どもを産めないと言うけどあたらしいものはいつもきみから生まれていたよ。脱線、それだけを願っていた制服の頃。車窓の外に海が見える。きみがいるだけで毎日こんなにたくさんの色が見える。見ようと思う。そして受け入れようと思える。世界はぼくを傷つけないと、傷つけられてもまた立ち上がれると、また歩き出せると、誰より自分がわかるから。いつかこの風景に溶けたら、何もかもを睨んでいたかつてのぼくのような目をした子どもに教えたい。奇跡は平気。使い切ることはない。絶望がある限り、何がいちばん幸せかをきみはほんとにわかっている。

4+

No.562

氷を買いに出かけた夜
流れ星が降っていた
魔物がたくさん潜む森
コンビニまでを照らしてよ

手編みの夜色ニット帽
懐かしい道を消さないでね
ぼくたちを生かしてね
産んだのだから生かしてね

めくるめくきらびやかな店内
にぎやかな無数の音楽
たちまち窓の外が背景になる
ここには主役がいっぱいだ

明け方近くに店を出た
ぼくははたと立ち止まる
地面いっぱいに星のかけら
朝日を反射してきらきら光ってる

こんなにもばらばらになったの
もう取り返しがつかないの
特別じゃないものに負けたんだ
ぼくとあなたはもう会えない

2+

No.561

本当と偽物がわからないの
白すぎたんだよ
どこが底辺か知らされず
物語ばかり埋め込まれたせい

自由だと思うんだ
きっと自由だと錯覚するんだ
信じているなら間違いがない
疑うよりもずっと真に自由だ

死にたい夜を越えて
まだ誰もいない街を歩く
夢の続きかと思いながら
滅亡後かと思いながら

遠くのほうからやってくる
それはぼくを覚えている
だけどぼくは忘れてしまってて
きみの名前でそれを呼んでみる

血が通うように光がさす
壊したい人や壊れない人の
窓辺に新品を携えて
夜のためにまた起きなさいと言う

ふと何もかも見えなくなったふり
みんなしていること
みんながしてほしいこと
ぼくときみがしてこなかったこと

いつかのあやとり
輪っかのままで毛糸が落ちている
何の形をつくっていたんだっけ
見覚えのない落し物かも知れない

懐かしい気持ちで呼ばれたい
もう一度はじめからなんて面倒だ
不自然に歪んでもいい
白い紙の上では歪みは無いも同然だ

2+

No.560

ぼくは歩き出そうと思う
雨雲が遠くに見える
風が湿っている
花瓶の蕾が顔を上げる

窓の外に揺れる架空線
用のない眼球がふたつ
ひな鳥が虫を食む
かつてそうだった場所で

緑がさんざめく
虚空に文字が踊る
捕まえようと手を伸ばしたら
ひっかいてしまって飛行機が落ちた

橙を秘めて眠る家々には
まだ少し魔法がかかっている
ぼくはここを出て行こう
あなたにひかりが降るように

4+
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