2+

No.516

捨てて行けたら楽なのに
捨てて行けると思ってた
どちらも部屋を出ないんだ
呼び止められるわけないのに

きっと同じ気持ちなんだろう
そのことに安堵してる自分が悔しいんだ
物分かりのあまり良くないぼくにだってわかる
話し合えば誤解が埋まることくらい

舌で転がすキャンディが勝手に砕ける頃
青空に赤色が染み込んで来る
どれだけ黙っていたんだろう
振り返るときみはまだ怒っていた

嘘をつくななんて無理だよ、
ぼくには隠したいことがある、
きみだってあるはず、
そしてそれは欺くためではない。

ぼくたちはやり方を間違うんだ
出題者だって分かってないんだ
そもそも謎謎じゃないのかも?
目の付け所がおかしかったんだ

弁解していると泣けてくる
次から次へと涙が出て来て
こんなことじゃないんだと
そう思うとさらに泣けてくる

混ざり合わない幸福を確かめたくて
調合した毒を互いに飲ませ合う
症状を伏せたままで匙を運ぶ
ぼくたちはたしかに幸福だった

涙の跡は初めて見る文字となる
握りしめた石に光が灯り
真っ暗の目に輝きが戻る
予報されなかった夕立ちだ

意味などこもってなくていい
愛していると言ってほしい
きみが正気を取り戻すその前に
雨がすべて洗い流してしまうその前に

2+

No.515

向日葵が怖かった。見上げるといくつも並んだ暗い顔。行き先を訊ねて来る。そっちはだめだ、と口々に伝えたがる。中には親切な口調があって、笑いたいけど笑えない。表情がうまく浮かべられなくて。迷路から抜け出せなくて、たまに見える青の鮮やかさには容赦がなくて。気押され縮み混む。そしてまた道を見失う。ぎゅっと目をつぶったら、雑踏に立っていた。音と光に押し流されて、はぐれたりしないよう、ぼくはきみの手を握りしめている。そうか、おとなに、なったんだっけ。一瞬、だったね。ずっとだと思ったのに。向日葵に見下ろされる悪い夢は覚めることがないって。雑踏に飲み込まれそうになる。自分が進みたい方へ進む、前へ。つないだ手を握り直す。きみがひいてくれたぼくの手で。同じ命とすれ違う。ぼくたちはあの夏の生き残り。信じた希望のままに大人になったんだ。理想通りではなくても。ここまで歩いて来られたんだ。みんなの手の先に大切なものがつながっている。クマのぬいぐるみ。天体望遠鏡。白の汚れていないワンピース。お互い名前なんて知らない。回遊しているぼくたちを見下ろす星は、そっちはだめだ、ってもう言わない。どこにもハズレなんて無かった世界で、ようやくぼくたちは微笑みを覚える。

2+

No.514

死にたい。たしかにそう聞こえた。だけどきみは生きたいと言ったのだそうだ。こんなにも重荷になってるなんて想像できていなかった。きみの嘆きはぼくを突き動かすためのものだった。八つに割れた鏡の中に入道雲がいくつも映って初めて夏を残酷だと感じた。首筋にあたる鋭利な冷たさに目覚めさせられることもなかった。どの道を選んでもいずれ同じ場所にたどり着いたんだろうか。答えは変わらなかったんだろうか。それは誰にも分からない。分からないからこそ、信じたいほうを信じることができる。助詞を組み替えて、誰も、悪者にならないようにしたかった。だけどそれでは届かないと知った。蹴落とすことは平気だったけど、非難の目が気に食わなかった。そんな中でぼくを見つめる目があった。他と違って、咎めない代わりにあわれんでいた。傷なんかちっとも怖くない。きみはぼくの主張を否定する。嘘だ、それは、怖くて、たまらない人のすることだよ。そう否定した。仕向けることは得意だった。特に、人の欲望をならして行く都会では。一度大切なものになってから裏切る。大きな傷になるくらいどうだっていい。後悔させたかった。間違いを認めて欲しかった。でも、今、手に入れた正しさは無意味だった。遠ざかって振り返る。花束だけを残して。ひとりで立ち上がるきみのむこう、ようやくひとつになった雲がいびつに羽の形をしている。

2+

No.513

勝手に持ち去ろうとしないでくれ。きみだけの世界じゃない。ぼくがいてぼく以外もいる。きみがいてきみ以外もいる。そうだろう?常軌を逸したふりをして何もかもに混沌を目論むのはやめてくれ。きみはもしかすると、じゅうぶんに優しいのだろう。そのせいで傷つきやすく、優しさと弱さは紙一重だと、たまに自分を呪っている。もっと無慈悲でないと辛いんだと。きみは意味を欲しがっている。無理もないことだ。現在のきみの考え方では、きみが生まれてきたことにはなんの意味もないんだから。ちょっとした、ミス。しかも、再現性のある。だけどほんとはそんなことない。きみがそう考えているだけ。勝手に。そして呪っているだけ。かんたんなことを難しくして。例えばぼくは適していると思う。少しずつでいいんだ、全部じゃなくてかまわないんだ、ぼくを助けると思ってくれないか。きみは今日からごはんをちゃんととる、夜が明ける前に眠りにつく、日に一日はあらたな発見をする、ぎこちなくても笑う、他人の言動の意味を推測する、憶測でいい、もちろん。夢は忘れてもいい、だけど思い出す日をつくる、誰かを憎んでもいい、だけどいつかは許して水に流す、嫉妬をしてもいい、そのかわりきみのすてきなところにも目を向ける、分からなくなったらぼくに訊ねてくれ、止められるまでやめない、たまにはひとりで泣いてもいい、ただし壊れる前にここへ戻ること。これを守るんだ。そうやってきみはぼくを守るんだよ。

3+

No.512

日付が意味をなさなくなってだいぶ経つ
いや、本当はそれほどでもないのかも
なくしても惰性で数字を基準にする
ベッドの下には銀河が見える

教えられた希望は幻だったよ
繰り返したって途中で分からなくなるんだ
ある時点から先へ進めなくなる
意に介さないあなたは指で空を切り取り遊ぶ

希望にすがるせいでいつかなくなるんだ
ないものをあると信じようとするからだ
だけどそれじゃいつか消えてなくなるさ
きみが信じるだけしかしないのならば

おれならつくるよ
自分の手で、だってその方が実感がわく
形や色がいびつな方がよっぽど忘れないだろう
あなたは言ってぼくの手に銀河のかけらをのせる

それはどんな時でも役立つ代物、
きみが限界を感じた時にはすべてを教え、
きみが傲慢な時には一部だと知らしめる、
肌身離さず持ち歩いておくといい。

ぼくはその言葉を鵜呑みにし首にかける
破片は日によって色と手触りを変えた
限界を感じそうな時も
消えたほうがマシなんじゃないかって時も

ついにぼくは楽園にたどり着いて
希望が幻なんかじゃなかったと知る
無限に作り出せるものだったと知る
出会ったばかりなのに懐かしいあなたがいる
今日も遠くの空を指先一つで切り抜いている

2+

No.511

見えなくてもいるよ
ちゃんと広がってあるよ
雲を払えば宝石箱があるのかな
でもほんと言うと知りたくなかった
知っていても見ることができないなら

あなたはぼくの願いごとをそろえてくる
あれもいいよね、これもいいよね
ぼくが手に入れられないものばかり
どうしてちゃんと言ってくれないんだろ
あなたごと手に入れるしかぼくには方法がない

あこがれは涙に姿を変える
誰にも気づいてもらえなくて
あなたは言うんだ、涙って、
世界でいちばん簡単に作り出せる海だよね
誰もが誰かに何かを伝えたい世界で

おでこをくっつけ暗示をかけあう
ぼくは、ぼくたちは幸せでした
この時代で、この世界で、この二人で、この今で
明日目覚めたら最初まで巻き戻す
物語は始まらなかった、だから終わらなかったと

花の棘で指先を突いてささやかな証とする
三日月はそれ以上にも以下にもならなかったと
潮は引いたきり満ちることはなかったと
だから行きたい街へ行くことができて不自由なかった
他愛もない約束を守り続けるくらい、不自由なかった

3+

No.510

気泡だと思った
次に魂かなと思った
空を目指すものはダレ?
僕を余裕で追い越して

ひとりひとりの顔
ひとつひとつの表情
揃いも揃って模様になって
解像度を上げる気力もない

だけどなんとか踏ん張って
覗いてみると酷いカオ
僕は何か悪いことをした?
あなたやあなたの人生に?

謎の宇宙へまっさかさま
東京駅を天井にして
アリスと誰かに呼ばれたけれど
その名前にはもう反応しないや

みんな悲壮な面持ちだね
ゆっくり撫でてやる時間だってある
ああ、逆さまなのは僕だった
考える彗星が往来を一時停止させる

今宵限りのカーニバル
とりどりの風船は張り裂けそう
笑顔を許されたピエロが順に割っていく
破片がハラハラハラと降り積もる

もう誰も泣かないで
僕はここで歌っている
宇宙と駅のはざまで逆さまで
きみが落ちてきたら受け止めてあげられるよう

2+

No.509

そんな顔しないで
どうせ明日には忘れられるんだから
ぼくはきみを慰めたい
だけど弱みに漬け込んでもみたい

記憶の断片がいま頭を埋め尽くしてる
トゲトゲしたものもあってチクチク痛くて
容量を減らしたいのに簡単に捨てられなくて
責任逃れで自分殺しは平気に行う、怠惰。

きみにとって良い人でありたかった
救世主でもなく害悪でも隣人でもなく
思い切ってどれかになれたら良かったな
嫌われたくない、そればかり優先した

きみは、強いよ。
ぼくはどんなことされても嫌いにならない
きみがこぼしたわがままに不平を言わない
そうすることで無難な世界を助長してても

守りたいものは守りたいと口にする
健全に長続きする秘訣だろう?
ぼくはむずかしいほうばかり選んで
いつか誰かに褒められたくて

荷物を捨てて逃げても良いよ
そう言いながら知っていた
きみは逃げない、逃げられない。
知り尽くした手の内を一個一個明かしても

つめたい朝と生ぬるい夜
血で洗い流した空がまた白くなって
悪びれない生き物を大量に産み落とす
どうりできみは美しく、ぼくは明日も生きづらいのだ

2+

No.508

ありがとう
やさしくしてくれて
得体の知れないものに
夜にしか伝えられないけど

みんな寝静まってひっそり
きみの体はおもちゃ箱の中
有象無象のモチーフと共に
出せなかった手紙の束が枕

冷蔵庫のゼリーみたいに
形が定まっていく
最初は液体だったのに
言葉がわかるために

なんだって両面があるんだ
例外なくそうなんだ
でも人は一つしか捉えられず
どうでもいいことで反発し合う

もともとが違って
別個に存在した
だけど余地はあった
あの人の慈悲はあった

いずれ死ぬのに
みんな死ぬのに
仮初めに寝てみたり
生きることは辛いと比較したり

おもちゃ箱の中で見る夢が
束の間の休息になりますように
きみが目覚めた世界にはぼくがいる
きみを幸せにできないぼくがいるから

2+

【雑記】終わらない問い

本当に、そうだろうか?

その言葉を呪文のように唱えて欲しい。新しい考えに触れたときだけでなく、私たちの周りにある当たり前に。それは本当に「当たり前」なのだろうか?子どもは思いがけないことを質問して大人をうろたえさせる。うろたえた挙句、空想めいた理想論や、「もう少しおとなになったら分かるよ」なんてはぐらかす。

たとえば、「好きなことで生きていけるほど人生甘くない」という言葉だ。本当にそうだろうか?ほんとに?

私は、逆の時代がどんどん来ているように思う。逆って、つまり、「好きでもないことで生きていけるほど、人生って甘いものなんだろうか?」。いいや、違うように思う。中途半端にしか生きていけない。

私はいろいろなことに興味を持って首を突っ込んで、ちょっとかじってはやめてを繰り返す、ようは飽き性の毛があるから、余計に、思うんだが、打算も、計画性も、そもそも好きでやっている人には敵わないんだ。

人間にとって一番耐えがたいことは、無意味なことではないだろうか。何をしていても、この気配に襲われたら、気を病んでしまうんじゃないだろうか。その予感は、人を鬱にしたり、精神の病気にしたりする。そしてその確信は死に至らしめる。

逆に、意味のあることならある程度生きられる。だから、意味の有無論、自問自答、これのやりすぎはリスキーで、あまり考え過ぎないのが健やかの秘訣。

だが、無意味論に太刀打ちできるものがあって、それが、最終的には「でもやっぱりこれが好き」という気持ちである気がする。そう思えるかどうかで、危機を、乗り越えられるように思う。

これがうまく作用しなかったり、他からの作用で捻じ曲げられてしまった時に、周囲を傷つけたり、事件が起きてしまうんだと思う。

なので、好きという気持ちは隠し持っておくほうが安全のように考えられる。

だけどほんとうは、好きという気持ちは表に出してこそあなたを幸せにしてくれるもので、少なくともそういう可能性を高めてくれるもので、同じようにそれを好きな人とつながることがあったり、運が良ければお金になったりする。誰かを元気付けたり、それこそ救ったりする。

人間が打ち負かされる時、無力感や無意味感がある。太刀打ちできるのは、好きという気持ちだけ。

きれいごとに聞こえるな。
でもたぶん合ってるよ。一理あると思うよ。

結論:って私が言ったら「本当に?」って思うんだよ。ほら、そういうとこ。

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