雲のない空
雲ひとつもない青い空
空っぽのくせに吸い込んでくれない
ぼくの腕や脚や眼球などを吸い込んでくれない
消えてしまえ、
言われなくても願っていたよ
誰よりもぼくが願っていたよ
横取りしてくれないかそういつも願っていたよ
だったら心臓を、譲渡できる。
唐突に親友が言うのでまさかと回答した
でもおまえいつも譲渡したがってたろう
なぜ知らないふりをしてはぐらかすんだ
親友と呼ばせた親友はぼくへ緻密な計画を話す
抜け漏れ無くはないけど完璧は偽物だって
片目をつむったほうがまっすぐに歩けるんだって
知らないほど無知な子どもじゃない
譲渡するんだ
消えるんじゃなくて
奪われたり売りつけるんじゃなくて
ただ譲渡するんだ月夜に、終電が過ぎた頃に
なんてことを教えるんだろう
リアルを見物したいのならスマホでも漁っていろ
心からの笑みをこぼしながらぼくは応答した
おまえはきっと耐えられなくなる
重いと思うのか
おれが時間を巻き戻せないことを悔いるまでに
心を持った人間だと信じてくれるのか
ぼくはしばらく黙った後で
笑いながら泣いた
器用すぎるんだ忍ばせた選択肢
そこにぼくが気づかなかったらどうなっていた?
昨日と明日のあいだの小さな暗闇でふたりは泣きながら笑った