【小説】星刑

凶暴な気持ちが出てきて困る。消したつもりだったが眠っていただけだったのか。おまえは透明でわかりづらい。砂利の上は足音が響いて安心に程遠い。お伽話で読んだんだっけ。塔の上に眠るお姫様。待ってるんだ。泣いてるんだ。自分を軽視してくれる従者の謀反。きっと弾圧されるよ。きっと裏切られるよ。どちらが生き残っても磔刑に処される。失敗できない。失敗はしない。ぼくが目をつぶると天の星が一斉に襲いかかってくる。そんな幻覚を見た。とんでもないことになんとぼくは興奮している。お伽話のお姫様。裏切り者の分身。ようやくひとりはふたりになれるよ。たどり着いたその部屋できみは笑って待っている。背後に人を従えて。秘密の線引きを間違えたな。言い放ち残酷に笑うだろう。ぼくはそれを見てきたように分かっている。夢に見たんだ。分かっていたから話に乗った。きみは笑う。ぼくも笑う。きみは予定調和を破壊した存在を忘れないだろう。死ぬまで夢に見るだろう。夜は日毎に訪れる。死ぬまでぼくを見るだろう。満足だ、ああ、満足だ、凶暴が満たされる。黒いおおきな獣が喉を鳴らしている。もう何も要らないと言う。そうか、そうか、それはよかった。降る星を初めて本当に見た。落下する体は宇宙空間に真っ逆さまだ。流星も追いつけない。きみなど到底追いつけまい。