※権化(リツの同僚)視点
シリーズまとめ⇒QUARTETTO(カルテット)
↓
自分の名前を辞書で引いてみたことがある。
1.晴れること。気象用語では雲量2〜8の状態。
2.晴れやかなことや場所。転じて、正式の場所。華々しい栄光の場所。
3.疑いの晴れること。
ハレ。
それがおれの名前だ。
※権化(リツの同僚)視点
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自分の名前を辞書で引いてみたことがある。
1.晴れること。気象用語では雲量2〜8の状態。
2.晴れやかなことや場所。転じて、正式の場所。華々しい栄光の場所。
3.疑いの晴れること。
ハレ。
それがおれの名前だ。
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上から降らせるキスが好きだけど、下からすくいあげるキスもいい。
いつもと違う角度から、あなたの瞳が濡れているのを見られるから。
ぼくたちいま晴れた空の下にいるんだって、疑ってたって分かるから。
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同じ自分の違う日常を知っていくということ。
億劫でなく、それが生きる動機になっていくということ。
好きな人と暮らせるということは、そういうことなんだと。
いつかのぼくへ伝えに行こう。
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どうしてこんなことに。
何回目かわからない台詞を頭の中で繰り返す。戸惑っているのはぼくだけで、少なくともぼくにはぼくだけに思えて、混乱してしまう。
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いちばん始めから見ていたかったな。
あなたが産声を上げた瞬間、周囲で喜ぶ人になりたかった。はじめての食事、はじめての歩行、あなたの身の上に起こったすべてのはじめてに居合わせたかった。ランドセルを買ってもらって張り切るあなたを写真におさめたかった。あなたが悩んだり笑ったりするところを見守りたかったし、反抗期に入って口数の少なくなったあなたからぶっきらぼうな対応を受けたかった(あなたにもそんな時期があったんだろうか?想像つかない)。初めてのデート前日に緊張するあなたを陰ながら見守りたかったし(うそ、絶対阻止)、免許をとった日も、成人式の夜も、いろんな経験をして、オトナになっていったあなたを、ああぼくはどうしてあなたから一周遅れで産まれたんだろう。
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たった数日そのコースを歩かなかっただけで、ずいぶんと景色が変わっていた。雨がたくさん降ったせいかも知れない。花は落ちて緑が繁る。薄く柔らかな葉っぱが太陽を照り返してる。生命の息吹を感じられる、爽やかな風の似合う、そんな形容詞をつけて愛でるべき変化だろうに、ぼくの心では季節はずれの黒い毛糸が絡み合っていた。ぱさぱさに乾いて、ほどくことができなくて、弱いところがぎゅうぎゅうに締め上げられる。助けたいのに、それはぼくに「みすてて」「もういって」と告げていて、ひとりの予感に震えていた。
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残業があり夜ごはんを一緒に取れなかった日、あなたはすでに寝ついていた。
物音を立てないようベッド脇に寄り添って、ローテーブルにお酒の瓶をみつける。
もしやぼくの帰りが遅くてさみしい思いをしていたな、と自惚れながら跪くと、シーツの中から蔦のようにするすると腕が伸びてきた。
そのまま首に絡みつく。
されるがままに身を任せていると、掠れた声がぼくの知らない名前を呼んだ。
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絆なんて結んでほしくない。誰ともつながって欲しくない。1本の糸にすがって欲しい。ぼくがあなたを思うように、あなたにもぼくを思ってみて欲しい。得体の知れない幸福感で、死にそうになるから。