no.327

この呼吸があなたを怯えさせる
淡くむらさきに発光するからだでは
きみが真夜中を待ち焦がれるとき
ぼくはその手をとって白日の下を歩いてみたかった
うまくいかないものだね
そうやって悲劇を楽しんでいるのかもって思えてくるほどに
人を死なせるには自らが手を下さなくたっていい
ただ見ているだけでも彼らは死んでしまえるんだ
言葉をかけないことでも、何もしないことでも
命がサイクルしているという保証はない
そのおかげで命はサイクルしていると言い張ることだってできる
明日は何になろう、そう声をかけながら正反対の神様になることだってできる
ぼくは、つらい、さみしい、うれしい、たのしい、
そんなことを繰り返していたらじょじょに体が色を持ち形を持つ
存在してしまった、これが幸か不幸かはまだ分からないけれど
ぼくのずっと見ていたきみは何度でも立ち上がったね

3+

no.326

あなたの血が骨がそして願いが、あなたにとってはもうすでに重たいのだ。雪を踏みしめるにも罪を感じ休まらなかった。種を詰めた縫合跡をなぞることは心やすらかになる数少ない方法のひとつで、そればかりに夢中になっている時間もあった。ぼくは奪取することが使命で嫌われることが多かったがあなたは褒めてくれた。きみの、これはなんでもないことだってカオが、さいごにひとをあんしんさせるんだろう。言っていることはちゃんと理解できていなかったと思うがぼくをあなたの見る目は優しかった。ときどき、もういいんじゃないか、って思うんだ。役割を放棄して、すべてに背を向けても。踏み出す一歩で奈落へ行って、青い業火に朽ちることもできず、呻き声すら苦痛になるような時間に身を投じたって。想像することはそれ自体、ぼくにとって擬似的な懲罰で、だからやっぱりどこまでも臆病で狡猾なんだ、たとえ誰に責められなくても。ぼくが、あなたにとって何よりの仇であること、知ってからだ。あなたのまなざしは、ぼくを通して、あの人に向けられていたんだ。復讐を被る理由なんてあまりあるのに、ぼくの向こうにはいつもあの人がいたからだ。後悔だけで終わることができたらよかった。落としたガラスのコップが思いがけない割れ方をするように、二人の行く末は神様だって知らない。嵐が遠い。静寂はさしあたっての咎、けなげな鼓動は見返りを求めたりしないのに。

2+

no.325

ぼくのために生きているきみのいる世界が今日もぼくを殺さない。優しくて残酷で少しだけ胸が苦しい。この冬は何を残して何を失うんだろう。みんなひとつになってあったまることはできないんだろうか。答えは、できない。小鳥の胸に巣食うその体温のような、口づけ、脚の数が他と違う昆虫の成れの果て、のような初恋の残影、きれいなばかりでなくて汚されることだって経験したかったけどたやすく許されなかった、それを羨む人の少なくないことはしばしばぼくを恐ろしい気分にさせた。ねえ、きみは怖くないの。ぼくを愛することが?わたしは平気、だってもう知らない頃には戻れないもの。だったら。いっそ。ろうそくの火を隠そうとしてかえって目立たせてしまう。そんな命で、そんな崩れやすさで、どうやってこれからをつなげていくんだろう。わからない、わかることなんてなにもない。だから人は人を信じる。わからないことの中に何かひとつ、自分の意思でどうにかなるものを通したくて。きみが好きなようにぼくは自分を好きになれない。だけどきみにだったら騙されてもいいと時々思うようになっている。抵抗するなんて馬鹿げてると言えるような。いま寝がえりをうてば光が差す。まだだ。この夜を追いやるにはまだ早いんだ。そうしてぼくはきみの背に耳をつける。明日の血潮が頬を撫でるように。喉元で文字が弾けて懐かしい花の香りでむせ返りそうなほど。わかりたい。いつかきみをわかりたい。そんなふうに言えばきみは笑うんだろう。もう届いているってことだよ。主語の要らない会話。だいすき、それから、あいしています。そう声に出したら、初めてぼくがぼくのものになった。きみはまだ夢の中。

2+

【雑記】テレビ番組のこと

刑事ゆがみが面白くてドラマ毎回録画してるんだけどこれほんと面白い。私の中で永遠の瀬田宗次郎である神木隆之介が浅野忠信におちょくられながらわちゃわちゃ謎を解決していくミステリードラマなんだけど、まあ神木隆之介演じる羽生が視聴者をもっともらしくミスリードしてって浅野忠信演じる弓神がおいしく解決するんだけど何が面白いかって敢えてメインのバディに触れないとするならば弓神&山本美月演じるヒズミの関係性であるHooo!前髪短くて服装やら食べ物やらなんかいろいろ無頓着なのにハッカーみたいな山本美月が可愛くて俺は…俺はだな。でも毎晩漁ってるのは有村架純の画像なんだ…。ああ、同感だ自分でもやばいと思う、いろんな意味で。これ原作漫画読めば色々わかるんだろうけどたぶんなかなか読まない。

そして今日はWOWOWで録画しといた安室奈美恵の25thアニバーサリーライブ観てたけどちょっとわけがわからなくなるくらい彼女は二次元なのかな?かっこよくてかわいすぎた。アラフォーで息子は成人しててデビュー当時の映像見てもぜんぜん古臭くないし年とらないどころかむしろ輝きを増してて「すげー」となった。大ファン!てわけではなかったけどやっぱりすごい人であった。あんな体型ありかー。生きているのが信じられないくらい二次元。

すぐ二次元かって言うのボキャブラリーなさすぎてやめたいけど自分の中で他にしっくりくる言い方なくていつも使ってしまう。要は怠け者なんだ…。

あとマツコデラックスがやってる夜の東京を徘徊してる番組も好き。なんか夜の街って人がいても落ち着く。とか言いながら日付変わる前にはお布団かぶって眠りに落ちずにはいられないんだがな。夜の街とは程遠い人生だからこそよそから補給しているんだろう。

以上、さいきん見た・見てるテレビ番組について。

2+

【雑記】なにやらアツい

バリエーションとか角度の問題で新しい作品が発生するのであってずっと同じこと書きたい気がする。「それ」が何かははっきりと分からない、分からないから続いてるんだろうけど。ずっと睡蓮の絵を描いてた画家いるじゃん。あのひともたぶんそうだったんだと思う(?)

全部自分でできるひとなんていないから、自分でするところと他人に任せていいところを区別しておくといいんだ、自分の中で。ここだけは自分でしないと気が済まない、とか、要はそれが自分の得意なことで本当にやりたいことなんだから。それにエネルギー注いだ方がよほど良い。それ以外の部分は別の誰かにとっての「本当にやりたいこと」であったりするのだから、それらが合わさった方が絶対にいいものができる。あとはそういう人たちとどう出会って目的や過程を共有するかなんだけど今は言わずもがなインターネットというとても便利なツールがあるので使わない手はない。

これもう性格もあるんだろうけど私は匿名性の保証によって得られる効果ってすごい信頼してて、それによって実生活ていうの?普通の社会じゃ発揮されない部分が、人材が、持ってるもの発揮できんのなら社会にとってすごくいいと思う。世渡り上手や社交性の高い人間の持つエネルギーってすごいんだけど、それにハンデ感じてるひとだって能力はずっと優れてるケースだってあって、そういう人の声ひろえる仕組みがあれば絶対いいと思う。そしてこんなことは私が今更熱弁するまでもなくたくさんの人が理解してて動いてるんだろうけどあらためて思う。

今の会社や学校が居心地悪くてもそれだけで脱落者って呼ばれるの馬鹿げてないか?ましてや自分でそれを受け入れるとか?クズなわけねーじゃん。「うるせーバーカ」って心の中で思いながら立ち去れば良いんだよ。たったひとつの環境にそぐわなかったくらいで何が脱落だよ狭い世界に生きてんな、アデュー!てな。むしろそんなすぐ適応できるわけねーだろー、て思うし、探してみたら絶対あるから。そして昔に比べて絶対に土壌は、選択肢は、増えつつある。もったいないから絶望すんな大丈夫。内向型の未来確保できない環境や組織なんかいずれ詰む。まだ言語化されてないもの、表出されてない思考、どれだけあると思ってんだ。ちなみに私は知らんがたぶん、えーと、かなり、うん、けっこうある(適当)!

まずは自分を殺さないところから。

3+

no.324

ぼくたちは互いの殺意を見せ合った
だからって変わる出来事はなかった
手を繋いだって体温まで移せないのと同じで

あの灯台はもう光らないね
掠れた声が感情もなく告げる
その横顔を盗み見る勇気はまだない

およそこの世に生きており
一度も愛する人を刺してみたいと
思わないやつなんているんだろうか

読めないラベルのマッチを擦る
そして後悔する
こんなにかなしい旅を始めてしまったことを

会うもの会うものこじれていた
大きな絶望を覚えた
だからといって飛び降りるまではなかった

強欲な風はすべてを持っていこうとする
今は遠くなってしまった誰かのマフラー
首元に結び直して弱い熱を集める

手品師のトランプのように
繰り返しシャッフルされても
限られた枚数だから必ず巡る

使わなかった切符
使えなかった切符
星を砕く時きっとあんな音がする

差し出せるものがないぼくたち
顔を覆う包帯をはずしていった
それは致命的とも言える譲歩だった

だってもう怖くないんだ
きみを信頼することの代償が
失うことでしか満たされないなら

奇跡に背を向けたつもりで
まだ許されたがっている、その役目を
きみに預けてみたいだけ
ぼくに委ねてほしいだけ

2+

no.323

破壊されなかった塔
神格化されて不本意は籠の中
鍵は王様ごと国外追放
年号の変換
ルビーの瞳
反射する海のように豊かな髪
待ちわびて充血の瞳
誤字の反乱
愛しい、かなしい
ぼくがきみを産みたいのに
なぜあのひとから産まれたの
名もない草に音楽を与えよう
夕日に色を与えよう
そうすることで支配しよう
誰も騙されやしなくとも
時計の上でひなが孵る
それにはあってはならない器官がある
驚いて鏡の中に逃げ込んだ
あの日からずっと出られないんだ

2+

no.322

階段の先にドアがある
かかとを追いかけてここまで来た
何度目かで掴み損ねて
正体を教えたくなる
雪は夜半に降り始めた
ほら、またあの日だ
ぼくはまだ繰り返すのか
なぞり過ぎた順序は空で言えるほどだ
あなたが振り返る
逆光で見えない
ぱたぱたと涙の粒が降ってくる
スローモーションで七色にきらめく
ぼく一人のものだろうか
そう疑わずにはいられない
そんなさみしさが流れ込んでくる
握り返そうと思った手が
好きだよと言って突き放す
すがりつこうと思った背中が
凍えたコートを置き去りにする
あきらめられない
幻だとしても消え切らないせい
かんたんに捨てられない
他人が呆れれば呆れるほどに
ぼくの始まりを見ていた
そして終わりを見届けた
あなただから
星になるわけがない
海に溶けるわけがない
ましてや魔法に姿を変えたりしない
ぼくは誰よりも知っているんだ
その歪んだ唇が本当は笑っていたこと
野生の動物みたいな目がぼくを肯定していたこと
あなたの不在を認めたくないだけのぼくが
作り出したまやかしだったとしても
きっとそう振り返るだろう
きっとそう告げるだろう
それを知っているから眠ったりはできない
好きだよと言って突き放す
ああ、回想はまた振り出しに戻る。

2+

no.321

熱がさがらない日々に退屈して
ひとりでサーカスをみた
知っている顔を見つける
チケットには羽が生えて飛びまわり
ここがどこかも分からなくなる
一歩踏み入れたらぼくは異人
かなしい空中ブランコ
裏切りのナイフ投げ
気高く孤独な金色のライオン
彼らからはみんなの笑顔が見えている
あとは少しの恐ろしい期待と
だけど予定通り着地しておじぎする
観客は自分の中に芽生えかけた
おぞましい気持ちに気づかず
それを抱いてもとの生活に戻る
ぼくもそうなのか
ぼくもきっとそうなんだ
蛇でも飲んだみたいだ
ビルの清掃員
初心者マークの運転者
ベビーカーに眠る赤ちゃん
蛇でも飲んだみたいだ
眠れば元どおりになるんだろうか
眠ればサーカス会場に戻ってしまいそう
蛇でも飲んだみたい
蛇でも飲んだみたい
そうだ、蛇を、飲んだんだ
もう行かない
サーカスなんて行かない
違う、二度と行けない。

1+

no.320

ノウゼンカズラのことはきみの鼻歌で知った
ぼくはそれを繰り返し過ぎて笑いものになっていたんだってね
気づかなかった
この白い部屋がとてもやさしいのは色を拒まないせい
たとえば赤が飛び散れば赤を吸いこんだし
青が反射して光るならその作用と光ごと飲みこんだ
そしてもう一度目を覚ましたら白に戻っているんだ
(魔法のよう、だろう?)
魔法と言えばきみの存在も似たようなものかも知れなかった
道理で誰にも話が通じなかったわけだと今なら理解ができるけど
(本当のことを言えば、そう、ぼくは、誰にも理解されたくなかったんだ)
毎日飽きなかったよ
ノウゼンカズラは毎年同じ花を咲かせた
そこに種子を落として
あの爆破事件があった後にも何事もなく咲いた
いったい何人がどれだけ勇気づけられただろう
それは花弁に埋もれて笑っていた
それはきっと長い昼寝だ
それは一緒に歩いていても同じくらい遠くへは行けなかった
それは言葉を尽くしたり道具を使うことでは叶えられないことだった
今ぼくはこうして自分の生い立ちを振り返っていられる
その時間が与えられたことに意味があると考えるなら確かにあるんだろう
目をつむってもひときわ鮮やかな残像になるのは穏やかな幼年時代
(来世はどんな命になろう?)
ソーダ水の向こうからきみが鼻歌と同じ調子で語りかけてくる
平気だった、謎謎をそのままにしておくこと、それがぼくに与えられた才能だった
蔦の茂みを無理矢理に通過したせいで付いたかすり傷
きみが一つも年をとらない理由なんてさがさないさ
出会ったころと変わらぬ姿でぼくのさいごを見届けてくれれば

3+