no.321

熱がさがらない日々に退屈して
ひとりでサーカスをみた
知っている顔を見つける
チケットには羽が生えて飛びまわり
ここがどこかも分からなくなる
一歩踏み入れたらぼくは異人
かなしい空中ブランコ
裏切りのナイフ投げ
気高く孤独な金色のライオン
彼らからはみんなの笑顔が見えている
あとは少しの恐ろしい期待と
だけど予定通り着地しておじぎする
観客は自分の中に芽生えかけた
おぞましい気持ちに気づかず
それを抱いてもとの生活に戻る
ぼくもそうなのか
ぼくもきっとそうなんだ
蛇でも飲んだみたいだ
ビルの清掃員
初心者マークの運転者
ベビーカーに眠る赤ちゃん
蛇でも飲んだみたいだ
眠れば元どおりになるんだろうか
眠ればサーカス会場に戻ってしまいそう
蛇でも飲んだみたい
蛇でも飲んだみたい
そうだ、蛇を、飲んだんだ
もう行かない
サーカスなんて行かない
違う、二度と行けない。

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