階段の先にドアがある
かかとを追いかけてここまで来た
何度目かで掴み損ねて
正体を教えたくなる
雪は夜半に降り始めた
ほら、またあの日だ
ぼくはまだ繰り返すのか
なぞり過ぎた順序は空で言えるほどだ
あなたが振り返る
逆光で見えない
ぱたぱたと涙の粒が降ってくる
スローモーションで七色にきらめく
ぼく一人のものだろうか
そう疑わずにはいられない
そんなさみしさが流れ込んでくる
握り返そうと思った手が
好きだよと言って突き放す
すがりつこうと思った背中が
凍えたコートを置き去りにする
あきらめられない
幻だとしても消え切らないせい
かんたんに捨てられない
他人が呆れれば呆れるほどに
ぼくの始まりを見ていた
そして終わりを見届けた
あなただから
星になるわけがない
海に溶けるわけがない
ましてや魔法に姿を変えたりしない
ぼくは誰よりも知っているんだ
その歪んだ唇が本当は笑っていたこと
野生の動物みたいな目がぼくを肯定していたこと
あなたの不在を認めたくないだけのぼくが
作り出したまやかしだったとしても
きっとそう振り返るだろう
きっとそう告げるだろう
それを知っているから眠ったりはできない
好きだよと言って突き放す
ああ、回想はまた振り出しに戻る。