no.324

ぼくたちは互いの殺意を見せ合った
だからって変わる出来事はなかった
手を繋いだって体温まで移せないのと同じで

あの灯台はもう光らないね
掠れた声が感情もなく告げる
その横顔を盗み見る勇気はまだない

およそこの世に生きており
一度も愛する人を刺してみたいと
思わないやつなんているんだろうか

読めないラベルのマッチを擦る
そして後悔する
こんなにかなしい旅を始めてしまったことを

会うもの会うものこじれていた
大きな絶望を覚えた
だからといって飛び降りるまではなかった

強欲な風はすべてを持っていこうとする
今は遠くなってしまった誰かのマフラー
首元に結び直して弱い熱を集める

手品師のトランプのように
繰り返しシャッフルされても
限られた枚数だから必ず巡る

使わなかった切符
使えなかった切符
星を砕く時きっとあんな音がする

差し出せるものがないぼくたち
顔を覆う包帯をはずしていった
それは致命的とも言える譲歩だった

だってもう怖くないんだ
きみを信頼することの代償が
失うことでしか満たされないなら

奇跡に背を向けたつもりで
まだ許されたがっている、その役目を
きみに預けてみたいだけ
ぼくに委ねてほしいだけ

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