no.326

あなたの血が骨がそして願いが、あなたにとってはもうすでに重たいのだ。雪を踏みしめるにも罪を感じ休まらなかった。種を詰めた縫合跡をなぞることは心やすらかになる数少ない方法のひとつで、そればかりに夢中になっている時間もあった。ぼくは奪取することが使命で嫌われることが多かったがあなたは褒めてくれた。きみの、これはなんでもないことだってカオが、さいごにひとをあんしんさせるんだろう。言っていることはちゃんと理解できていなかったと思うがぼくをあなたの見る目は優しかった。ときどき、もういいんじゃないか、って思うんだ。役割を放棄して、すべてに背を向けても。踏み出す一歩で奈落へ行って、青い業火に朽ちることもできず、呻き声すら苦痛になるような時間に身を投じたって。想像することはそれ自体、ぼくにとって擬似的な懲罰で、だからやっぱりどこまでも臆病で狡猾なんだ、たとえ誰に責められなくても。ぼくが、あなたにとって何よりの仇であること、知ってからだ。あなたのまなざしは、ぼくを通して、あの人に向けられていたんだ。復讐を被る理由なんてあまりあるのに、ぼくの向こうにはいつもあの人がいたからだ。後悔だけで終わることができたらよかった。落としたガラスのコップが思いがけない割れ方をするように、二人の行く末は神様だって知らない。嵐が遠い。静寂はさしあたっての咎、けなげな鼓動は見返りを求めたりしないのに。

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