no.267

分かっているんだ
本当の渦中からは僕なんて見えていないって
どんな言葉も、差し出した体の一部さえ
君を現実に救うことはできない

肉ほど確かなものはない
骨ほど熱いものはない
いま繋がっているこの組織も
いつか離れ離れで要素になってしまうなら

僕たちは分かり合えたよね
僕たちは信じ合えたよね
僕たちはもう満足したから
僕たちは二度と生まれ変わらないよね

約束のひとつひとつ
抜け駆けのひとりひとり
隠し事のひとつひとつ
騙し合いのいっていって

何もかも裏返したらもうさみしくない
いつか言ったよな
さみしいって理由なんかで泣きたくないんだ
次の瞬間にはナイフみたいに笑おうぜ
殺し合った仲じゃないか、僕たちは

1+

no.266

こんなこと、めずらしくもない
言い聞かせて引っ込めた涙が
後になって馬鹿みたいにこぼれてくる

道行くうちの何人か
怪訝そうに、または心配そうに
気にかける眼差しを送ってくる

共同体なんて何の力も持たない
それを育ててこなかった僕の感性にとって
愛も友情も何の救いにもならない
これまで邪険にしてきた罰だろうなあ

夜の街はフルーツポンチみたい
白玉だんごとパイナップルのあいだを
回遊するのは尾びれのおおきな熱帯魚
僕は不便な体しか持たないで道を歩く

虚しさが全部をリセットする
たとえどんなに美しくても
たとえどんなに健やかでも
それが何になる
欲しがらなければ無駄なこと

たとえば僕が貪欲で
おまえが人生に一度きりの
最初で最後の登場人物だったら
こうまではならなかったろうに

僕は豊かで
僕は飽きやすく
僕は持たされて
僕は他人を羨むことがなかった

こんなこと、何でもない
そう言い聞かせて笑おうとしても
あったものをなかったことにできない

ピンクの寒天
茶色のみつ豆
ぷりぷりの蜜柑
白玉だんごはたぶん小さな頭蓋骨

こんなこと珍しくもない
なんてことはない
小説にもならない
僕が抱えて行くしかない

別れようなんて、
おまえから僕に言うからだよ

1+

no.265

ギプスの上に置かれた手
温度は感じられなくても
体が優しく締めつけられ

どこへも行かせたくない、
と思った
いずれ旅立つこの手の人を

電信柱には蝉の一匹
テレビは最終戦の結果を伝える
涙みたいな汗がこぼれて
それはあなただけのものだと
知らないだろう、教えてあげたい

僕らふたりの通学路だった田んぼ道
蛍の光みたいに緑が輝いてる
空は不自然なほど青くて
その濃度を冬に持ち越せたらと願った

歌舞伎町の朝
人が生きること、今日が明日へ続くこと
ずる賢くても、要領が悪くても
ここにある夜が
誰にとってもそのうち必ず明けること

それら全部美しいって
言える人だ
それが全部嬉しいって
君はもう、言える人だ

(だから、
こわがらなくていい)

2+

【雑記】好きは大丈夫

下の「好きに気づく」でも書いたけど、好きなことに関しての続き。

好きなことは自分の中で時とともに変わったりするけど、よそからの力では消せないと思う。たとえば、時間がなくなったら好きなことできなくなって忘れちゃうんじゃないか、とか。否定されたら自信がなくなって、好きなことでもやがて嫌いになっちゃうんじゃないか、とか。

そういうの全然心配しないでいいと思う。

好きなことが好きなうちは絶対消えないし消せない。もし消えたりすることがあったら、あなたは結局自分の意思でそれを好きじゃなくなったんだと思う。べつの新しい何かをもっと好きになったのかもしれないし、もう好きになり尽くしたのかもしれないけれど。とにかくあなたは自分の意思でそれを好きな自分じゃなくなったのだから、環境や周囲に責任をなすりつけるべきではない。

だから、つまり、繰り返すが、好きなものは強い。

押し込められるものじゃない。やめろって言われてやめられるものじゃない。もし一定期間それを中断したとしてもずっとどこかで考えているし、いつかはきっと、って野望抱いてる。それは幸せなことなんだよ。好きなもののために葛藤できる、なんてことは。好きなことがなければその葛藤はそもそもない。贅沢なんだよ。

命があるうちに、体や頭が自分の思い通りに動くうちに、好きなもののためになら、何だってしたほうがいい。他のことにとんと無頓着なんて最高じゃん。好きな気持ちはずっと続いたとしても、それを続けられる心身がなければ愛でようがない。健康は大事。私は自分のそういった領域を守るためなら、人間関係なんかたいして重要じゃない、はっきり言って軽視しても良いと思ってる、本当に。その人にとって、べつになくても良い程度ならばの話だけど。まあもちろん自分のしたことは自分に返ってくるよ?それを見越してまあいいやって関係ならべつに要らないのでは。べつに要らないどころじゃなくて、限りある時間を奪うという点では害悪ですらある。

愛や友情より大切なものを持っていたってべつにそれはそれでいいんだよ。ただその考えはあまり声に出して言うもんでないかもしれないけど。人間同士も効率よく繋がればいい。媒体が電子であってたとえば一生現実に対面することがなかったとしても、それはリアルになんら劣るものではない。生身だから、時間かけたから良いってもんじゃなし。もちろんそれはそれで良いこともあるんだろうけど、必ずしもそうじゃない。というところまで含めて覚えておくのが良い。

他人が色々言ってきても、その人にとってはこっちが他人事なんであって親身なわけない。その人の言ったことを鵜呑みにしたとしてなんか災いがふりかかってもその人が責任とってくれるわけでないでしょ。アドバイスしただけだもんって逃げられる立場だもん。自分以外すべてそうだよ。だったら、ハイハイって素直なふりしてさその実聞き流せばよいのだ。心の中で「うるせーおまえ俺じゃねーだろバーカ」つってな。とってもいつまでもガキ精神。顔に出ないタイプだとより良いね。私はよく顔に出てると言われるから上記の話ほとんど適用できない派。

ほら分かったでしょう。他人は無責任。

5+

【雑記】好きに気づく

いちばん最初に新しいことを始めようとした時ってさ、なんとなくだけど大切なこと全部できてたなあと思う。手順のこと。効率的ではなかったかもしれないけど効率的になるよりも大切なこと。

たとえば私が詩のサイト作ろうとした時は今みたいに会員登録してポン!みたいな過程ではなくて自分で一からサーバー借りて(または買って)タグ書いて(または教えてくれるサイトから勉強やコピペ自由のやつコピペして)掲示板必要ならそこも借りて設置して検索サーチに登録してやっと知ってもらって、みたいな色々することあったんだけど、そもそもそういう情報集めたり、こういうのは全然苦じゃなくて「これどうすんだ?」って疑問を持って、自分の好きなサイトやここいいなあと思うところがあれば真似から入ったり、とりあえずやってみるかってやってみて、ダメなら何度でもやり直す。随時手を加える。

こういう過程が全然苦じゃない。時間許す限り半日でもパソコンの前に座ってられるし大学で一人暮らししてた時はもうそれこそベッドから起きたらまっすぐパソコンの前に行ってご飯食べずに気づいたら夕方だったみたいなの日常的にあるし、それって少しでも他人から強要されたものだったり要は自分が好きでやり始めたことでなければありえないのね。誰でもそうだと思うけれど。だから「好き」ってものすごく強い。それが「得意」な人よりも「好き」な人のほうが絶対に強い。好きはそのうち得意になるかも知れないけど、得意は好きにならないケースも結構あるよね。自分でもそうだし他の人で「この人これ得意なんだなあ。これしたらいいのになあ」ってこっちが羨ましくなるような才能持っていても本人が「私それ興味ない」だったりね。

好きはすごい。
勝手に自分から加速させてって、他のこと気にならなくなるし、そのためになんとか時間捻出しようとするし、となると他の部分でも工夫するし、とにかくそれにまつわることが何も苦じゃ無くなるっていうハイパー無敵。

挫折って「得意なこと」に対して起こるものであって、「好き」なことにはそもそも起こりえない現象だよね?
だって続けられるんだもん。
折れるとかそういうことはない。

もちろん得意なことがたくさんあるに越したことはないけど、好きなことがあることはもっともっと大切。下手でも好き。

じゃあ好きなことってなんで好きになれたかというと、自分が寂しかったりもうダメだって思ってたときに「それでもここにあるよ、いるよ!」と寄り添ってくれた記憶や体験があるものって割とそうなるんじゃないかな。またはそれに関してすごくかけがえのない思い出があるとか。

だから若い人は好きをいっぱい作ってください。どんな苦労も大丈夫な好きなもの。評価が無くても低くても自分が好きなもの。そしてときどきその幸せを噛み締めてあげる。
これがあるだけで、誰も死ななくて済む夜もある。

4+

no.264

近しいものを探している
いま周りにあるものから
目を逸らして
誰にも敵意を見せたくなくて

卑屈な微笑み
誰のために生きたかったか
忘れてしまいそうになる
そんな時はもう早く
分からなくなって

いっそ、

透明になりきれない透明
無名になりきれない無名
ぼくは誰にもなれないし
誰にも本当はなりたくない

集荷人のもう来ない
青色したポスト

誰にも言えない秘密
捨てられた船の模型
風に飛んでった麦わら帽子
蝶々追いかけた緑の網
最底辺にはぼくの
何にも溶けきらない骨のかたまり

届かなかった思い出は
それだけで輝く
果てのない直方体
生は朽ち果てることがない
配達人は待っているのに

2+

no.263

空の青さをどうしても
見ていられずに視線を落とす
食べかけの林檎に蟻が群がっている
どうせなら違うものに生まれていたら良かった

願望は次元を飛び越え
あるはずの足枷を切り離す
装飾過多の逃亡劇に見る
類稀な悪役として君の世界に生きること

それ以外に無いと言って
それだけが望みだと認めて
他に座る椅子はない
誰の目も当てられないよ

真下の鮮やかな妄想を吸い上げているから、
冠に添えられた花がいつも瑞々しいのは。
骨になりもう何百年も経ったから、
生い茂る薔薇の棘に痛み一つ感じないのは。

入れ替わる苦悩
それは片割れの悦楽
いま血も仮初めの魂もささげる
恋い焦がれた死に様のためにならば

2+

【小説】猫の乞食と仇の王

どうして僕を好きなんだろう。じゃ、ない。どうして僕を好きなふりをしているんだろう。おまえは本当は自分のことが大事で優しいんだ。僕が貶められると自分のことが貶められる。僕が笑われると自分が恥ずかしい。僕が足りないと自分が満たされない。僕が泣くと自分が辛い。おまえは僕と自分を勝手に結びつける。「そこまで分かってるんならもういいよ」ってゆっくりと笑う。僕は絶対におまえに懐くことはしない。僕がほだされて甘えるようにでもなれば(考えただけで虫酸の走ることだ)、おまえは幸せであたたかい気持ちになるんだろう。そうして無条件に敵でもなんでも受け入れて博愛の権化みたいになるんだろう。僕はいつでもおまえが失脚すればいいと思っているし、支持者その他大勢から見放される日をひそかに待っている。僕の足は顔の見えないやつに切り落とされたけれどそうでなくても行きたいところなんかなかった。僕の顔の半分は悪戯によって焼け落ちたけどそうでなくても向き合いたい相手なんかなかった。僕はこの時代のこの世界に生まれてきたけれど別にそうじゃなくても良かった。おまえは否定も肯定もしないでただ一言「でもそれじゃあ俺がさみしいよ」と呟く。噛み付いても怒られない。歯を立てても逃げ出さない。僕のほうが先に疲れてしまって顎を緩める。おまえの手からは食べないと何度も言ったのにおまえは同じことを繰り返す。僕の知ってる犯人はおまえとは似ても似つかないやつだったよ。満腹になるとどうしても眠くて意識を遠ざけてしまう。おまえは僕が眠るまで身動きをしない。だから僕はするすると糸をつたうように安全に、あの日捨てられたと思っていたぬいぐるみの上にたどり着ける。うむ、このふかふかは健在だ。取り上げられる前のすべてが揃っている。僕の好きなものがまだ何一つ欠けていなかった世界だ。(おまえを殺す)。僕の復讐心には気づいているくせに。(そのうち、殺す)。唱えていないと忘れてしまいそうになる。(癪だ)。おまえの腕の中で眠りに落ちる、その瞬間だけは、今じゃないいつかに戻りたいと願うことをやめられるということ。教えたくない。悟られたくない。

おまえの知ってる僕は無口だ。

1+

no.262

ただの障害であること。誰かの物語で、名前のない一部として生きること。何かを認めることはなぜいつも恐怖をともなうんだろう。なぜそれは敗北を予感させるんだろう。差し出すことをしただけなのに。いつまでも綺麗でいたいなんて綺麗事なのかな。踊り狂っていた猫も歌い狂っていた鳥もやがて静かになったダイヤモンドの夜に。それぞれ一つ一つの首を垂れて、預言者の言っていたとおりだ。それを安心だとみなさなければならないだとか。いかれてるんだって、今でも僕は思っているよ。どうしても巻き取られるわけにはいかなかった。こんな僕にある人が自分だけかわいいんだねって言う。仮にそう見えているのだとして、最後の一枚はまだ剥がれていない。名乗り出たくて、だけど億劫で。ここにいつまでもいたくて、でもそれじゃあ流されてしまうだけで。人は、かなしい。起きた後や寝る直前になると特にそんな思いが湧き上がるのは、眠りが死につながっているから。いや、もっと俗っぽい勘違いか。(だといいのに)。本当は好きなんじゃないかって、君にだけは言われたくなかった。ひとりでは眠ることもできないくせに。抱きしめ合うことはなくても損傷の具合を互いに気にかけている関係。早く先に崩折れないかなって。うまく生きられない君の存在が今日も僕の夜を洗い流してくれる。いつまでも不器用でいたいと思うよ。どれだけ見つめてもまっ暗い空の奥には何も見つけられない、そんな毎日でも。願うことを忘れないでいたい。肌は刻々と生まれ変わって強くなることをしない。いろんな刃物があてられてその度に柔らかな細胞は切り開かれる。二人がどんなに反発しあっても赤い血は知っている。遠い神様の声が秘められた小さな運河。ないしょ話がこぼれ出す。

1+

no.261

何も疑いたくない。このまま飲み込まれてもいい。それはきっと悪いようにしない。僕を彼らのところへ連れて行ってくれる。蜜と柔肌だけの日々。流れる血も新しい。怯えることはない。両耳をふさいだ手を自由に使っていても傷は広がらない。それで僕は創作ができる。古いものを綺麗に並べて破壊されない。目を閉じて歩いていてもぶつかることはない。水の中にいるみたいに平和だ。平和だった。水中から火の手が上がる。波紋が嘲笑になり腕を見れば何本もの棘が突き刺さっている。ある棘は貫きうねっている。もう治癒はないだろう。僕は引き戻されてしまった。あれを知ったばっかりに闇はいよいよ深い。神様なんてカタカナだけの呪文。口に残っていた砂糖が砂に変わる。息ができないけど理由を言えない。君はそこにいるの。君も同じだと言って。棘に埋もれて鈍感な獣。保ってなどいたくない。闇に包まれる一瞬、片隅に桃色の空が見えた。あれは今の終わりなのか、これから始まる断片なのか。あんたは剃刀の使い方がうまくない。舌の使い方もうまくない。そう言って仕方なさそうに笑った君は本当に僕の幻じゃなかったと誰が言えるんだろう。突き立ててくれ。桃色が溶けきってしまう前に。こちらから破ろう。闇に心地よさを覚える前に。冷えたキッチンの蛇口からひとりでに転がり出た真実が与えられる。僕たちは誰からも生まれなかった。最悪だ。僕たちはひとりでに生まれた。本物は覆い隠された。最悪だ、のその意味も分からないまま白いベッドの上で繰り返した。蝉が壁に当たって落ちる音がした。もしここが体内だとしても異物を取り除く手はない。心だったら良かったのに。何にもない。響いてこない。静かだ、

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