no.261

何も疑いたくない。このまま飲み込まれてもいい。それはきっと悪いようにしない。僕を彼らのところへ連れて行ってくれる。蜜と柔肌だけの日々。流れる血も新しい。怯えることはない。両耳をふさいだ手を自由に使っていても傷は広がらない。それで僕は創作ができる。古いものを綺麗に並べて破壊されない。目を閉じて歩いていてもぶつかることはない。水の中にいるみたいに平和だ。平和だった。水中から火の手が上がる。波紋が嘲笑になり腕を見れば何本もの棘が突き刺さっている。ある棘は貫きうねっている。もう治癒はないだろう。僕は引き戻されてしまった。あれを知ったばっかりに闇はいよいよ深い。神様なんてカタカナだけの呪文。口に残っていた砂糖が砂に変わる。息ができないけど理由を言えない。君はそこにいるの。君も同じだと言って。棘に埋もれて鈍感な獣。保ってなどいたくない。闇に包まれる一瞬、片隅に桃色の空が見えた。あれは今の終わりなのか、これから始まる断片なのか。あんたは剃刀の使い方がうまくない。舌の使い方もうまくない。そう言って仕方なさそうに笑った君は本当に僕の幻じゃなかったと誰が言えるんだろう。突き立ててくれ。桃色が溶けきってしまう前に。こちらから破ろう。闇に心地よさを覚える前に。冷えたキッチンの蛇口からひとりでに転がり出た真実が与えられる。僕たちは誰からも生まれなかった。最悪だ。僕たちはひとりでに生まれた。本物は覆い隠された。最悪だ、のその意味も分からないまま白いベッドの上で繰り返した。蝉が壁に当たって落ちる音がした。もしここが体内だとしても異物を取り除く手はない。心だったら良かったのに。何にもない。響いてこない。静かだ、

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