no.262

ただの障害であること。誰かの物語で、名前のない一部として生きること。何かを認めることはなぜいつも恐怖をともなうんだろう。なぜそれは敗北を予感させるんだろう。差し出すことをしただけなのに。いつまでも綺麗でいたいなんて綺麗事なのかな。踊り狂っていた猫も歌い狂っていた鳥もやがて静かになったダイヤモンドの夜に。それぞれ一つ一つの首を垂れて、預言者の言っていたとおりだ。それを安心だとみなさなければならないだとか。いかれてるんだって、今でも僕は思っているよ。どうしても巻き取られるわけにはいかなかった。こんな僕にある人が自分だけかわいいんだねって言う。仮にそう見えているのだとして、最後の一枚はまだ剥がれていない。名乗り出たくて、だけど億劫で。ここにいつまでもいたくて、でもそれじゃあ流されてしまうだけで。人は、かなしい。起きた後や寝る直前になると特にそんな思いが湧き上がるのは、眠りが死につながっているから。いや、もっと俗っぽい勘違いか。(だといいのに)。本当は好きなんじゃないかって、君にだけは言われたくなかった。ひとりでは眠ることもできないくせに。抱きしめ合うことはなくても損傷の具合を互いに気にかけている関係。早く先に崩折れないかなって。うまく生きられない君の存在が今日も僕の夜を洗い流してくれる。いつまでも不器用でいたいと思うよ。どれだけ見つめてもまっ暗い空の奥には何も見つけられない、そんな毎日でも。願うことを忘れないでいたい。肌は刻々と生まれ変わって強くなることをしない。いろんな刃物があてられてその度に柔らかな細胞は切り開かれる。二人がどんなに反発しあっても赤い血は知っている。遠い神様の声が秘められた小さな運河。ないしょ話がこぼれ出す。