no.424

きみに見せたアリスが七色を消していく
輪郭だけになりたいの
迷わないように、あつめられるように
ひとつにばかり依存してほしい
雨あがりの庭の土
呪いみたくなつかしい匂いがする
棒読みでいいから口にしてほしいんだ
鳥や虫にとっての甘いジュースになる前に
二回恋に落ちてほしいんだ
きみを好きになる前と後のぼくに
神様がいないなら夜だって祈れる
見つからないのなら、いつもだって
絶対に傷つけるもんか
その誓いをすぐにあざむくということ
ミモザはぼくたちをモノクロにする

2+

no.423

鳥の羽根に身をうずめて、だいじょうぶ、ぼくは、知っているよ。なんでもない風景の中にきみが今も息づいていることを。それは水たまりが反射すればまぎれてしまうような光でしかなくても。かつてぼくがいた場所を忘れていない。いつか忘れてしまうのはきっときみが先なんだろう。だってここには時間ばかりがあるもの。その他には、きれいなものと、香りのいいものばかりが。あたたかくて、あまい。すり抜けていってしまうものばかりだ。ぜいたくであることとゆたかであることは等しくないね。まったく違うものでもないんだけれど。空がつながっていても意味はないね。声がとどくだけじゃ意味はないね。欲求はどんどん密度を増して、こんな今じゃがまんできなくなる。しあわせにならないでなんて願うこともある。どんな感情でもいい、忘れないでくれ。ぼくがつかれて眠っている時も、きみはぼくを忘れないでほしい。ここには何でもある。手をのばせば青い宝石が、緑のねこが、黒い靴が、白い水が、橙の葉が、黄の雛が、いつでもすきなだけ手に入る。彼らはぼくに要らないと言わせたいんだよ。だけどぼくは馬鹿じゃないので、欲しかった、ありがとう、って顔をする。退屈だよね。きみに会うことが恥ずかしくなるまで自分に嘘をつく。足首にひっかけて放り投げた冠も、眠りから覚めればまた頭上で光ってる。

3+

no.422

ずっと好きでいたかったね。好き合いたかったね。自分のものだと思っていた気持ちに、また会うためにわかれるんだったらいいな。きっと今がいちばんつらいんだろうね。ちょうど境目だから。好きだったころと、そうじゃなくなるころと。桜を見るたび思い出すのかな。なんか陳腐だね。呆れるくらい平凡だね。望みどおりなのにちっとも胸は平気じゃないや。スカートってなんだか落ち着かないね。今ならきっと、前を向くだけでだれかが褒めてくれる。グラデーションの一部になりたい。半分溶けて、半分消えたい。男の子。女の子。早くみんな幸せになって。それが無理なら諦めもつくのに。わからないね。いつまでも未来は。だから歩き出せるんだろう。行き着くところで文句のひとつも言ってやる。

3+

【小説】はじめましてとぼくはいう

その家のドアはいつも少しだけあいていた。こどもの目がひとつ、のぞけるくらい。レモングラスが香って、ぼくは迷わないでいられる。かごに文鳥が二羽いて、まんまるい目でぼくを見ている。呼び鈴を鳴らすと男が迎え入れてくれる。はじめましてとぼくはいう。

お手紙をあずかってきたんです、その、あなたの、たいせつなひとから、それで、ぼく、ここの場所を知って。ぼくがどもりながら経緯を説明する。男は「座っていいよ」と言った。床に座ろうとするぼくへ「椅子へ、どうぞ?」。そのとおりにした。男はハーブティーをいれてくれた。ぼくの向かいに腰を下ろす。そしてようやくぼくを見てくれる。よくきてくれたね。話し出す。ぼくたちは会話をする。未来でもない、過去でもないこと。やがて時はすぎる。男は「もう時間だね」と笑う。その頃には、おたがい自然に笑えるようになっていたので。また会いに来てくれるかな。はい。こんなモーロクに付き合わせて悪いね。いいえ、とても楽しかったです。あと、この香り、好きなので。男は少しだけ寂しそうな顔を見せた。だけどそれは笑顔には変わりなかった。

その家のドアはいつも少しだけあいていた。こどもの目がひとつ、のぞけるくらい。レモングラスが香って、ぼくは迷わないでいられる。かごに文鳥が二羽いて、まんまるい目でぼくを見ている。呼び鈴を鳴らすと男が迎え入れてくれる。はじめましてとぼくはいう。

部屋に通されると、そこには文鳥のように白くて小さな双子がいた。ぼくはいう。はじめまして。女の子はいう。ちがう、あなた、昨日も会った。前も、その前も、そのまた前も。なぜ毎回はじめましてというの?あなたまるで、

そこへ男がやってきてハーブティーを差し出してくれる。悪いね、私の文鳥が、何かきみに言ったのだろう?いいえ、ぼくは首を横に振る。女の子たちは姿が見えなくて、かごの中の文鳥が背中の羽毛にそのくちばしを隠していた。いいえ、ちっとも。だって、そうだろ。おかしな小鳥たち。ぼくがここへ来たのは初めてなのに。それからは優しい時間が流れた。ぼくは男の話にときどき相槌を打った。話は淀みなく続いた。子守唄みたいに。そしてぼくは本当に眠ってしまった。

薄く目を開ける。明け方なのか夕方なのか判別できなかった。時計はないけれど、なんとなく夕暮れ時なんだろうと思った。あたたかかったから。これは、太陽がまだのぼっていない一日の気配ではない。ぼくは唐突に懐かしさに襲われる。蓋をしていたものが、一気にあふれたような懐かしさだ。部屋のドアを少し開いて、向こうから聞こえてくる声を聞き取ろうとする。

おじいさま、ねえ、あの子はなぜ毎回はじめましてというのかしら?あたし、不思議よ。
小鳥の声。
おじいさま、ねえ、そしておじいさまはなぜそのことを指摘なさらないの?あたし、とっても不思議。
これも、小鳥の声。
彼の時間がそのように流れているからだよ。あの子はね、一日終わるごとに命が終わるんだ。そしてつぎ目覚めたときにまた新しく生まれるんだよ。
と、男。
お病気なの。
これは、小鳥。
どちらが?
と、もう一羽の小鳥。
いいや、ちっとも。
男。
お病気なんかではないさ。
ぼくの、男。

ぼくはベッドに戻る。ガーゼにもぐって、今聞いた言葉を忘れるためにもう一度眠ろうと思う。

知っていたのに。

この家のドアがいつも少しだけあいているのも、そしてそれがこどもの目がひとつのぞるくらいの幅であることも、迷わないようレモングラスが香ってきて、かごには文鳥が二羽いて、まんまるい目でぼくを見るんだろう?呼び鈴を鳴らすと迎え入れてくれるのは、女ではなくて男だろう?

ぼくは、知って、いたのに。

男はどれだけ待ちわびただろう。これから先あと何度ぼくのはじめましてを聞かされるんだろうか。そうだ、メモ。メモしておけばいいんだ。この家であったこと、男の話の内容など。それをポケットに忍ばせておけば、見るたびに思い出せるだろう。男に、同じ話をさせずにすむのだろう。

ぼくはふと思い、ポケットに手を入れてみた。指先に折りたたまれた紙の感触があった。取り出してひろげてみる。

てっぺいさん
しゅみはりょこう
とくいなことガーデニング
学生時代もてた
笑うと目がほそくなる
エプロンがにあう
文鳥をかっている
なまえはキラとジジ
どちらも女の子
おしゃべり
話し相手
てっぺいさんは革靴がきらい
汚しちゃっても洗えないから
白いシャツがすき
汚れたことが、わかるから
おくさんは交通事故でなくなった
そのおなかにはおとこのこがいた

そこには、ぼくのものと思われる筆跡で、男に関するたくさんのことが書かれていた。

小さく折りたたんで、ベッドの下へ隠した。それを本当はポケットに入れておくべきなんだろうけど。だけど、ぼくは、好きだったので。男に会うために長い坂をのぼってくるのも。たまにほどけるスニーカーの紐を結び直すことだって。用心しながら電柱を避けたり、塀の上の猫に声をかけて一瞥されるのも。目的の家をみつけて呼び鈴を鳴らす。ドアはいつも少しだけ開いている。ぼくが訪れる頃を見計らって用意された飲み物のにおい。あれは、おかあさんのにおい。男がドアを開ける。はじめましてとぼくはいう。

これ以上の幸福が、あるだろうか。ぼくは知らない。もう一度眠る。また生まれるために。もう少し待っていてね。必ず会いに行くから。たったひとりのあなたに。

2+

【雑記】ちゃまろいど

雑記ふたつめ。

合わないだけかもしれない。またすごく抽象的な話し方になるんだけど(意図的)、いまそれをやったら他人から「なあに、それえ?」みたいな目で見られたり、なんなら「なあに、それえ?」って口に出して言われたとしても、やめる必要はまったくないってことですね。なぜなら新しいものはつねに最初は「なあに、それえ?」だから。そんな対応されたら「おっ」と思っていいんだよ。しゅん、ってならずに。「いま新しいことしてる」くらいに感じればいいんだと思う。だいたいは井の中の蛙でもうすでに誰かがやってたりするんだけど。それでも。

時代や環境や人間関係が変わるだけで世界がガラッと変わるなんてあたりまえだし珍しくもない。ひとつの場所で「うん無理!」ってなったら移動しちゃいなよ。だって、そういうのってぜんぶガチャですから。ガチャってガチャガチャのことね。ガチャポン?地域によって言い方違うのかな。わからんけども。

だってさわたし今でこそペーパードライバー卒業してて運転たのしい、くらいになってるんだけど、それでもいまだにおかしいと思うよ。

人間なんかがなんであんなあぶないもの運転して許されるわけ?

そりゃ死亡事故も起きますよって話でしょう。どれだけ自動車がすぐれていても、それを操縦するのが、感情があって、その日の気分でムラがあって、イライラすればせかせかする、くよくよしてれば視野狭窄になるっていう操縦主として未熟な、あまりに未熟な生き物が、人を死に至らしめる機械を公道で操作する?

わかりませんね。

◯年後…

「おばあちゃま、むかしはにんげんがクルマを運転してたって話ほんとう?」
「ああ。そうだよ」
「やだー、こわーい、なんでそんな時代があったの?自動運転技術があるのに」
「昔はね、自動運転技術なんてなかったんだよ。今と違って人間が運転していたから追突事故や人身事故もあったし、ひどい時はひともなくなったんだよ」
「きゃー!」
「しかも、自動運転技術が怖いとさえ言われていたんだ」
「なぜなの?ねえ、おばあちゃま。その時代の人たちは考え方が傲慢だったの?人間のほうが機械より有能であると認識されていらっしゃったの?」
「そういうことになるかねえ」
「人間なんて、暗くなったら目が見えなくなるくせに?自動運転技術ならビジュアルに頼らず、視界の悪い道路でもなんら問題はないというのに?」
「そうだねえ」
「どうかしてるわ、おばあちゃま」
「そうだねえ」
「ねえ、おばあちゃま」
「そうだねえ」
「おばあちゃまったら」
「そ、う、だね…」
「ママー。おばあちゃまロイドが壊れちゃったみたい。新しいの買ってー」

てな未来もありでしょう。
設定とかオチが意味不明だけど。

私達が、ほんの数十年前の日本をふりかえって「奇妙だ」「間違っている」と感じる出来事に対するように、未来に生きる人々は私達を「奇妙だ」「間違っている」「理解できない」と評するだろう。

どんなだろうなあ、未来は…。

いや、おめでたいことに、きみたちだって騙されているのかもしれないぞ。

実はわたしは今年100歳を迎える老人で、数年後に発売スタートされるおばあちゃまロイドの試作品のひとつ…なの…かもしれ…なひ。

プツッ

1+

【雑記】すきこそものの

好きなことについてたまにぐるぐる考える。まったく同じ環境で、境遇で、育ったふたりがいたとする。だけど好きになるものも嫌いになるものもそれぞれで、それってなんか本当にすごいと思う。優しくされてもその人を好きになるひとと「下心あるんだろ」って疑念を強めるひととがある。逆に、意地悪なことをされてもその人を遠ざけるひとと「なんでそうなの?」って歩み寄るひとがいる。捨てる神あれば拾う神ありではないけれど、この世界に誰からも無関心のひと・もの・ことって存在するのかな?そんなものがあったら私たちは見つけられるんだろうか?もし見つけられたとしたら自慢できるような気がする。誰に?誰かに。

そして、好きなことなら人間何があってもやり通すものだから、行動にうつせないんだったらそれは好きとは言わないんだ、という言葉に苦しめられるひとも多いのではないだろうか。好きなことは消えていかないし無視できないものだから大丈夫(あるいは問題ばかり)とは私も思うが、それって極論すぎやしないかとも思う。いいわけとは違うんだけど、なかなか踏み出せないことってあるんじゃないだろうか。こんな言葉をきいた。

好きでも嫌いでもないことにはそもそも悩まない。

そうだな。離れようと思って離れられなかったり、やめようと思ってやめられなかったりすること。だけ、では、なく。離れないと思っていたのに離れてしまって、やめないと思っていたのにやめてしまったりする、しかもそれをずるずる引きずっていつまでも覚えている。続けているひとが羨ましい。続けられなかった自分がうらめしい。その段階でもまだあなたはそれを「好き」なのではないかな。きっとそうだよ。嫌いであったらべつの好きなことにかまけていたり、そもそも思い出したりしないはずだし、うじうじ悩んでしまうのも妬んでしまうのも、まだ好きだからだよ。

と、思うなあ。

なのでさ。まずは認めたらいいと思う。悩んでいる時に何が苦しいのって、無理に嫌いになろうとしているからではないかな。好きだって認めればいいんだと思う。

で、どうする?ってところからスタートすればいいんだと思う。

いやいや「で、どうする?」って何が?ってなると思うんだけど、だから、向き合い方っていうのかな。従来のやり方じゃ自分に合わなかったんだよ。だから、それ以外のやり方で、あなたはあなたの中にある好きと向き合う必要がまだあるんだと思うよ。

具体的にどうしろって提示できないんだけど、そもそもこの話がとっても抽象的なところを、いい加減な感じでさまよっているからね。

とにかく、自分の本心を認めないのはいけないよ。気づかないのは仕方ないのだとしても、分かっていて認めないのは罪だよ。たぶんそれは何かに役立つことがあるとして神様からもらったものだから、自分自身で抹消を試みるのは良くないんだとほんとうに思うよ。なぜってそれは必ずしもあなた「だけ」に役立つとは限らないからだ。あなたに与えられた才能だとか特徴だとか何かに対する「好き」という気持ちは、ただしく育くめばやがて何かに、誰かに、つながったりしたものだよ。だからこそあなたはそれを好きだったはずだし、捨てきれなかったんだよ。

もうね、あれだよ。そうでないと説明がつかない領域だと思うんだよ。科学とか心理がどうとかいうひとが書けばまた別の見方になるんだろうってことは分かるよ。解釈なんだよ。だから、自分がいつまでも嫌いでいるもののこと、案外あなたは好きなのかもしれない。そう仮定するとしっくりくることって想像以上に多いんでない?そして、そのほうが良いでしょ。考え方としては。それだけ。ほんとそれだけ。

1,497文字。原稿用紙3.7枚分。

2+

no.421

きみの目からぼくの涙がこぼれたらいいのに。ぼくの傷からきみの血が流れたらいいのに。だけどどこまでもふたりでいたい。朝と夜のように。密度の高い別離のまま羨まれたい。悲劇もまるく飲み込んで、あまいな、ってたまに笑い合いたい。流れていく時間の中できみが変わって、少しずつこの世界にいられなくなっても。一度だけかすめた指先のことを、何度でも奇跡だと呼ぶんだ。乾いた土地で、濡れたように光る石を見つけた。それが何という名前だとしても、鼓動のきこえるポケットで、ぼくがいつまでも離さないね。

5+

no.420

あなたなぜ泣くんだろう。そんなもののために。ぼくは観察者のように冷静だよ。どんな感情もわくことはない。風を受けて歩くと前に進んでいること強く意識できる。だから抵抗はあったほうがいい。無いよりはいい。あなたが生まれた日あなたが泣いたことを喜んだたくさんの笑顔、まだ覚えているのかな。それでたまに泣いちゃうのかな。月の光でかためて口に入れてもちっとも味がわからない。できるだけ透明にして日に透かしても、ちっとも。何も感じなくなったぼくはなぜ人から見るとさみしく映るんだろう。そこには少しの誤解とすれ違いがあって、その二つが存在することで徹底的に別の生き物なんだね。どう祈ればいいんだろう。どう願えばいいんだろう。きみが泣きますように。きみが笑いますように。口にはしないけど。話しかけることはできないけど。黄色い花が咲く広場で、いくら待っても再会しないけど。忘れたいと考えますように。思い出したいと振り返りますように。その間だけ、きみは未来を忘れる。そのままきみを後ろへ押し戻そうとする微かな風に、いいえと前を向きますように。

3+

no.419

ようやく訪れた季節の終わり。つぎのあたらしいを期待しないですむ朝、ぼくは少し呆けていた。時のない花は盛んに小鳥を誘惑し太陽は正しく傾いている。肉片になったかわいいものがぼくの周囲に虫をおびき寄せる。美しいひとは言った。逃げるのよ、汚れる前に、それだけ、それだけのことよ。へえ、だからそれっきりなんだ。とは、言わない。ぼくにある、ひとをおもいやるこころ、のせいで。言わせない。やや乱暴にちぎった手紙が光とも雪ともわからなくなる。曖昧は暴力であり優しさだった。ぼくたちから命名を奪うから。正しさを知るほどに一つずつ消えていった。消えていくもののことはいちいち覚えていられないから伝えられないんだけど。消えていった、その感覚だけちゃんと残る。皮肉なことだ。ぼくはそれを嫌っていたのかも知れないのだから。黒い瞳に何をうつしたって自由。いいわけを咎められない方程式。三角形のようにどこまでも重なって伸びて行く。それは三角形のように。透明な朝だよ、目覚めないきみがどれだけ血を流したとしても。避けられない夜を迎え入れるための、無邪気に透明な朝だよ。

3+

no.418

ぜんぶどこへも行くことはない
あくどい夢もつたない空想も
あなたにすべて染み渡る
だけどだんだん透明になる

生きていくことは彩色だと
もしかするとそう
わざと思っていたかもしれない
ほんとうは正反対でも

したいことやりたいこと
しなくていいことやらなくていいこと
簡単に忘れてしまうって
それは絶えず変わってゆくからだ

細胞のように
月の満ち欠けや引いて寄せる波
眠たいのに寝られないで
(まるで同じように見えたんでしょ?)

刻一刻と切り取られる魂
すこしずつ生まれ変わる
いつかぜんぶいなくなる
(そのことがまだ不満?)

涙を誰にも売らないこと
伝えたかった
だからこぼれてくるようにした
分かり合えないことを分かってほしかった

それだけでは冷たいので
内側からあふれるようにした
他の誰かがたやすく気づくよう
誘惑の多い仕掛けをほどこした

不思議なことじゃない
なぜって意図的に仕組んだんだ
あなたにとっては遠いある日あなたを
この世界に放り込んだ気まぐれな誰かが

4+