No.507

ぼくにある幼さが
漬け込めとそそのかす
あなたの遠い人
ぼくによく似ているそうだ

神さまって適当で
意に介さないことが多いんだ
そう考えておくと平気だろう
今だって正気でいられるだろう

ただ移動したかったんだ
悪い夢みたいな現実から
だけどあなたは連れ出したんだ
さも善行を施すように

目を覚まして
所詮ひとりの人間でしかない
あなたはぼくを救済したつもり
違う、ぼくが自惚れさせたんだ

どこかへ行きたかった
そんな目で見られたくなかった
自由になるよりもっと
確実に終わりたかった

今ならなんとでも言える
予定が狂って空になった棺
真っ白い花を詰めた帰り道
今日もぼくたちはすれ違う

1+

No.506

何年経っても歳を取らない
ようやく認める気になったよ
あなたは人間ではなかった
どうりで神聖な気持ちになったわけだ

ねえ、見ることができましたか?
聴くことや愛すること、
忘れて思い出すほどに?
あなたにとっては一駅分の退屈凌ぎでも

許してね
ぼくは何も残さなかった
だけど世界は終わらなかったよ
ぼくが少しだけ変えといたんだ

ひとりひとりが変えていたんだ
毎分毎秒、到底確認できないくらい

許したよ、
ちゃんと見てた、
気づいてたろう、
あこがれてたくせに。

夕暮れとともに消えてく何か
頬が橙を照り返している
もしさいごに願いが叶うのならば
あなたのかなしい歌が聴きたい

2+

No.505

きみの死にたいが
たすけてにきこえた夜
そんな、夜、真っ暗を走る
誰かの影を踏みつけて

いちばんだよ
いちばん大切なものを
いちばん大切に扱うことが
いちばんすこやかなことだよ

とんでもない冗談だ、
そう思った
これがぼくのものになるわけない、
さいしょ、そう思った

電車がぼくを追い越して
ぼくを三日月は追い越して
三日月が舟に姿を変えて
きみを遠く連れ出そうとする

待って
待つもんか。
行かないで
行く宛てなんかない。

息切れが金属音にまぎれる
もっと手荒くして欲しいのに
誰にも話せない秘密の記憶が
完膚なきまでに踏みにじられて

季節を無視して花が咲く
死臭を隠すように
指先から透き通ってく
二度と来ない午前二時

もうすぐ郵便受けの底が鳴る
同意のないタイムリミット
新しく生まれたくない
伝えられなかったきみを忘れてまで

3+

No.504

今度こそ見つけてもらえる
そう考えてる他力本願
期待されるほど透明じゃない
隠すことは得意だけれど

あなたはぼくを密告する
でも言わない
だけど叱らない
残り少ないチョコレートが甘い

傷つけてあげるんだ
そっちのほうが楽だから
傷つけることは苦しいから
汚点になってほしくない

青い卵を両手にやさしく包み込む
ナゾナゾ、ぼくの眼前に差し出す
(うまれてくるもの、なあんだ?)
目線をあげるとあの日の笑顔だ

傷つけた後悔も
傷つけられた痛みも
昇華されず償われず報われもしない
それでもいいさ、それでもいいんだ。

あててあげよう
あててあげたらあなた消える
そうだとしても間違えないであげよう
間違えることにはそろそろ飽きた

1+

【雑記】ロマンと希望

誰にでもあると思うのね。「この人なんでこうしないんだろう?」こうしたら、もっとお金になるのに。もっと人気が出るのに。もっと有名になれるかもしれないのに。こうしたら、こうしたら、こうしたら。

ただたんにそうする方法を知らんだけってこともあるかもしらんが、そうでない場合、その人にはそれしかないんだよね、きっと。指示語多すぎかと。

人って自分で自分の好きになるもの決めたり変更したりできないのね。嫌いになるものは、どうだろ、うん、同じか。人の相性、好き嫌いって、当事者同士には決められんのよ。特技とか、性癖とか、そういうのも。そこになんというかロマンがありますよな!

・なんでこいつのこと好きになっちゃったんだ
・なんであんなやつ嫌いになれないんだ
・おまえなんかよりもっといいやつ見つけて幸せになってやる(でも無理)

みたいな、そういうロマンがね。

たくさんの人が「自分だけは自分の思い通りになる」みたいに思ってるかもしらんが大きな嘘もしくは間違いで、逆なんですな。つまり、自分ほど自分の思い通りにならん生き物はおらんっちゅうことですよ。だってそうでしょ?自分には自分の好きなものと嫌いなものが、感覚として、体感として、分かるんだから。意のままにしようとしてもどうにもならないことがあって、にっちもさっちもいかなくなるでしょ。その点、他人のほうがもっと気楽に操作できるでしょう。他人の意思を無視してもおまえさんの心はちっとも痛まないんだから。な?

でもそういう境界を乗り越えるのもまた良しよなー。

なんで、ぼくは、きみじゃないのに、涙がこぼれるんだろう……

みたいなそういうの、人類の希望だなって思うこともあるんですよ。

結論:他人とかかわるのめんどい。

2+

【雑記】プラスにマイナスほどの力はない

どんなに前向きな言葉で語ってても人を突き動かしてるのはたぶん復讐心とか見返してやりたいって気持ち。それが自分を納得させるために、前向きな言葉にかわったんだろうね。だけど私はマイナスの力ってプラスのそれよりでかいと思ってて、まず、マイナスってプラスになることがあるじゃん?可逆性ないと思うんですよね。プラスがマイナスになることって。まずその点でもうマイナスはプラスより強しでしょ?そして、たぶん、マイナスをどうにかしたいという気持ちのほうが切実で、行動にうつしやすい。

私ふと今までの自分振り返ったら節目節目でマイナスエネルギーがとても働いているのね。そんなに、うががー!って感情になることはないんだけど、「ふう〜ん?」と思った時ってたいてい心の中でジト目になってて、後から「もしかして……いらっとしていたのか?」と他人事のように思う。マイナスはモチベーションの動力源なのでそんな否定することないよと思う。ただそれで人にあたったり、周囲に迷惑かけるのも違うと思う。不機嫌は罪ってタイトルの本がありますが本当にそれで、自分の機嫌は自分でとらないといけない。人にとってもらおうとしない!って、みやぞんが言ってた。みやぞんすごい。最初あんまりおもしろくないなーと思ってたけどすごい人だった。

なので、周囲にあたりたい気持ちとか、他人のせいにしたいずるい気持ちとか、全部ひっくるめて動力源にしたいと思う。見返したいと思ったらそれを動力源にしたいと思う。何かを成し遂げてる人って多くが「人に反対されたからやる」という発想らしいね。天の邪鬼なんでなくて、人が反対するってことは誰もやっていない、やろうとも考えない分野でしょ。ブルーオーシャンを嗅ぎつけるのだろうね。

なので復讐の火は、しずかに自分の心の中で燃やしておくといい。ある日ふっと果たされるんだけど、そのことを自慢げに言うこともしなくていい。訊かれたら答えて良いのかもわからんが。でもたいてい言った本人は覚えてなくて「え?すごいね!」って手放しで感激してくれたりもするんで肩透かし半端ないって。

マイナスのこと、否定しなくていい。自分の中にうまれたマイナスな感情、ネガティブな考え、生まれてきたからには何かわけがあるはずだ。そこにあなたが絶対ゆずれないと思ってる何かがあるはずだ。ポジティブやプラスに力はあっても魅力はない。マイナス面を見つめるんだ。「こんな自分いやだ」って自分で思うところに、自分にしかないものがある。絶対だ。

結論:あなたはあなたのままで生きていくべき。

1+

No.503

許されなかった恋のひとでなし
ぼくようやくわかった気がする
あなた禁じられることに酔ってた
その目はぼくを見ていなかった

供給源を断てない草の根
どうしてあなたを捨てられる
心中には遠い、夢見には妨げられる
走るうちに知らない風景

なるほどこうして時はすぎる
見慣れないあなた、年老いたせいだ
ぼくと再会し驚愕で目を開く
姿が百年前と変わらないので

そのころには虚言癖
誰もあなたを信用しない
悪気はないけど信用はしない
なぜって毎日支離滅裂で

あの子は湖底に沈んでいるんだ
おれの身代わりにそうなったんだ
積もる泥は冷たく重たいに違いない
早くあの子をすくっておくれ

でたらめを言うおじいさん
すっかり呆けてしまってね
昔はそりゃあ溌剌としていた
女の子の取り巻きも多くてね

気づかなかったろう
あなたぼくを見ていなかったから
傷口がすぐにふさがるんだ
これがぼくのささやかな復讐

教訓、恋するすべての人へ
愛をささやくひとから目をそらしてはいけない
その傷口はあまり早く完治する
あなたが他の生物を見ているあいだに

1+

No.502

なぜぼくを起こしたの
せっかく死んでいたのに

とでも言いたげな寝ぼけ眼
もう一度埋めてしまおうかと思う

それは白くつめたくやわらかで
毎晩すこしずつかじりたくなる手

泣かないでフロイライン、
私としたことを覚えているの?

いいえちがうのマドモアゼル、
あなたを何も思い出せないの。

呼び名だって記憶どおりかわからないの、
間違ったら消えてしまうんじゃないか?

だから呼べないのフロイライン、
ぼくをゆるしてマドモアゼル。

1+

No.501

誰の思い出にも残りたくなくて
なってはいけない人を好きになる
仕掛けはいつも小手先で
張り巡らせた罠で動けないのは僕だった

謙遜しなければ水中を泳ぐみたいに
縦横無尽に生きられたのでは
呼吸ひとつ満足にできない朝
背中から根が生えて起き上がれない

次に耳が聴こえなくなった
正直言うと好都合だと思った
もうイヤフォンで塞がなくてもいい
朝も夜もやかまし過ぎたんだ

次の日からひとつずつ消えてった
眼球だけが潤いを保ったまま
部屋の真ん中にぽつねんと残った
そして最後はハニーの餌食になった

平等とは不平等なもの
公平とは不公平なもの
自由とは束縛の異名で
無限とはこの部屋にあるもの

夢を見ていて
忘れないうちにと書き留める
ようやく書き上げた時には
好きな人の名前が思い出せない

みんなひとりでに生きて死ぬんだ
今はひとつひとつで夕焼けを見ている
優しくしたくなるような背中で
つぶしてしまいたくなるような魂で

1+

No.500

手のひらに残る七色の粒子
出会ったきみはひとでなし
夢が青春をくいものにする
確かめているうちに破れる

笑って別れるなんてできない
きみはいつでも無防備だから
それは自信からくる余裕なの
ぼくは少しずつ泳ぎつかれた

幸せであってほしい
全部でそう思えない
ぼくも幸せになってみたい
ふたつが相容れないせいだ

優しくなりたかった
いつでも帰ってこれるよう
迷子にも見つけ出せるよう
でも道は覚えるものだった

大人になってふと悲しいのは
いつのまにか歩けていたこと
平気なほうを選んでいたこと
争ったり怪我しないほうを

たまにはそっぽを向いていい
未来はそれでも壊れない
生まれたばかりの入道雲が
冒険をやめるなとぼくに言う

行き詰まるからだ
安全なほうを選ぶようになれば
留まるほうがあやういから
傷つけまいと傲慢がはびこる

ソーダ水にふたりが溶ける
それは並ぶよりも尊いこと
誰が飲み干しても文句言わない
辿り着いた場所が帰りたい場所

1+