No.505

きみの死にたいが
たすけてにきこえた夜
そんな、夜、真っ暗を走る
誰かの影を踏みつけて

いちばんだよ
いちばん大切なものを
いちばん大切に扱うことが
いちばんすこやかなことだよ

とんでもない冗談だ、
そう思った
これがぼくのものになるわけない、
さいしょ、そう思った

電車がぼくを追い越して
ぼくを三日月は追い越して
三日月が舟に姿を変えて
きみを遠く連れ出そうとする

待って
待つもんか。
行かないで
行く宛てなんかない。

息切れが金属音にまぎれる
もっと手荒くして欲しいのに
誰にも話せない秘密の記憶が
完膚なきまでに踏みにじられて

季節を無視して花が咲く
死臭を隠すように
指先から透き通ってく
二度と来ない午前二時

もうすぐ郵便受けの底が鳴る
同意のないタイムリミット
新しく生まれたくない
伝えられなかったきみを忘れてまで