2018年 2月 の投稿一覧

no.409

それは救いだ
あなたを揺るがすものがあったなら
疑うことでは強くなれない
少し遠回りになるだけ

錯覚と疑心暗鬼、
神さまはそんなことを
言いたかったのじゃない
ずっとわかっていたはず

茜が何かを知らない人に
夕焼けをうまく伝えられないように
あなたを知らない人に
ぼくを語るのは難しいだろう

信じていた
裏切られたとしても
それはぼくの問題
あなたは本当に優しいだけ

4+

no.408

秘密を明かさなければいつまでも透明でいられる。だけどそれは濁る幸福からの意図的な逃避だよ。わかってる。形を持ちたいと、きみは、そう考えることはない?わかってる、わかってるんだ。あなたの言いたいことは。何故ってあなたは答えを知っているんでしょう。綺麗でない水も夜になれば外の光を反射してネオンのように輝くくらいできる。知らないわけがない。選ばなかった、だけのこと。そういう言い訳に騙されるくらいの余裕は欲しかったな。あなたは少し僕を買いかぶっているんだと思う。楽しいと笑わないのも、悲しいと訴えないのも、強さのせいだけじゃないよ。自由と引き換えに愛があるのならもっと話は簡単だったね。手を伸ばすところを見られたくない。あなたに気づいて欲しくない。そうすれば僕はたちまち臆病になってあなたを不安にさせてしまうだろう。輝かないでと願われたい。誰からも嫌われていてと思われたい。ねじれているんだとしてもこれが僕の初恋。夢の中でなら何度でも切り裂くのに。守りたいと思わなければ世界の不確定性への恐怖なんか取るに足らないのに。交わすためだけのやわらかな言葉を交わしあって生きるのに。

4+

no.407

曖昧にするのなんて簡単だ
後先を考えなければ良い
月と砂糖はすぐに溶ける
記憶も変わりなかった
過ぎていく季節を惜しまないのは
それがまた来ることを知っているから
同じページを行ったり来たり
新しいぼくの愛想は尽きない
変わりたいのは臆病だから
そのままでいることは危険だ
二人はそれほど強くはない
正しくいられないことを咎められたら
真っ赤なキャンディをあげる
わたされなかった林檎の代わりに
夢に出て来てあげる
もう無理だと言うんなら
綺麗じゃなくていい
潔白じゃなくていい
笑えなくても泣けなくてもいい
まずは許されること
今のあなたに大切なこと
まだ春も来ない川面に流れないで

2+

no.406

すぐそばでぼくが息を吹き返す
また蘇生してぞっとした
時刻は?
今度は夜?それとも真夜中?
安心の暗闇はまだここにある
どうしてぼくには与えられないんだろう
良いことも悪いこともたくさん試した
意味を考えたり考えなかったり
人はたくさん首を吊って
みんな上手にいなくなるのに
増えていくかすり傷
死ぬ以外はぜんぶ擦過傷だよ
悪くないと思っていたな
そういう投げやりなところ
言った人のこともう覚えていないんだけど
目覚めるたびに美しいなんて嘘だ
遠い国のあの子より恵まれてるなんて
まやかしだ、どれも、のろいだ
だけど、やさしさだと、思う終わりもある
他に差し出せるものがなくて
あなたは嘘ばかり差し出すんだろう
ぼくに差し出せる本当が見当たらなくて
きっと探してくれた、そして発見に至らなかった
いつの時代も振り返って自分を見つけられる
愛しているからだよ
ぼくよりタフで尊いものなんかない
そうとでも思わなきゃ誰がぼくを捕まえられる?
失敗したオムレツのお皿が欲しかったな
ぼくは素直に言わないので
今日も綺麗なふくらみが差し出される
ぼくにとって、
繰り返されることは幸福じゃないのかな
きみにとって、
いつまでも続くことが思い出になるのかな
反対を言いたいんだ
嘘を手に入れて大切な人を騙したいんだ

それはこういう優しさだった
これはそういう絶望だった。

4+

no.405

理想も夢もどうだっていい。今が未来になるから。ぼくの言葉は汎用化されきみは酸素のように取り入れるだろう。そうしていることにも気づかずに。本当に好きなものを好きだと意識できるひとは多くない。好きだ好きだと繰り返すのは、思い込むための儀式だった。ほんとうの気持ちを消そうとする虚しくて悲惨な努力だった。それは幼年者の殺戮だった。もしも困っている人がいたら手を差し伸べるんだろう。自分をそこに投影して。誰かに救いを求める勇気をたたえて。ほんのすこし。ほんの少しの違いだけなんだ。刻一刻と世界から消えていく、きみをきみは忘れないで。抱えきれないその時は、要らないぼくだけを忘れて。その時にはもう、きっと染み渡っているから。きみが眠りにつく時。眼を覚ます時。卵を割る時。歯を磨く時。踏み出す一歩。花畑に残る足跡。同じ道を辿るためじゃない。生きた証が、道なき道を進んだ気配を知らしめるため。

5+

no.404

言い切ることをしないで答え合わせから逃げるの。一瞬一瞬で生まれて死ぬんだって、分からないのも無理はないよね。かわいいと思えないこともないんだ。僕は少しずつ無機質になるけど君はそれに合わせなくていい。また百年後に再会できれば。何があっても笑っていようよ。無理した時にいちばん難しい表情だからさ。多くの人は誤解してるんだけど。特に君にとってはそうだよ。つくりものを嫌う人だったから。愛は、ずるいね。それを知らない人を迷わず除け者にするんだ。優しくは、ないね。信じられない人を冷たくするんだ。絶対がないって、例外もありうるって、どうしてそこだけは見逃しちゃったかな。素っ気なくしている暇はないよ。君の命はそれほど長くはない。少なくとも僕にとっては。こわがらずに傷つけていいよ。それだって僕は忘れることができちゃうんだ。降ってくる雪のように有限であり無限。紙でつくった街の夜だけが二人を認めていた。これは、そんな夜だった。朝が来ない終わりだってあるんだ。それを、覚えておいて。いつか君のことを思い出せなくなる僕のことを、君は忘れないでいて。

4+

no.403

ぼくには見えるよ。きみが生きていきたいみたいに。太陽が沈むときに世界が切り替わる。その一瞬だけでも。名前なんて関係ない。どんなふうに呼んだってきっと変わらなかった。水滴がいくつもこぼれて、道具は要らなかったと後悔をした。血の中から誕生と破壊を繰り返す。誰もまだ正しくないよね。それなのに、そう見える。ぼくたちみんなわざと視点をずらしているのかもね。つまり、正解が分かっているんだ。やがて別のものにすり替わってしまう特性も。この傘は一人分だけど、ふたりで濡れることだったらできる。降り注ぐものがぼくたちの知らない色をしていても。ぼくには見えるよ。きみは化け物とも天才とも違う、ただぼくの好きなひとだ。

4+

no.402

この世界でもっとたくさんの明日を迎えたいって初めて思った。きっと運命なんだよ。深夜番組で涙を流すことも、お気に入りが生産中止になったり、みんなに笑われた恥ずかしい思い出、ナイフを買うために何度も往復した狭いアパートの長い廊下、うまく笑えないことへの罪悪感、深海なんて知らないけどそれとたぶんよく似た、誘蛾灯のささやき、もっと生きやすいようにモザイクにしてあげるよ、その悪意さえも甘くて美味しかった、チョコレートよりずっとそうだった。世界は言うだろう。君に、僕に、何者かになれと。ただちに染まってしまわなくても大丈夫。何のためにならなくても、存在して問題がない。質問は何かの答えであるということ。僕は次の朝も目覚めるよ。誓ってもいい。必ず目覚めるさ。君は、どう?(いや、ちがう、いいたかったのはそれじゃない)。君も、どう?何度でも呼びかけるよ。

3+

no.401

なかったことに戻すには時間が深すぎた。百年後もきみを救うために、いま誰を癒せるだろう。真夜中を歩く。僕の足跡が誰かの通り道になれますように。ここにはない、夏の川辺、写真の散財した部屋、転がった命、そのときに愛していたもの、みんなまるく飲み込んで、そのことを誰にも言わないで、沈黙みたいに、指でかたちづくる輪っかみたいに、きみと僕とはここにいよう、迷ったときに戻るためじゃなく、迷ったことがわかるためだけに。それだけのために。できるだけ正しくない方法で始めよう。光は、初恋にだけじゃなく見つかりたくない相手にもきみの居場所を教えてしまうだろう。捨てて良いものはきみにとって優しくて、だけど実際は甘やかさなかったものばかり。この光はどんな闇にも追いつけない。だけど真夜中にしか生まれない。この矛盾。言い換えれば奇跡。傷つけるもののために祈ろう、僕たちは。

3+

【雑記】今朝の出題

【問題文】
しずかな雨の夜、ヴァンプ邸の静寂を破ったのは、今年名門シュガービター学園に入学が決まったばかりの長男チェルシーの元気な足音だった。
「パパ!これ!拾ったの!ついさっき!そこでね!ほんとうにだよ!昨日から部屋で住まわせてたってわけじゃないんだ、だから、ねえ、飼ってもいけないってことはないでしょう?つまり、いいんだよってことをパパは僕に対して言いたいはずなんだ!」
「落ち着いて。正しい文法で話しなさい」
ヴァンプ氏は息子の悪癖には慣れていた。
「今ここで私がはっきりと反対を示したところでお前は空いている屋根裏部屋を使う。そうだろう?」
そして、ヴァンプ氏は慣れていた。
愛息チェルシーが一旦決意したら簡単には引き下がらないことにも。
そして自分がそれに対して何ら反対の意を唱えないだろうことも。
「そして、チェルシー。今晩の拾い物は一体何だい?」
ヴァンプ氏はようやく視線をそれへと向けた。
そしてすぐに眉をひそめる。
この反応は、寛容なヴァンプ氏には珍しいことだ。
少なくとも、チェルシーの行いに対してここ一週間は見られなかった仕草であることは間違いない。
「チェルシー。それは、人間じゃないか…しかも、生身の」
「そうだよ、パパ。僕が見つけたの。名前も付けたんだ。ザックに見せて来て良いよね?おいで、ヒュード!」
息子の後をついて行く人間の身長は自分とそう変わらない。
まあ、何かあってもチェルシーならば制御できるだろう。
ヴァンプ氏はそう思いなおし、視線をふたたび手元の盆栽へと落としたのだった。

【問い】
この後のストーリーの展開として以下の選択肢から妥当なものを選択せよ(複数回答可)

A 息子の生命を危険にさらす人間ヒュードと対峙するヴァンプ氏のバトルが楽しいアクション展開

B 自分も父ヴァンプ氏と同じくAIだと信じていたが生身の人間である母との間に生まれたハーフな存在だったと知り自分の生い立ちに悩みを抱えるチェルシー少年、そして彼に想いを寄せる上位AI少女とのふれあいを描いた青春ラブコメ展開

C 息子の教育係ザックのヴァンプ氏への恋心がヒュードの粋な計らいによって成就し「人間さいこう!」ってなるAIの未来が描かれたSF展開

D 盆栽が趣味であるAI界のドン、ヴァンプ氏が類稀なる素晴らしい表現力で盆栽の歴史に新たな1ページを刻み込むまでのヒューマン風ドラマ的展開プラス、ザックの報われない恋心が楽しくも切ない清純ラブストーリー

もっと書きたいけどバス降りるので、おわりっ。

【解答欄】

3+