なかったことに戻すには時間が深すぎた。百年後もきみを救うために、いま誰を癒せるだろう。真夜中を歩く。僕の足跡が誰かの通り道になれますように。ここにはない、夏の川辺、写真の散財した部屋、転がった命、そのときに愛していたもの、みんなまるく飲み込んで、そのことを誰にも言わないで、沈黙みたいに、指でかたちづくる輪っかみたいに、きみと僕とはここにいよう、迷ったときに戻るためじゃなく、迷ったことがわかるためだけに。それだけのために。できるだけ正しくない方法で始めよう。光は、初恋にだけじゃなく見つかりたくない相手にもきみの居場所を教えてしまうだろう。捨てて良いものはきみにとって優しくて、だけど実際は甘やかさなかったものばかり。この光はどんな闇にも追いつけない。だけど真夜中にしか生まれない。この矛盾。言い換えれば奇跡。傷つけるもののために祈ろう、僕たちは。