【小説】神様失格

まだわからないな
せっかく涙に色をつけたのに
まだわかってあげられないな
ぼくは神様失格だ

山をなぞる夕陽の輪郭
ひと、それ、すきだろう?
ぼくはそれを見ている人がすき
わるくないなと思うんだ

人も、そんなに、悪くないなって
天使たちはやめとけって言う
口の悪い彼らは嘘はつかない
だけどぼくは試してみたいな

だっておかしいじゃないか
知らないもののために為すのは
いいとかわるいとか言えないじゃないか
なんにもわからないままでは

そう思ったんで、ぼく、涙に色をつけた
恥ずかしくないように、ぼくにだけわかるように
かなしいの?つらいの?うれしいの?
なつかしいの?おまえ、いま、しあわせ?

色がわかったところで理由はわからない
どうして?ねえ、どうして?
質問ばかりのぼくはある日地上に放られる
天使になりたての悪魔から

おまえがいたんだよ
ぼくの降った街に
すみっこに
ぼろぼろで

こんな話信じる?
こんな話信じたの?
おまえ、初めて
それって、神様みたいだ、ほんとすごいよ。

2+

No.525

どこも汚れていないよ
だけど錯覚が消せないんなら
ピカピカにしてあげる
きみが涙を流したら

嘘はごめんだよ
ぼくにはきみの自傷に見える
ピカピカにしてあげる
自分を騙すことをやめたら

残酷なシーンから目を背ける
演技だって分かっていても
ピカピカにしてあげる
それでも笑えるって教えたら

小さいものも可愛いものも
ずるいやつと変わらないよ
ピカピカにしてあげる
取り繕わずに会ってくれたなら

2+

【雑記】どうせ誰も知らない。

周囲からすっごい徳のある人・温厚に思われてる人が実は顔に出さない(出ない)だけで、ひそかに愛するひとが悲しんでるの目の当たりにして虫も殺さないような顔+穏やかな声で「ぶっころしてこようか」って優しくささやくの只今の性癖。そればかりでなく敬語でよくない?「亡き者にしてまいりましょうか」って。は〜。周囲には関係を隠しながら、むしろ「あの2人は絶対ないわー」みたいな距離感のある2人が実は裏でつながってるとか良くない?「ちょ、やめろよ……ばれたらどうすうんだよ」みたいな時に「どうせ誰も知らない」みたいに、いつもは心配性なやつがさー、そんっな時だけ強気な大胆くんになってまったく年上おちょくるのもたいがいにしろよ、あっバカやめ……的な。

きれいな日本語にしたいんだけど暑さで体力続かずまいってる。作文って体力ですよ。何をするにも体が資本ですよ。て言いながら運動しなーい。外に出たくなーい。やりたいことしかしなーい。そして朽ち果てるー。

暑いと思い出すのが長野まゆみの「サマー・キャンプ」って小説だけど、温暖化っぽいの、夏ならではの腐りゆく感じとか漂ってたなあって思うけど気の所為かな……。記憶なんてあてにならない。人間ってさ、なんでもかんでも「われがわれが」でしょう。「人の手が〜」「昔ながらの〜」みたいなの、そうじゃないとこにまで持ち込むのいい加減やめよう?AIでいいんだってー。人間に不向きなことをさ、わざわざ領域守らなくたって。それって伝統とか人間らしさとか大切にしてることに必ずしもならんからな?むしろさ、費やさなくていいところに、こんな、せいざい百年の命をさ、費やそうとかさ、愚の骨頂。人間ちゃんがつくった機械ちゃんを信じようぜ。人間のほうがよっぽど信用ならんよ。機械の壊れる頻度と人間の精神や判断力の鈍る程度って後者のがやべーに決まってんじゃん、機械化迫害するのやめようぜほんと。とか喋りながらクーラーをピッとな。

2+

【雑記】天才の言い分

ときどきしか会えないなんて嫌だ……毎日会いたい……会いたい時には会いたいの!だって、もう、オトナなんだもん……。

とか思って、駄菓子とかおやつ系は大人買いするようになったんすよね?最初のうちは幸せなんですよ?だって、あんなに憧れたおやつが……申し分ない量だけあって、食べても食べても減らないんだもんhooo!オトナ、最高〜!このために働いてるぜYeah〜!

みたいなのが続くと思うじゃん?

それがさ、不思議と違う時もあるんすよね……。

なんでしょ、あれ。確かに、大量の在庫を見てHoooo!ってなる時もあるんですが、ていうかそっちが大半なんですが。あの、「欲しいけど手が出せなかった」ものが「手に入った時の喜び」?あれにまさる在庫ってもしかしたら無いのではないでしょうか。人間って罪深いですよね、それ以前にサクマ製菓って罪深いっすね。なんでこんな美味しいんだろ。これが麻薬ですって言われたら、あーそりゃ人間やめられないわけだわって納得するわ。ジャリジャリジャリ……(飴を噛み砕く音)。

カフェオレやコーヒー大好きだけど頻尿はんぱないから、「そうだ、コーヒー飲むんじゃなくてコーヒー飴なめればいいんじゃなかろうか」って気づいたときほんと天才だなって思ったね!

という天才から程遠い発言でおわることにするよ。

1+

【小説】mars

誰もぼくに気づかない夜、誰も傷つけなくて済むからあなたに会いに行こうと思った。

わかってる、どうかしてるぜ、空気は澄んでもシュノーケル。口の中でゴムを噛み続ける。そうしていればいつか消えてなくなるみたいに。ほんとは信じていないんだけど。信じたふりをしてあなたを油断させたいだけ。

ぼくが好きになったものがいつまでも輝いて見えるのは、ぼくが今も好きでいるって証かな。認めたくない。だってそれはもうぼくのものじゃない。分かるんだ、傷なんてつけられてなかったって。

ノック・ノック・ノック。

ふざけているわけじゃない。あなたが水中を泳ぐ時そうであるように、ぼくには今これが必要なんだ。

ノック・ノック・ノック。

出ないでいい。出ないでくれよ。委ねるぼくは昔から弱い。目の前のドアが内側から開けられるのを恐れてる。夢に見たのに。涙が流れたのに。プラスチックの恋。チープじゃなければ大切にできたのかな。嘘だよ。どうかしてる。分かっているんだ。しあわせじゃない。そう言われても。連れ出せないことくらい。分かっている。

これが最後だ。

ノック・ノック・ノック。

3度目の音が外れる。

左目の下を腫らしたあなたが出てくる。ぼくたちは鏡で自分を見るように無遠慮に互いを見つめた。

「えっと、ぼくのほうが、まだマシかも」。先に口を開いたのはぼくだった。どうだろうね。あなたは小さく首をかしげた。「どうしようか」。まず、その、馬鹿げた格好をやめろよ。「わかった」。だからってここで脱ぐな。「わかった」。なんでここが分かった?ストーカー?「まあ、そうだね。……あのひと、殴るの?」。たまに。「いやに、なんない?」。すぐに忘れるんだ、おれって、バカでさ。「知ってる」。おい。

「……ぜんぶ、消して、やろっか」。

は?怖い怖い。勘弁なんですけど。「いや、その、傷」。はぁ?「ぼく、実は、魔法とか使えて」。やめろ、そういうの。キモイんですけど。「ごめん、笑って、くれるかなって」。ぜんぜん笑えないから。

そう言ってあなたはちゃんと笑うんだ。よかった、理性の、言いなりにならなくて。あなたが、笑ってくれて。

よかった。ほんとうに、よかった、わすれなくて、よかった。

よかった、あなたが、今、ちっとも幸せじゃなくて。

ベランダのむこう、火星が、きれいだった。きっと、あなたの肩越しに見るからだな。ぜんぶ、消してやろっか。

2+

【小説】◯◯◯と◯

おまえは今日も疲れ切っている
そんなにも、そんなにも
玄関を出た先の世界は辛いのか
悲しいことばかりが起こるのか

なぜ今日も行くのだろう?
なぜ明日も行くのだろう?
ぼくを置いて行くのだろう?
ひとりの昼間は少し退屈だ

かわいいものはおまえだけ
生きているもののうちでおまえだけ
そう言ってくれるおまえは
自分の好きなほうを選べない

ある時おまえは笑いながら帰ってきた
珍しいことだな、つられて笑う
両手はぐっしょり濡れていたけど
楽しそうなおまえを見られてうれしい

その夜は打上花火が上がった
何回目だろう、数えるのを忘れてた
あれを打ち上げているのは人なんだと
おまえはしんみりした顔で言う

翌朝、スーツの2人組がやって来て
おまえを連れて行ってしまった
おまえはぼくを振り返らなかった
戻ってきたスーツの1人にぼくは抱え上げられた

(かわいいー おれ 飼っていいですか)
(かわいいか〜? ま、好きにしろよ)

ここに何かの取引が成立する。

ようし、ようし
うちでおいしいもの食わせてやる
警察が助けに来たからな
もう心配いらないからな

(しんぱい?それって、何だ?)

ぼくの質問にスーツは答えない
そしてあなたは戻ってこない
ぼくも部屋に戻らない
本当に久しぶりに玄関を出た

今年もぼくは打上花火を見る
一年前は誰と見ていたのだっけ
あの夜は少し幸せだったな
ぼくは誰にでも甘えることができる

『殺人犯と猫』

2+

No.524

現実よりも鮮やかで
まぶたを閉じていられない
空は初恋相手の髪色みたく
どんな虚像も浮かび上がらせる
それは真夜中のスクリーンだ

ねえ、
あなた引き算をしていたの
ねえ、
ぼくは足し算をしていたの
ちょうどいいと思った、誰だって

だけど加減の問題なんだ
行き過ぎて、すれ違って
分かり合えたと思ったら
また遠ざかって、忘れられなくて
やり切れなくて、利口になれない

たまにでもいい、
自分を甘やかすその声が。
たまになら、いい、
何も変わらないことを望んだ。
たまにしか起こらない奇跡なら?

夢なら続いてよ
終わらない現実なら醒めてよ
ぼくたちは不完全で
言い訳も準備できていなかった
ぼろぼろだ、流れ星になれないまま

『不眠症』

2+

No.523

目隠しをするのは
嘘を隠したいからだって
あなたは言うけど
そう思ってくれているうちは
ときどきなら笑える

見えなくなるとね
光のうつろいを気にしなくて済む
そのぶん耳がよく働くんだ
それで嘘がわかっちゃうんだ
あなたたまに嘘を吐くね

ぼくを安心させたいがための。
ふたりなら足手まといだ、
この先は自分だけが進むところだ。
そんなふうに吐く嘘を、
あなたがぼくに教えたんだ。

『嘘吐きの詩』

2+

No.522

うまく描けなかった丸を
いくつも重ねてきみを守る
上から上からかぶせていって
包んで誰も触れないようにした
とげとげのつもりになって

ほんとうは簡単で
むずかしいふうには言ってなくて
誰かの破壊を待ってる
いちばん良い役で登場したいんだ
救済の象徴になりたいんだ

間違いはないよ
目の前に流れて来たものを信じる
誰だってそうしてきたはずだ
そうして幸せだったはず
いつの時代も幸せだった

ほんとうを教えようとする
頼まれたのでもなければ同じ自己満足で
悪いかどうかは立場次第
曖昧さで追い出されることもないなら
同じ嘘で何度でもだまされてあげる

夜を追い越してった朝に
ハンガーから滑り落ちた恋を
追いかけて街へ出る
夢が遠くて風が冷たくて
きみが死ぬまでに間に合ってよかった。

『偏愛ピタゴラスイッチ』

2+

No.521

『異種の恋』

こう考えるんだ
明日が世界の終わりだと
無理だよ思えないよって君は即答
だって確信がないんだもの
では逆にたずねるよ
明日は世界の終わりじゃない、
その確信は?

ちがうんだ
ほんとうに言いたいことは
もし失敗がないとしたら
君が恐れるような失敗が
仮にも起こらない法則があるとしたら
君はそれでも僕に対しその態度なんだろうか?

少しは違うんじゃないだろうか
もう少しやりようがあるんじゃないか
眠りに落ちる瞬間を見届けたいな
そう思っていたのに先に寝てしまう
君が僕にふれるのは夢の中でばかり
だけどとてもリアリティがある

もしも失敗がないとしたら
もしも恐れていることが起こらなければ
君と僕はもう少し近い距離に座ったはず

これだからいやなんだ
せいぜい百年に届くくらいなのに
だから人間なんてめんどうなんだ
もったいぶってる時間なんて無いはずなのに

2+