No.571

七年前に買ったレースが今日も窓辺で揺れている。本を、読みたくない。行間が躊躇い傷に見えるから。思い出すかもしれない。あなたに救いはあったんだろうか。町内放送が空に付箋を貼っていく。群れていた小鳥たちが散り散りになって虫を捕まえに行く。たまに付箋に衝突して墜落してくる。深呼吸をひとつ。これだけのために何百年もかかった。瞬きをひとつ。このために千年を超えてきた。どうしてちゃんと分かりやすくしておかないんだろう。見落としてしまうところだった。分かっているのか、見落として、しまう、ところだったんだ。すべて仮定でしょ。狡いんだから。あなたは呆れたように笑っている。この奇跡のためにいくつもの夜を越えてきた。数え方が分からなくなるまで夢を見た。ここも妄想の続きかも知れない。いつだって作り出せる体温は証拠にならない。なかなか醒めない。深い、長い、物語だ。甘い、眠くなるような、今となってはもう、欲しかったかどうかも、分からなくなるような、いっときの風だ。

5+

No.570

そうでもなかった
言っちゃっていいかな
前ほどじゃなかった
そう言っても?

雲と風ばかり流れる
見えない光について書いている
視覚に負けないように
ここにない香りを嗅ごうとして

好きな人の好きだった人の
出ている映画がそこそこ綺麗で
好きになってしまったんだ
あなたが今ようやくわかった気がする

同じふうに見ていられない
その軸はあなただけのものだから
舞い上がるプラスチック片
頭上を覆う枝葉に悲鳴が絡まる

平気でいることができたんです
あなたの愛するものが誰かに愛されていると
悪くないと思えたんです
そしてマグカップに新しいミルクを注ぐ

生きていくんです
死ぬことなんか考えないで
あまりに当たり前でしょう
生きることは死なないことです

もったいないものなんて無いんです
向こう見ずな選択肢は失われた
あなたが素直になれないくらいで
ぼくが支配する何も妨げられたりはしない

3+

No.569

『さよならヒーロー。』

ひとつになりたいですね
ここはあったかいですね

あなたは矛盾をいう
カモフラージュするみたいに

人間ってこういうものでしょう?
愛ってこういうものでしょう?

すがらなくても生きていけるのに
とんだ暇つぶしを見つけたあなただ

まともでいられるはずないんだ
溶け込むなんて到底無理だ

だいじょうぶ、
わたしたちって大丈夫なのよ。

夜空の向こうに宇宙があるって
誰も疑わない星の上でも大丈夫

根拠もないのに
根拠もないから

あなたばかりがまぶしいんだ

よかった、もう、
誰のことも救わなくていいんだ。

1+

No.568

惑星?ううん、ミジンコ。
どうしようか、あまりきみが輝かないのは。
繰り返し再生するうちに違うものを見ていた?
いいえ、勝手に作り変えて恋をしていた。

秘密にしていたせいだ、
誰にも盗まれないように、
あたかも盗まれるもののように、
扱いたかったぼくの弱さのせい。

きみが弱くなったのかぼくが強くなったのか、
きみが白くなってぼくが銀色になったのか、
分からないまま終わりにしたい、
だけど答えがぼくたちを捕まえるんだ。

目をつむって指先だけで、
どこにでも行けたぼくたちだった。
耳がなくても同じ歌を歌えて、
皮膚がなければ溶け合っていたぼくたちだった。

2+

No.567

ここで書いている
この手でちりばめている
句読点は、虫と汗、たまに星、
まんまるで終焉。

夢の続きを書いている
脇道けもの道に憧れている
赤くない命が
耳元で垂れ流されている

高いところから見下ろしている
真逆になる感覚を
味わっている
しばらく喋っていない舌で

きみはレモンを運ぶ
調味料で試そうとする
大丈夫と言えない
味、わかるよ。って言えない

安心が人を殺すの
知っているから
肯定が奪うの
きみのかけがえのない孤独

遠い目をさせて
通じないふりを続けさせて
分かり合える人はいない
だけど信じるものにすがるしかない

そんなきみの願いは祈りより脆い
いつまでも大切に思っていて
大人気ない意地悪をするだけで
いつまでもきみの一番でいられる

3+

No.566

ごめんね
ぼくは同じじゃない
きみの目で見るように
ぼくはきみを見ていない

本当はずっと前からだ
分からなかったんだ
知らなかったんだ
とか、冤罪を訴えるつもりはない

こんなにかなしい
さみしいことをしていた
ふたりもいて気づかなかった
こんなに虚しいことだったんだ

たくさんの好き
たくさんのごめん
たくさんの会いたい
たくさんのずっと

(うそつき、
似た者同士。)

先にきみだったのか
後がぼくだったのか
惰性で抱き合うので分からない
分からないままでいいじゃないか

取り出したキャラメルをしばらく見て
紙に包み直して
箱に戻して
完璧に隠蔽して
キッチンカウンターに置いておく

まるでいなかったみたいに
赤の他人みたいに
出会わなかったみたいに
初めてのように
終わりを知らない顔で

静かに靴を履く
そんな必要ないのに
静かに外へ出て扉を静かに締める
背中で音を聞く、しずかな終わりの音を

タオルケットの中で目を開ける
ぼくがそうすることを知っていた、
きみの瞳はいかにも朝方らしく潤んでいる
これが練習じゃないことに気づいて

利口なせいで、つらいだろうね
敏いがために、痛むんだろうね
ぼくたちは命をかけ合ったから
もしまた会えたら運命と呼ぼうね
あるいは皮肉と

嘆くまでもなく
最善は大抵不幸なんだ
不幸なものほど最善になるんだ
良い道を選びたいんじゃない
忘れたくない痛みでしか覚えてられない

(あのキャラメルに毒は塗ってないよ
うそつきかどうかは食べたらわかるさ
死ぬまで信じ抜けばいいだけ
うそつきを消すにはそれしかないさ)。

2+

No.565

店のショーウィンドウは意地悪な隔たり
一歩間違えば消費されていた側だったの
あなたぼくにそう教えたくてマネキン
に、なったの?不本意でも構わないの?

違和感があるくらいでやめられるほど
子どもじゃないんだ、戻りたくはない
戻りたい場所のある人はとても不幸だ
泣ける、良いでしょって何回も問うの

先に気づいたほうが敗者なんだ
そんなこと分かってる、苦しいはずだ
本当に幸せなら言わないはずの言葉を
本当に愛を知っているなら吐かない唾を

ただ発散したいだけに思えるんだ
あなた繕うことが苦手だけど好きのふりしてる
痛々しいんだ、
どれだけ見透かされているか知らないの

貶めることは簡単かも知れない
だけど窮鼠は猫を噛むかも知れない
ぼくは匿名であなたを愛したい
ぼくは素性不明のままあなたに寄り添いたい

開けるたびに空虚が入っている
無名から放られたいくつもの空虚が
ぼくのかわりに日本に光を投げかける
国旗は燃やすものでなく混ぜ合うもの

泣いても良いよ、慰め方も知らないのなら
逃げなくて良いよ、愛されたことがないから
悪意が何かを知らない幸福にいつまでも
気づかないことを贅沢って呼ぶんだよ。

2+

No.564

もったいないという感情が薄れた時
ぼくは世界を信じたのかも知れなかった
あるいは、自分のことを
あなたが好きだと言った人のことを

始まったものはいつか終わる
なんて嘘だよ
誰が忘れても
誰も忘れなくても
始まったものは終わらない
終わらないから終わりという言葉ができた

夜は何も連れ去らないし
朝は何も運ばない
季節は同じだし命くらい繰り返す
そのことに気づいた
いや、とっくに気づいていたことを思い出したんだ

だから、

忘れることを恐れないでおこうと思った
好きじゃなくなることを否定しないでいよう
夢に溺れる日々ばかりが美しいんじゃなく
傷つけられたことが愛じゃないわけじゃない

それだけで生きていける一日もある。

この柵を超えるのは少しだけ勇気がいる
ただしそれは少しだけだ
あることとないことの間に差はない
本当は、大きな差なんて、どこにも

冬の砂浜で見つけたビニール袋が
ぼくの日常に光をこぼしてる
あなたもきっと私のようになれるよ
ああ、これを絶望感と言うんだな
幸福そうに言ってくるきみを指して思う

豚を食べた
牛とひよこを食べて花を摘んだ
死骸の上に置いた石に供えて
行ってきますと告げる
紺色に染まる頃にきっと戻るねと告げる
ありきたりな星をきみが見上げるその前に

4+

【雑記】さよならシティーズ

ジオシティーズが2019年3月で終了と知り自分の触れたものがまた一つ「過去」に組み込まれていくの感慨深いあまりに梨がうまい。シャリシャリ。果物あんまり好きくないけど梨は好きだな。水分多いからかな。スイカも好きだけど持ち運んだり皮を捨てたりするの一息入れないといけないからやっぱり梨いいな。大きさがちょうどいいもん。しゃくしゃくしてて美味しいし。

で、ジオシティーズですよ。実際利用したことはない(と思う)んだけど、その名の通り1つの街になぞらえて区画名がついてたの懐かしくて困る。

ゲームジャンルが「プレイタウン」とか、自己紹介「ハートランド」とか、女性ジャンル「パウダールーム」とかさ。
もはや「ホームページ」「電子メール」って字面が懐かしいもん。

私が最初ホームページ作った頃、フリーティケットシアター使ってたけどこれも2016年にサービス終了している。

驚くべくはスパンですよね。誕生→隆盛→衰退→撤退のスパン。ずっと続くだろう。これ以上便利なものは出ないだろうと思っていてもやっぱり上回る次世代が出てきて書き換わっていくんだもん。人間すごいもん。

そしてこれは私だけじゃないと思うんだが「初回の呪い」とでも名付けようか、初めて接したものにかけられる呪いってあると思うな。後からどれだけ便利なものが出てきても、やっぱり一番最初に自分に衝撃を与えたものからは離れられないっていうね。表面上は乗り換えてるつもりでも潜在意識で「あの頃の感動にはかなわないなあ」「あれを上回るものはないなあ」って思っていてさ、だから最初ってすごく肝心なのだが、最初って偶発的だから意識できたり操作できたりするものでないのね。

ぜんぶ運命のいたずらで、それなのに後から「ああしたい」「こうだった」っていうの人間っぽすぎて本当いやになる。

産まれたら絶対死ぬように、誕生した時点で古びていくんだよなあ。
でもこの思いも思い込みで、そのうち「不死」「再生型」みたいなのが主流になってて「スパン」って発想自体が古くなっていって「ナンスカそれ?」みたいな世代が出てきて、根本的に、思想の土台から変わっていくんじゃないかなって思うと同世代に産まれた老若男女尊くなるはずなんだけどそうでもないところほんとわかってないなって思うけど尊い。

ホームページサービス作った時にカウンターのフォント選べるのめっちゃ懐かしい。

表作ったときに銀色の縁取りにしかならんのとか、流れる文字とか中央揃えとか最高に懐かしくて思わずスクショとった。

だけど新しいのも好き。
便利なのも好き。
えっ、こんなの出た?できた?
って思うのも好きで、その時に「かつては……」て思い出すことがあるのも風流な気がする。

4+

No.563

奇跡ってたくさん集めたら薄くなる気がしてた。だから奇跡だってあまり思わないようにしようって。約束はしなかったけどそういうふうに決めたんだ。何かひとつ決めておけば忘れた時にも思い出せるかなって。最初から奇跡だった。終わりのことは知らないけど、最後までずっと奇跡なんだろう。白い箱に詰め込まれて出荷を待つだけのショートケーキだった。きみがそこから連れ出した。いちごなんて要らないんだ。何も変わっていないのに何もかもが新しかった。きみは子どもを産めないと言うけどあたらしいものはいつもきみから生まれていたよ。脱線、それだけを願っていた制服の頃。車窓の外に海が見える。きみがいるだけで毎日こんなにたくさんの色が見える。見ようと思う。そして受け入れようと思える。世界はぼくを傷つけないと、傷つけられてもまた立ち上がれると、また歩き出せると、誰より自分がわかるから。いつかこの風景に溶けたら、何もかもを睨んでいたかつてのぼくのような目をした子どもに教えたい。奇跡は平気。使い切ることはない。絶望がある限り、何がいちばん幸せかをきみはほんとにわかっている。

4+
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