No.859

ずっと守っていた
守られているのは自分だと
認められずに血を流した
綺麗な赤ほど生臭いな

(目と鼻のどちらかが嘘をついた)

僕の祖先が誑かしたんだ
愛をお告げよ
雛が羽ばたいて
歌を囀るより先に

目を瞑って
つむって
そのまま潰してしまいたかった
器官は嘘をつきたがるから

繰り返すだけ
呼吸
四季
生と死、連綿と
繰り返すだけ、同じように

鉄でできたレールなら
お喋りしながらはみ出てゆくのに
はなうたの合間に
だけど話題は生臭い繋がりだから
気がふれた振りで、ひらり離脱を謀る一人

7+

【小説】暫定天使の最後の恋人【未完】

(思いつき。途中でぱったり終わる話)

あなたが今いるここは天国です。

と言っても風光明媚な光景を比喩しているのではなく、正真正銘の。

いわゆる死後の。

と聞いて「はい、そうですか」と答えた人はあまりいないだろう。

だから、そう答えた。

「あ、はい、そうですか」。

天使。
こいつ、天使なのかな。
まあいいや、天使は、おっ、という顔つきで僕を見る。

「きみは、ええと、感情の起伏が足りないね」。
「そうですか」。
「そうやって生きてきたの」。
「生きて、そして死にました。やり直したいとは思いませんが、何かの役には立ちたかった」。

暫定天使は「ふむ。」と顎に手をやり頷く。

何も考えてなさそうな感じではある。

「無欲なのは素晴らしい。手間が省ける」。

何の手間かは聞かないでおく。

僕はとことん他人へ興味が無いので、少しでも期待を持たせたくない。

もしかするとこいつは話を聞いてくれるんじゃないか?と思われたくない。

「天使には、一度だけの特権がある」。

あ、やっぱり天使だったのか。

「自分が気に入った相手を一人だけ生き返らせることができるんだ」。
「そうですか」。
「良いか、たった一人だ。これはすごい特権だぞ、なんたってたった一人なんだからな!」。
「はいはい」。
「ということで、俺は君に決めようと思う」。
「はい?」。
「俺の特権を君に使わせてくれ」。
「なんで?は?もっと適任者がいるでしょう。飲酒運転に巻き込まれ、幼い子どもを残して死ななければならなかった方とか、プロポーズされた翌日に余命宣告された方とか、僕よりもっとおま、いや、あなたの特権とやらにふさわしい、値する方々が、山ほどいるはず。そもそも僕はあっちに何の心残りも無いし、できれば二度とあんな世界には戻りたくないとさえ、」。

天使がにやついていることに気づいて僕は話やめる。

「…なんです?」。
「感情を、見せてくれたね」。
「それは…」。

あんたがおかしな判断基準を散らつかせたせいだ。

「とにかく、他をあたってください。あなたの特権の使い道は僕ではないはずだ」。
「君の決めることじゃない。もう針を戻しておいたから」。
「はあ?」。
「行ってらっしゃい」。
「はああ?」。
「そして、またここに、戻っておいでね。再会しよう、大好きだよ」。

何と言ったんだ?
天使の言葉は、最後のほうは、よく聞こえなかった。

やけに腹の立つ顔をしてたなあ、ってことくらい。

目を開けた僕はベッドの上だった。
正確に言うと、病院のベッドの上だった。
なぜここが病院と分かるかと言えば、僕はここで死んだからだ。
それだけは覚えてる。

他は、忘れてしまった。

まいった、どうやら本当に時間が戻ってしまったらしい。

シーツに突っ伏した姿勢で誰かが寝ている。

(疲れてるだろう、起こしたくないな)。

なんとなくだけどそう思った。

だけどそのタイミングは勝手にドラマチックに、否応なしに訪れてしまう。

瞬いた瞳が僕を見て、目を擦ってもう一度見て、幻ではないと知って声にならない声を上げる。

はくはくと口を動かして諦めた、おまえに、ぎゅううううううと抱きしめられる。

死にかけ。
いや、生き返りかけの僕に許されるレベルの抱擁ではない。

「…は、放せ、苦しい。また天使に会わすつもりか」。
「ご、ご、ごめっ」。
「耳がキーンとする」。
「先生!そうだ、先生呼んでくるっ!」。

おまえはナースコールというものを知らんのか?

立ち上がって駆け出しそうなところを呼び止めた。

「待って。少し静かにしていたい。誰とも会いたくない。先生、にも。おまえだけ、いてくれればいい」。

動き出していた体がピタリと止まる。

そそそっかそっかーと謎の素直さでもとの椅子に収まった。

「ほしいものは?」。
「…静寂。しずかにしろ」。
「あ、うんっ。そうかっ。ごめんっ。ごめんなっっっ」。

おまえは僕を見てにこっと笑った後、そわそわしながら俯いた。

(なんだこいつ?)。

白状しよう。

僕は、こいつに関する記憶を失っている。

名前も、関係も分からない。

ただ分かるのは、こいつが僕を大好きだなってことと、あのいけすかない天使によく似てるってことくらい。

ふーん。

体はでかいくせに、肝っ玉は小さそうだな。

俯いているのを良いことに僕はその姿をじっと見る。

ふーん。

せっかく「特権」で生き返ったんだ、ちょっとくらい羽目を外しても良いだろう。

吹っ切れた僕は、そいつに向かって口を開いた。

(飽きたのでここで終わり。あとはご自由にご想像ください。)

5+

【雑記】青くて丸いもの

七月終わりの詩をいま書いている。

五日ごとに一編を予約投稿しているからだ。詩の中ではあさってから八月で、その頃には環境も心境も変わっていそうである。数年前を思い出して欲しい。変わっていないところの中にもだいぶ変わっているところが見つかるだろう。

あのひとは詩を書くことを忘れた。だけどあのひとの生活の中に詩がなくなることはないと思う。一度触れたものを捨てることはないと思う。捨てたと思うのは勝手だが…。

紫陽花を部屋に飾る。とてもお得な花だと思う。一輪あるだけで花束みたいになっているのがすごくいい。遠くから見るとまるっこく楽しめ、近づいてみるとたくさん小さなものがあって可愛い。地球みたいである。遠くて丸い、近くてたくさん。

死ぬことを知らない犬の眠りを見る。地面を打つ雨が跳ね返ってその額を濡らしている。

痛々しいものは自分に似ていると思う。忘れるために学ぶことはいいことだ、目をつぶるよりも。
目をつぶることに期待しすぎである。暗闇に希望を持ちすぎである。それは何も消さないし隠さない。かえって形を教え、正体を明るく照らす。

ひとに生まれたらひととして生活をしないといけない。草にも猫にもなれない。

3+

No.813

恋と知らずに春と呼んだあなたへ
元気ですか
今日もバスは七分遅れですか
花屋の黒猫は引っかきますか

馴染んだでしょうね
あなたはどこにいても違和感がない
こちらは変わりありません
季節も時間もありません

春と言えば春
冬と言えば冬
そんな感じです
すべての人に向いた場所とは言えません

あなたが来る必要の無いところです
どうしても告白をしたかった
僕は汚れた目で見ていた
周囲の人間を世の中を

そして何より自分自身を
奇跡は毎日に溶け込んでいたのに
あなたは優しい
優しかった

不可能が可能になる過程
呪いが願いになる過程を見せてくれた
だけど僕は見ていた
思っていた

落ちていけば良いのに
裏返しだよとあなたは笑った
まさか、違うんだと僕は睨んでいた
歩み寄ったくせに理解してくれないものは

(キライ)、

明日僕は猫に生まれ変わるそうだ
通い慣れた病院の隣に花屋を探そう
記憶が残っていたのなら
体が覚えていたのなら

きっとあなたは僕を見てしゃがみ込む
引っ掻くけど優しくして欲しい
その傷を開いたら出てくるものが
僕が生きる理由だったと確かめたいんだ

3+

【小説】『ドラマチック・ハル』

車窓の額縁であなたと春が象られ、知ってる。と思った。間違いない、そうだ僕はあなたを知っている。錯覚だと信じたくなくて目を逸らす。目を閉じて深呼吸してまた目を開ける。風景のなかにあなたがいる。世界がある。なんて完璧なんだろう。呼吸も忘れる。吸うと吐くを、どうしてたっけ。なのに鼓動は勝手に高鳴ってる。身に着けていた鎧も、いつしか厚くなっていた仮面も、あっけなく消え失せた。セピア色の本から視線を上げ、あなたが言う。何かを僕に。声が体に染みて透けて意味が通らない。自分に向けられるその音を欲していた。電車は光のただなかを行く。外はこんなに明るいのに、耳元ではずっと星屑が流れるんだ。「血、出てます」。上唇に手をやって、ああ自分の血のことかと理解。裏切られたと一瞬思う。でも、春だ。だけど、春だ。なんなら桜並木を歩きたい。第一印象がどんなに情けなくたって、いつかあなたの一番になるよ。ずっと前、生まれるもっと前に誓ったことを思い出し、僕は第一声を発する。新しい風に百年が弾け、あなたは自分でも気づかずに、知らぬ僕の名を懐かしく呼んだ。

4+

【雑記】平熱を知らない

1ヶ月先の投稿まで予約できました。書いてすぐ出すのも良いが、時間を置くと書いた時の気持ちが薄れているので「読者」として出会える確率が高まりそれはそれで面白い。へえ、あ、こういう感じね。みたいな。

今週は数年前に書いた小説を折り本にする。今月30日からネットプリントできる予定。もしよかったら、いや、よくなくても印刷して読んで欲しい。30って明後日か。

1週間前から風邪をひいていてたぶん治りかけ。38度の時にもやってたことはこれからも続けていけるものだと思う。私は飽きっぽく離脱しやすく捨てやすいので、体調不良をおしてでも取り組めるものがあるならそれは本当にありがたいことだ。何が大切かわからない時は一度手離してみると良くて、お金とか時間を払ってでも取り戻したいならそれは大切だったんだよ。まあ人間関係はそういうわけにいかないが。

4+