No.813

恋と知らずに春と呼んだあなたへ
元気ですか
今日もバスは七分遅れですか
花屋の黒猫は引っかきますか

馴染んだでしょうね
あなたはどこにいても違和感がない
こちらは変わりありません
季節も時間もありません

春と言えば春
冬と言えば冬
そんな感じです
すべての人に向いた場所とは言えません

あなたが来る必要の無いところです
どうしても告白をしたかった
僕は汚れた目で見ていた
周囲の人間を世の中を

そして何より自分自身を
奇跡は毎日に溶け込んでいたのに
あなたは優しい
優しかった

不可能が可能になる過程
呪いが願いになる過程を見せてくれた
だけど僕は見ていた
思っていた

落ちていけば良いのに
裏返しだよとあなたは笑った
まさか、違うんだと僕は睨んでいた
歩み寄ったくせに理解してくれないものは

(キライ)、

明日僕は猫に生まれ変わるそうだ
通い慣れた病院の隣に花屋を探そう
記憶が残っていたのなら
体が覚えていたのなら

きっとあなたは僕を見てしゃがみ込む
引っ掻くけど優しくして欲しい
その傷を開いたら出てくるものが
僕が生きる理由だったと確かめたいんだ