【小説】ももたろう2017

めでたい感じのラブコメをめざして落書きしたやつ。昔話の「その後」がこうだったら、という妄想から生まれたものである。続かない。

新春読切『ももたろう2017』

先祖代々受け継がれて来た退治仕立ての悪夢(ナイトメア)から逃れるためだけに遂行した徹夜明け(オーバーキル)の情緒(テンション)で賑やかな場所へ行ってみたくなり、初詣などに赴くと(レア)、桃太郎家の直系長男が、成績優秀の猿次郎、派手な見た目の酉之助、主君以外に腹黒主義な犬奴を連れているところへ遭遇した。
彼等四名は我の通学する學校のいわば圧倒的先駆者(スーパーアイドル)、非の打ち所がない四者連携隊(カルテット)なのであって、誰がどのような勝負を挑もうと敗北を喫することはあり得ないのだ。
ましてや我のような、
「おや?どうした鬼ちゃん」。
目敏いのは長身の猿次郎。
長男を凌いで家督を継ぐ予定にある成績優良児(インテリボーイ)。表情のほとんどないところが特徴といえば特徴には違いないが、跳ね上がった口角は極めて冷徹(ニヒル)にも見える。
「これは大した珍聞(ゴシップ)だ」。
「鬼が神社を参るとは(クレイジー)」。
面白がって参戦してきた酉之助、犬奴の肩越しにこちらへ気づいた桃太郎。
我のほうへ歩いてくると鼻先が触れ合わんばかりに顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
その間、およそ三十秒。
桃太郎家の側近家系を自負する猿次郎の視線が痛い。

「はああ!オニーは今年もちまっこくて可愛いなあ!」。

無関係の参拝客が振り返るほどの大きな声で言い、桃太郎は我を力任せに抱擁(ハグ)する。
「ついに初詣に参ったか!よきかな、よきかな、この桃太郎が先頭に並ばせてやろうぞー!」。
「…いや、いいです」。
「何を小癪なっ。落ちぶれ鬼の末裔の癖に桃太郎の提言(アドヴァイス)をそうも容易くあしらうとはっ。ご先祖が情けで逃したが恥(痛恨のミス)。この酉之助が成敗(ファーアウェイ)してくれようぞっ!」。
「待てい、酉之助。ここは犬奴の出番(ターン)ぞ」。
「待て待て、二人とも(シットダウン)。我々はおとなしくしておこう(そしてカームダウン)」。
冷静沈着な猿次郎の仲裁により我は難を逃れたらしかった。
とは言っても最大の難(ゲート)は、
「オニ、この寝癖(キュート)は何であろう?昨晩はよく眠れなかったのか(キュート)?だから言っただろう、俺が添い寝を致そうと!」。
「っ…!破廉恥醜悪極まれり!」。
「落ち着け、酉之助!」。
「しかし!」。
「遮るなこれは桃太郎殿の恋路である!」。
今にも内紛が勃発しかねない剣幕である。台詞のどこかに聞き捨てならない言葉が混じっていたが今はいかにしてこの場を脱するかを最優先に考えなければならない。
我は回転の悪い頭を懸命に動かして策を練る(ノーアイデア)。
だがどんなに尽力したところでそもそも相手が悪い。
「オニ?ねえ、オニー?」。
「…ハニーみたいに我を呼ぶな」。
虫唾が走る、と言いかけたところを咳払い(カモフラージュ)で誤魔化す。桃太郎当人は何てことないだろうが周囲の三匹がどんな反感を示すやら。
「…賽銭はしない。我はただ…ただ、そう、おみくじ(フォーチュンカード)を、引きに来たのだ」。
とだけ、告げた。
せめて待機列の短い方を示し、さっさと済ませて帰ってしまおう。
「承知いたした」。
桃太郎がさっさと列を薙ぎ払い、我はあっという間に先頭に立っていた。
さも適当な手つきでひいたおみくじを開くと中身は大吉。
何故か我よりはしゃぐ桃太郎に奪取され読み上げられるという雪辱。
「オニ、オニ!見てほら、恋愛運のところ!果物(ピーチ)から産まれた祖先を持つ相手が吉(ユア・グッド・ガイ)だと書いてあるぞ!」。
そんな馬鹿な話はあるまいぞと思いはするが相手をするのはいよいよ馬鹿馬鹿しい。我は見もせずに桃太郎に命じて近くの木の枝に紙切れを結ばせた。
「じゃあオニー、これからどこ行く?」。
これからも何もあるまい。
そうは思うが例によって桃太郎崇拝者の三方に睨まれていてはろくに拒絶もできない。やはり慣れない初詣になど来るのではなかった。これもそれも祖先が潔く根絶やしにされなかったせいだ。
実に幸先の悪い年明けとなった。

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no.179

きみがとても大切だから早く消してあげたい。明け方に巻き取られるイルミネーションの檻から。名前がなければ見つけられなかった感情なら霜の下で永遠に眠らせておきたい。繰り返された夕焼けは増殖をカモフラージュして何か食べようとしていたの。そのことに気づかないで悪を笑った幼稚な浅はかさ。人工物の上層階でスケールを盾にして大自然があぐらをかいている。子どもたちの夢や希望は試験管に詰められ査定を待つ。どんな介入にも左右されない真実なんてこの世界にないから昨日も明日もかわいい嘘がつけるってことにもっと感謝しなければ。もう目覚めることのないきみがただ眠っているだけだってどこまでだって自分に信じさせられるって口先だけでも放たなきゃ。蕾開いて光解き放つ。ありもしない束縛を言い訳にはもうできない。すべて平等に孤独で有限。方法を捨てたら遭難はしない。積み重ねで紡ぎ出した正解が明日には裏切るって、教えてほしかったら教えてあげよう。夜明けより早く。ぼくのかわいいきみに。さあ目をあけて。

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no.178

いつか、どれかは最後になるんだ。球体のダイス、クリスタルのルーレット、絵の無いカード、掴めないダーツ。弾き出された確率は夕日が沈んでもゼロにならない。ほぼ確定の事実。こめかみにあてた銃口。躊躇い傷の指先。それでいいか?今でいいか?加工された声が問いかけてくる。かき混ぜられて最初の答えを忘れてしまう。ヴァージンは間違いを知らなかったのに。どうか、どうか誰か決めておくれよ。おいおい、そんな、ご冗談。毎日本気を出すなんて所詮無理に決まってるけれどせめてやる気がないときは寝て回復を待つんだった。後悔も恐怖も見せたくなくて深い森に暗号を隠しに出かけなきゃ。致命傷の罠をくぐり抜けて。あたりまえでいることの手枷足枷を求めて。比較では得られないことばかり。だから誰とも支え合いたくない。探り合いに変わるから。臆病で良い。深みのないままで良い。冷たいことを悟られたくないために棒にふるなんてそれこそ順序の矛盾。まだ残っていれば。仕方なく。思った通りの惨劇が始まろうとしている。緞帳がするすると動き出す。ゆったりと怪しげな音楽。目隠しされた子どもたち。いろんな時代の僕たちだ。好きなものだけ食べて生きていけると信じていた、少なくとも疑いはしなかった、もうどこにもいない、だけど記憶から抹消のできない、厄介で愛おしい僕たち。

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