no.57

居残りイルミネーション
クレーンは
破壊のために鎮座する
ヘッドライト、粗雑なルーペ

君は僕を責められない
悪者になることが
君を傷つけるから
僕が抉る比じゃない

小さな笑い声
善意の洪水から弾かれ
滲んだ視界に息を吐く
それを言葉にはしたくない

強いひとは強いだけで
弱いひとは弱いだけで
どうしてできていないんだろう?
裏をかきたくなってしまう
秘密を知らなきゃいけなくなる

正直者はある人の前では嘘つきで
嘘つきはある人の前では正直で
信じることもない自由を憧憬し
何も手に入れられないという結末

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no.56

微熱は夜明け前に発覚した
優しい話し相手はごめんだ
たかが孤独を埋めるために

枕の下に受話器を押し込む
照らし出される背中
こじつけの名残を鏡だけが見ている

花束をほどいて降らせて
光からも僕を遮る
新しい世界で
まやかしでない君は

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no.55

生きやすさのために
光を特定することはできない
名づけることは裏切りだから
もう誰にも干渉させない

僕が頑なでいるとある人は憐れむだろう
優しかったり厳しかったりする顔
幸福の種類はひとつでないと言うのに
不幸の種類はひとつだとでも言いたげな

正解を出せないことが間違いの証ではない
具体化するに伴う痛みを除きたくない
信じたひとへ恩返しするためだと言って
やわらかな場所へ着地することだけは避けたい

あの日に救えなかった生き物
むしろ好んで死に追いやった
まだらでちっぽけな命
ふたりの嘘に消えていった細い声

無邪気が一番の残酷だと
知るのは墜落したまだらではなく
そのまま生き延びてきたきみと僕
緩やかな死は靴を脱いだ踵に吸い付く

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