no.55

生きやすさのために
光を特定することはできない
名づけることは裏切りだから
もう誰にも干渉させない

僕が頑なでいるとある人は憐れむだろう
優しかったり厳しかったりする顔
幸福の種類はひとつでないと言うのに
不幸の種類はひとつだとでも言いたげな

正解を出せないことが間違いの証ではない
具体化するに伴う痛みを除きたくない
信じたひとへ恩返しするためだと言って
やわらかな場所へ着地することだけは避けたい

あの日に救えなかった生き物
むしろ好んで死に追いやった
まだらでちっぽけな命
ふたりの嘘に消えていった細い声

無邪気が一番の残酷だと
知るのは墜落したまだらではなく
そのまま生き延びてきたきみと僕
緩やかな死は靴を脱いだ踵に吸い付く