no.314

もしもあの角を曲がらなかったなら
もしもこの靴を選ばなかったなら
もしもストロベリーじゃなかったなら
もしもあの時フラフープが成功していたなら

もしも、もしも

僕たちはサーカスを渡り歩いて
まだもしもの遊びを続けていた
草は年中黄緑色をしていて
パレットと照らし合わせる必要はなかった

非難は羨望と受け止めた
勘違いは幸福の道しるべだった
みんながそれは間違ってると言った
だから正解にするために出かけた

片方ずつ耳にあてたイヤフォン
僕は右で聴くから君は左をよろしくね
痛みをはんぶんこすると一つに近づくね
切りそろえた前髪が少しずつ不ぞろいになった頃

氷の国に一本のろうそくを
紙の国にガラス製の水差しを
愛ばかり抜かす国に一丁の拳銃
そして風船を飛ばす国に一人のお針子

僕らの復讐の種は善意で受け入れられた
何年後かにそれは歴史を変えるだろう

宝石の国に模倣品の天才を
そして僕たちは邪魔されない死を

百年後にその種は芽吹く
その頃には誰が仕出かしたことか
どんな思惑があったのか
もうわからない誰にもわからない

今だってそうかも知れないのだ
この今だって気づいていないだけで
誰かの完全犯罪の顛末
僕たちは終わりを生きているんだ