no.315

きみの差し出すものを受け取れなかったのは、それがなくては生きていけないのがぼくじゃないからだよ。きみは運命なんか信じないって言うんだろうけど、彼にとってはよっぽど大切なことだ。ぼくは微熱を食べなくても生きていくことができるし、ちょっと傷をつけられたくらいで動かなくなったりしない。熱湯をかけられても変質することはないし、氷水に浸されてもそこそこ正常に作動する。だけど彼に関して言えば必ずしもそうではないだろう。茨をにぎったら痛いだろうし、形のない言葉にだってたやすく打ちのめされるだろう。ぼくは自分の優位性をひけらかしているわけではなくて、彼だけじゃない、君たちがそうだろうと言っているんだ。やわらかい心臓、いつもはあたたかいのに死んだらかんたんにつめたくなる血液、そういう裏切りやすい体を持って生まれたのなら、同じようなものと生きた方がいいのではないかとぼくは言っているんだ。わかるかい?この質問に頷いたらきみはぼくを忘れる。わかったね。ワン、ツー、スリー