no.316

はやくはやくって
にじんだ橙がぼくを呼ぶ
だけどわからないから
ずっと立ち止まっている

景色が変わっているのか
ぼくが歩き出したのか
どっちでもいいけど
答え合わせがしたくて足元を見た

黒い目がぼくを見る
踏みにじったかつての自分
恨めしそうだ
だけどまぶしそうだ

ぼくもそうだった
きっとそんな目をして
きみのことを見ていた
疎ましくて羨ましくて

どうしてその容れ物に
入るのがぼくじゃなかったか
ぼくだったら大切にするのに
ぼくだったら絶対に捨てないのに

きみの不満と
ぼくの羨望
きみの欠乏と
ぼくの飽和

どこまでも平行線
交じり合うことはルール違反
いつかまた出会いたいね
どれほど素晴らしいかを教えてあげたい

ぼくのために生きてって言えばよかった
それがきみの不本意だとしても
屋上であんなこと言わなければよかった
百の手紙を出したってもういいわけはできないのに