no.317

七色に反射する光の中できみが誰かを裏切るところを見ていた。きらめきは花畑のように辺りを満たしていて、まるで悲しいことなんてひとつも起こらないような雰囲気だったのに。きみの内股を血が流れていて、耳朶は聞き飽きたフレーズを繰り返していた。聖書は人を必ずしも救わないが振り下ろせば凶器になるだろう。雨音。生き延びた雛が続々と飛び立っていくのに。幻を信じないと虹さえ目にできなかった。それじゃあ話はどんどん遠くなってしまう。走り出した列車の窓の切り取る景色が禁じられたフィルムに変換されていく。いつかぼくも裏切られる。きみを裏切ったからだ。繋がっていくストーリーから目を離せない。固く握り締めた手がふと何かに覆われる。目隠しに似て、世界に対するすべてを諦めさせる力がある。ここは花畑の真ん中。ぼくが見ていたのは理想でも現実でもなかった。これから訪れる未来の一幕、完全な予兆と祝福されえない顛末。夢を、愛を、素直に、貪欲に、だけど数には限りがあって欲望に対する富は即座に分配されるかに見えるから喜劇が終わらない。月が割れる。内側からあんなに苦手だった卵が産まれる。もう一度丸呑みになんてできやしない。