no.313

何の変哲も無い窓から見ている
世界の終わりと変わらない人間関係
灰色の雨が街の色を洗い流していく
横断歩道を待つ人がちぐはぐに眩しそうな顔をする

星は互い違いに流れてトタン屋根は光っている
今と昔が混在しながら空気に溶けていく
ふいにロリポップキャンディが気にかかる
いちご味なんだけどぼくはいちごを見たことがないから

たぶん誰も知らなかっただろう
予測できないのは独裁者が存在しなかったからだ
動くスピーカーが安全を唱えながら下校中の生徒を跳ねた
誰も泣かないと知って葬いは行われる

ぼくはそれでも好きだった
参列者の視線が戸惑うように動いて急に落ち着くところや
ふと思い出したように溢れてくる涙
時差があっていつの、誰のために出たものか分からなくても

命の大切さを思いながら昨日殺された命を食べる
濃い色のソースはどんな料理にもよく合って
(いちご味はいつのまにか消えていた)
ぼくは身分をわきまえずシェフを手招いた
みんなが眉をひそめる前でそいつの舌に料理を移した