no.308

インスタのために猫を飼った

そいつは自分が高貴な家柄の出でもあるように
おれを見下してくる
だから仕方なしに付き合う
素材のための命とそれにふりまわされる命は互角

今朝のフルーツグラノーラは妙に濃い味がする
昔の恋人が薬品を混ぜていったかと思った
誤解であっても二度と会うことはないのだから構わない
解かれない謎は見つけられていない謎に等しい
だからそのまま放置されて百年後に開封されたりする

猫はひなたぼっこもせず西向きの窓辺から民衆を見ている
百年前そこは本当におまえの領土だったかもしれない
おれはおまえの臣下だったかもしれない

新しい妄想は桃色の毛皮より楽しいから出歩く必要はない
また古くなるまでは一緒にいような
まるで生まれ変わることがあるみたいに来世を約束しような

戯言をぬかすなとでも言うようにしっぽが頬を往復でビンタする
テーブルの上の皿が割れて千年の呪いが秋の空にとけていった