no.306

僕はこの国が気持ち悪い。
被害者になって賠償金で暮らしたいと思うとともに、加害者になって生い立ちに同情されたいとも思う。
臓器より美しい信念なんかどこにもないからミツバチの羽音がずっと僕を守ってくれたら良いのに誰かの口から流れ出た汚水が跳ねる。
心の伴わない笑顔でも好きだって言ってしまう奴がいて僕は国民的な人気者。
視線の代わりに爆弾を投げたい。
史上に残りたいわけではなくて密かに消えたい。
まるで生まれなかったみたいに。
まるで誰からも愛されなかったみたいに。
17枚目のアルバムのジャケットはそんな表情で写ったのにとあるインフルエンサーが「媚びないシニカル」って言ったからみんな何も気づかないんだ。
現象を逆手に取る遊び心はなくて見慣れたマネージャーの背中を蹴っているだけ。
鏡に映った僕はそれでも柔らかく微笑んでいた。
ねえ、何から食べる?