no.302

計画はいらない
ふたりは海を山をこえる
この星から出たい時には
夢を見ることした深い夢を

つないだ手のあいだから
種がこぼれることがある
それは土に埋めると金を生む
だからふたりは旅ができた

ある人がふたりの手を欲しがった
ぼくたちのうちいつも左のほう
ぼくじゃないほうが右手を奪われ

ぼくたちのうちいつも右のほう
ぼくの左手が奪われ
遠く遠くへ行ってしまった

ふたりは初めてばらばらになった
行き先がまとまらなくなってきた

やがてひとりずつ行動するようになった
でも金曜日の夕方になるともうさみしくて
たまらなくさみしいからまたふたりで歩いた

ぼくたちは続けて旅をした
確かめ合うためだったかもしれない
お互い以上に安心する場所はないと

ある国で犯人を見かけた
そいつはふたりの手をつなぎ合わせて
富と名誉を獲得することに成功していた

その晩犯人が殺された
現場からはふたりの手が消えていた
だけど警察は気づかなかった

ぼくたちは手を取り戻した
だけどもうくっつかないから
洗濯物が流れてくる川へ捨てた

犯人には子どもがいた
まだ小さな子どもだ
双子の

ぼくたちは後戻りした
自分たちで双子を育てることにした
双子は無口だった

子どものいないぼくたち
親を殺された双子
川を流れていく二本の手

過剰でもなければ
不足もしていない
愛と幸運のクロニクル