雨の流れる跡で文字を教わった
これは雪ばかり降る国の物語
あれは龍を飼い慣らしている国の物語
どれもこれも虚構めいて
だけどきみはいつも真剣だった
もしもぼくが一度でも疑えば
きっと終わって
きっと途絶えて
きっともう会うことがない
そんな気がしたし
絶対にそうだった
夕陽の見える坂の上にいた
片手に季節外れのレモネードと
プラスチックのネックレス
足元は色違いのスニーカー
下手くそな蝶々結び
いつまで経っても向上しないね
やり直してあげよっか
(そう言う?
まさか!)
毎日ぼくが結んでもいいかな
もしもきみが嫌でなければの話だけど
そう言ったんだ
きみは眠る直前まで空に文字を描いている
ぼくに教えるそのでたらめが
本当をちゃんとつくっていく優しい世界
飲みかけのオニオンスープ
左肘に溜まる毛玉
こんな夜は放課後のきみが見えるよ