no.300

ほんとうに何もいらないんだ
嘘だと思われるから
欲しくないものでも並べるんだけど

同じ日を繰り返す時計
氷でできた枯れない花
日によって色を変える小鳥

差し出せるものを差し出させてあげる
無駄なことを強いてあげる
それで相殺される何かがあるんなら

引き換えにできないものなんてない
かけがえのないものなんてない
時が押し流せないものなんてない

それが口癖だったのにね
口癖にまでしないと
自分を騙せなかったんだよね

わかっていた
だからお互いさま
この名前はもう呼ばない

あなたはいつも
ぼくの向こうに誰かを見ていた
ぼくではない、ぼくの知らない

気づいていたのかな
あなたはきっと忘れない
忘れないまま生きていくのに