no.298

きみの詩に合うコーヒーをいれたよ
嘘ばっか、
だけど嘘をついてでも話しかけてくれること
本当はとてもうれしかったよ

ぼくの見栄は邪魔にしかならないよね
ありがとうって言いたいのに
絵の具もピアノもないからさ
ましてやかわいい笑顔なんて

いつだって暗いところにいるんだ
どんなに賑やかだって
明るい色彩に取り囲まれていたって
定員一人のワンルーム暗闇

ほんとうのぼくはいつも裸でそこにいて
得体の知れないものが傷つけるのを待っている
そうしたらそこから言葉が生まれるから

それはだれかを慰めるかもしれない
それはだれかをこの世界にとどめるかもしれない
そんなことを、ほんのちょっとだけ期待するんだよ

波立っていない液体は蒸気になって
香りはほんの少しずつ空間をつくり変えてく
ままならないことの心地よさにもっと早く気付くべきだった

二度と取り戻せない時間のいいところって
自分で名前をつけてそのとおりに呼んでいいってことだよ
書き換えのできない記憶だからこそもう逃がさない

今日も生き残ってしまったと嘆くひと
ここには詩とコーヒーがあって
ぼくはいつでも声なき声に耳を澄ませている

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