no.287

その部屋のドアから漏れ香ってくる
今朝方ガラスの割れる音がしたから
海での一日を詰めた瓶を
おそらく落として割ったんだろう

証言から確信を得ること
あくまで自己満足でしかなくて
ぼくはたぶん怖いんだ
きみがあっけなく肯定すること

季節は間違いなく移り変わっていた
繰り返しに見えるから気づきにくいけど
生まれたなら死んでいた
誰もそのことを悲しみはしなかった

古い本の中で
忘れられる草花のしおり
また明日ねと閉ざされたページ
それは何百年でも待つだろう

迷宮でした指切り
相手が誰だったか
やっと思い出したよ
ぼくはずっと酷かったね