no.286

くるぶしまでの水が続いている
映っている星を拾って食べる
空の模様が一つ消える
舌の上で転がしながら判定を待つ

こんどもだいじょうぶだった、
誰にも見られることはなかった
食道をゆっくり開いたら
半分柔らかくなったそれを流し込む

また歩き出すとしよう
指先についた蛍光塗料が
少しずつ存在を知らしめる
発見の確率がかすかに上がる

近づいてくる球体
でたらめな比率
肌に感じる視線の正体
君からのメッセージ

詰られたくない
まだ誰も信じることができないのかって
その感性で僕を駄目にしないで
同情は甘くて優しいことを知っているんだ

指の股にこの夜のビー玉を転がしたら
霧を吸って膨張した蜘蛛の巣が
新たな血管となって僕を火照らせる
君の冷たい溜息が聞こえる

生き物はあっけない
せいぜい百年か二百年
チャートで進む一生は慎ましやか
約束を守り抜くことなど難しくはない

破りたいのは暇つぶしをしたいからだ
一つの名前と顔をもらいながら
誰かの反応が知りたくて馬鹿をする
昨日までの僕だってそうだった

飲み下された星が胃に落ちた
と同時に思い出がひとつ消えた
それはどんな内容だったんだろう
一分前よりちょっと身軽になる

病床から見えていた景色
変わることはないって思っていた
君が持ってきた物は絶望じゃなかった
それだけで充分だよ