no.25

正体を消せば
風の音がよく聞こえる
正体を知られれば
視線はもうかわせない

真夏日に見下ろすアスファルト
壊れた傘が捨てられている
跨いで地面に伸びる影が
ぼくのより少しだけ薄いんだね

きみがだれでも
ぼくがだれでも
変わらない世界の
それを優しさだと仮定する

緑色に爛れる脳味噌
紫陽花のなれのはて
消えかかる首輪の跡
どこへ行かないでも許されるということ。