no.279

手足が動かせなくなる
声が出なくなり
明日が減っていく
希望が去っていく

ありあまることの贅沢
過剰であるという才能
高架下にひろがる楽園
口の中に血の味がしたって

ぼくはきみの守りたいものを尊重する
ぼくに対してもそうしろなんて言わない
ただ尊重する
だって簡単に奪ってしまえるものだから

そんなもの、

砂でつくったお城のようだよ
暖炉の前の雪だるま
紅茶に落とされる角砂糖
と、並列

痛いことは怖くない
皮膚が裂けること
治癒に時間のかかることや
どれかの臓器が損傷することも

ぼくには能力があるからだ
きみが一生手に入れられないもの
ぶっちゃけそれがあるせいで
たまには不快感もあるけれど

減っていく明日
訪れない未来
死に向かう肉体
衰える精神

(なあ、きみはこんなことをしている場合なのか?本当に?)