no.271

苺をほおぼっていた
飲み込むことはせず
吐き出していた
それを繰り返していた

あなたはぼくを記憶する
唯一の生き物だから
知らずどこかへ行ったり
消えてなくなったり
しないで欲しいんだ

想いを伝えるには不器用で
喋らない口実が必要だった
だから苺をほおぼっていた
食べたくもないから
飲み下したりもしないけど

たとえばそれは爆弾で
たとえばそれは卵で
たとえばそれはあなた、
いなくならないはずの
あなただったとしても。

苺をほおぼっていた
それはアリバイになる
ただ苺をほおぼっていた
あなたより後は嫌だよ