no.270

時計の針は同じ場所を滑るから
ぼくたち勘違いをしているよ
ひとつの円の上だからって
それはもはや繰り返しじゃない

きみが真似するぼくの方言
それを耳にした時にああ孤独と思った
かわいそうと言われるほどに
しあわせ者と言われるほどに

何を言われても
どんな目で見られても
きみを選べるぼくでいたかったな
決意は儚い

溶けるとわかって手を伸ばした
夏の氷のよう
早く息の根を止めてあげないと
それはぼくに対しても言えることだった

知らずに済まされる幼さなら良かった
誰か傷つけても平気なら良かった
願うことも欲しがることも疲れる
輝きは無数の粒子だから

名前がわからない
いつか描いた絵の中にいるのに
意図が見えなくなったんだ
製作者は確かにぼくであるのに