no.269

夏が去って秋が訪れる頃
ぼくはひとり転校生だった

初めての校舎はなんだか
木綿豆腐みたいな外観をして
これからやってくるひとりぼっちの気持ちを
誰よりちゃんと分かっているみたいだった

慣れない廊下
机と椅子の配置
みんなと違う灰色の制服

誰も知らないということは
注目を集めるに充分だった

山では栗がとれる季節だ
川はお淑やかにきらきら流れ
光の照りかたの優しい昼間
性別を超えて
何かを大切に産みたくなるような

そんな時期に
ぼくはひとりの転校生だった

あだ名をつけれていない
ランクもつけられていない

ぼくは誰にとっても親友でなかった
そのかけがえのない自由な気持ちを
忘れるくらいなら大人になりたくない

染まることで安心するようになったら
誰かの一番になりたいなんて願うなら

それがどんなにくだらないことか
答えられなくなった時にはもう、