証明を失って天を這う
昆虫なのか天使なのか
誰にも分からないまま
僕の夢は人を幸せにすることでした
そうは言っても
この奇天烈な姿を一度でも
目にしたものは百夜も続く悪夢を見る
なにが勇気だ、愛だ
誰もがやすやすと手に入れて見えて
いっこうに方法が分からないままなのだ
雑木林を抜けるとさらに深い森がある
本物の闇より恐ろしい生き物の住処
食糧にでもなれたらと決意したのに
気づけば頬張っていたのはいつかの骨
許せなかった血と肉それに臓器
雲のない空
斜めに横切る戦闘機
ミミズ腫れのような煙を残して
文句も言わずに
こんな自分を見せないためだったのか
森の奥深くまで僕を導いた理由は
激しい後悔をしたあとで
目が覚め以前の日常に戻る
何もかも元どおりで不気味なまま
僕だけが異様な経験を蓄えて
これで良かったのかは誰にも僕にも分からない
分からないまま地を這い、天のために生きるということ
あなたはずる賢いな
僕からまだ何もかもを奪い取ってはいないのだ